8月28日、六町の味坊美味厨房(足立区一ツ家1-20-15)で、味坊集団代表の梁宝璋さんが以下のような講習会&食事会を実施しました。
梁さんが酸菜など中国の発酵野菜や干し野菜の作り方を教えてくれて、そのあと実際にそれらの野菜を使った料理を味わえるという素晴らしすぎるイベントでした。
梁さんはこういう人です
味坊集団・梁宝璋さんは「ガチ中華」の第一人者。中国黒龍江省チチハル出身で1995年来日。「中国東北地方の家庭の味を日本に伝えたい」との思いから、2000年1月神田に「味坊」をオープン。以来、都内各地にさまざまな中国地方料理を出店。
多くの日本人に愛され、日本の「ガチ中華」第一人者となる。オージーラムの魅力を発信する食の集団「ラムバサダー」としても活躍。羊肉を使った料理も多数開発。
足立区に食品加工工場「味坊工房」を設立。通販も行う。現在、自家農園「味坊農園」で無農薬の中華野菜などを栽培。
2022年、日本の飲食業界に貢献した人物に与えられる「外食アワード」に中国系として初の受賞。
この講習会を企画をしたのは、全国で有機栽培や無農薬栽培を実施している農家の方々を結ぶプラットフォーム「日本SDGs農業協会」の照沼勝浩さんです。
日本SDGs農業協会
https://jsaa.bio/
さて、梁さんの話が始まりました。
中国には各地にさまざまな漬物(腌菜/醃菜えんさい)文化があります。
古代名は「菹( zū )」といい、主に塩で保存および発酵させた野菜で、食事に添えててそのまま食べたり、料理の材料として使われたりします。
中国10大漬物がこれです。
- 南充冬菜
四川省南充市。冬野菜の漬物 - 宜宾芽菜
四川省宜賓市。青菜の醤油漬け - 内江大頭菜
四川省内江市。カブカンラン(蕪甘藍)麻辣漬け - 涪陵榨菜
重慶市涪陵区。ザーサイの塩漬け - 惠州梅菜
広東省惠州市。からし菜の塩漬け - 潮汕菜脯
広東省北部の潮州・汕頭。切り干し大根 - 潮汕橄榄菜
広東省。からし菜とオリーブのオイル漬け - 東北酸菜
中国東北地方。発酵白菜 - 柳州酸笋
広西チワン族自治区柳州。塩漬け発酵筍 - 華北腊八蒜
華北地方や北京。ニンニクを酢で発酵させる
なかでも今回、梁さんが取り上げたのは、⑥広東地方の干し野菜(潮汕菜脯)と⑧ 地元東北地方の酸菜でした。
まず「干し野菜」から。
これは潮汕菜脯(潮汕切り干し大根)といって、広東省潮州・汕頭地方の特産です。大根を千切りにして、お粥として食べるのが一般的です。台湾では、刻んで油で炒めたり、タマゴとオムレツにしたりします。
作り方はこうです。
水分がなくなるまで干しては瓶に入れ、を繰り返します。約3か月後には食べられるようになります。
次は「東北酸菜」です。
中国東北地方の酸っぱい白菜の漬物で、この地方を代表する味です。長い冬の間、野菜をとるために酸菜は生まれました。毎年9月から10月にかけて各家庭で漬け始めます。家族の人数によってどのくらいの量を漬けるか決まります。梁さんの家は4人家族だったので、お母さんは2つの瓶を漬けたそうです。
これが作り方です。
① 白菜を千切りにして、しぼって水抜きします。
② 瓶を用意し、底に塩をふります。白菜の切り口を上にして置きます。
③ 瓶に少量の塩をふりかけ、白菜の各層に塩を振りかけます。白菜を入れ、最後に大きな石を山盛りの白菜を入れたかめのふたの上を置きます。
④(季節にもよりますが)それから約40日間すると、酸菜ができあがります。
酸菜づくりのポイントは以下のとおり。
① 手をきれいによく洗い殺菌すること。手に油が残っていると、発酵しない。
② 15~16℃が最適。夏は発酵が早くなるので注意。
*発酵温度が10℃帯はゆっくり発酵、20℃以上は活発化する
③ 瓶のふたをしたら、空気に触れないようにする。
④ 日が当たらない、風通しのいい場所に瓶を置くこと。
さらに、味坊では酸菜をより美味しくするために「二段発酵」させています。高菜を使う場合の極意は以下のとおり。
① まず1回目の発酵で、7~8割の水分をなくします。
② いったん瓶から高菜を出します。
③ 再び瓶に高菜を入れて、塩をふりかけ、ふたをしめて2回目の発酵をさせます。
さて、味坊では四川の漬物「泡菜」もつくっています。梁さんが手にしているのが「泡菜」で、白酒で漬けます。
泡菜をつくっているのは、重慶出身の林強さん(写真左)です。
手前のテーブルに並んでいるのは何でしょう?
たとえば、ジャガイモはいったん蒸して、皮をむいたあと、1cmくらいにスライスして干します。
トウガラシも干します。
ところで、日本では漬物はご飯と一緒に食べますが、中国ではそのまま食べることは少なく、肉と一緒に炒めたり、煮込んだりして食べます。酵素がたっぷりの干し野菜や、さわやかな発酵野菜の酸味は特に肉料理や鍋にぴったりです。
これが今回の干し野菜と発酵野菜の食事メニューです。中国では干し野菜を水に戻して調理します。
いかがでしたでしょうか。
中国では野菜をいかに長く保存して美味しく食べるかという技術が発達しています。
最近、日本でも野菜のうまみを太陽光と風の力で閉じ込めることで食感や風味が変わる干し野菜が注目されています。また乳酸菌と食物繊維がとれる発酵野菜もそうです。食品ロス対策としても有効です。
梁さんは言います。「干し野菜や発酵野菜は、生野菜とは別物で、うまみがぎゅっと凝縮されています。フカヒレやアワビなどの高級食材も干したものを水に戻して調理するのと同じなのです」。
(東京ディープチャイナ研究会)