9月中旬、東京ディープチャイナの企画「勝手に月餅グランプリ!」で大量の月餅を食べた数日後、私は西安にやってきました(*グランプリに関する詳細は後日レポートがあります)。
もともと甘いものは得意ではない事も相まって食傷気味でしたが「せっかくなら現地の月餅事情を見てみたい」と街を歩くことにしました。
レポートに入る前に、月餅事情をよりリアルに感じてもらうために、月餅の文化背景に触れたいと思います!
月餅の歴史は唐の時代に遡ります。月餅はもともとは月の神を祭る供え物でしたが、やがて中秋に月見をしながら食べることが「一家団欒の象徴」とされるようになりました。

月餅には家族の再会を願う意味が込められており、家族や親しい人と分け合うことが大切にされています。現代では贈答品としても重視され、親戚や友人はもちろん、職場や取引先にまで贈られるほどです。月餅は単なる季節のお菓子ではなく、人と人を結びつける縁起物として、中国の生活や文化に深く根づいているといえるでしょう!
それでは本題のレポートにはいっていきましょう。
最初に向かったのは、西安の北西部にある本湾市场、大观园商城周辺。西安城壁外にあるこのエリアは地元の人の生活の場で、生鮮食品や軽食、日用品など生活に必要なものが一通り手に入ります。

道には散髪する人がいたり、シャンチーやトランプを楽しむおじいちゃん達がいたり、学校帰りの子供達がいたりと西安の人たちの日常を感じられます。

そんなエリアで早速月餅を発見しました。中華菓子の中に広東式月餅(日本でもよくみられる、一般的な月餅)が売られていました。看板にも「月餅」の文字があり、季節を問わず月餅が売られているのは日本独特の文化だと思っていたが中国でもそうなのか?と思ったり。
さらに歩くと、陝北子洲(陝西省楡林市子洲県)月餅の専門店に行きあたりました。こちらは中秋の時期だけの限定店とのこと。丸い形と赤い模様が特徴的で、餡はバリエーション豊かでナッツ、あんこ、蓮の実、棗などがありました。
焼き立ての香ばしい匂いと初めてみる月餅への好奇心から五仁(色々ナッツ)を一つ購入。
中は層状でサクサク。パイ生地を食べているような感覚ですが、バター感はないのでベタつきはなく軽やかに食べられ、五仁の風味や食感もパイ生地との相性バッチリでした。
市場を後にして地下鉄に乗り込むと、車両が月餅にジャックされていました。車内が混雑していたので写真はドア付近のみですが、車内は乳酪月餅一色で興味深かったです。


御品軒は月餅だけでなくケーキやパンも扱いますが、フレンチ風のアレンジを加えた法式乳酪月餅が看板商品。表面はクッキーのようにホロホロ、中は濃厚なチーズ風味で、伝統的な広東式とは異なる進化系です。月餅を食べているというよりはオシャレなお菓子・ケーキを食べているような感覚でした。
店頭には贈答用の箱詰めや個包装が並び、餡の種類も「ナツメとリュウガン」「ベリー」などの定番から、「陕西油泼辣子」「チーズチョコレート」「ハムと黒トリュフ」といった変わり種までありました。
ちなみに焼きたての西安月餅がエッグタルトなどと一緒に並べられていました。

続いて訪れたのがスターバックス。店頭の掲示板やウィンドウに大きく月餅の広告が出ており、カウンター前にはスタイリッシュなパッケージの月餅が積まれていました。
スターバックスのロゴをあしらったデザイン、チョコレート×コーヒー、ローズヨーグルト、金木犀の香りの甘酒等の餡で、伝統菓子というより都会的なスイーツといった雰囲気。

もちろん街角のコンビニでも月餅は健在。
街中にある唐久では入ってすぐのパン棚の上段に月餅がぎっしり。3段目のパンと比較すると力が入っているのが一目でわかります。月餅は1個、2個入りのものが中心で、サクッとお昼やお茶菓子に食べたりする人も多いのか?と思ったりもしました。
中でも目に留まったのが、雲南省の玫瑰鮮花餅(食用薔薇餡の月餅)。バラの香りと軽やかな甘さで私のお気に入り月餅のひとつ。西安と雲南は離れているのにコンビニまで進出しているのは何故だ?と思い雲南省出身の友人に聞いてみると「薔薇餅は人気が出たから広がったのでは?」とのこと。

レジの近くには西安の老舗ホテルの西安饭庄、老舗中華菓子店の稲香村などのファミリーサイズの月餅が並びます。コンビニでの販売方法を見ると、日本でいうクリスマスケーキ/チキンや節分の恵方巻のような行事とビジネスが結びついた季節商戦に近い雰囲気を感じました。

また夜ご飯で入った酸汤饺子で有名な「白云章·饺子」ではお土産コーナーに西安の老舗レストランの老孫家の月餅が売られていました。
店頭で月餅を販売する飲食店は他にも沢山あり、日本でレストランやホテルの入り口でお土産が売られているのに近い立ち位置なのかなと思ったりしました。
最後は永辉超市(中贸广场店)へ。月餅を探して店内を歩くと冷蔵コーナーにドリアン餡の冰皮月饼(スノースキン月餅)が。冰皮月饼は香港発祥でもっちりとしたお餅生地で作った生タイプ。TDC月餅グランプリでも冰皮月饼を食べましたが、練り切りのようで和菓子を食べている新感覚でした。

その他にもスーパーの自社ブランドであるYHBakeryが作った云腿月饼(雲南ハムの月餅)や飲茶の老舗の陶陶居の月餅などが売られていました。
以上、現地の月餅レポートでした!
街角やスーパー、カフェ、レストラン、電車まで、さまざまな場所で月餅に出会い、中国でいかに月餅が大切にされているかを実感しました。また、法式乳酪月餅など想像の斜め上を行くニュータイプの月餅にも出会い、中国の食への自由な発想や食文化の広がりも垣間見えて面白かったです。
私が滞在したのは9月18日~22日でしたので、中秋節(10月7日)が近づくと、さらに街全体が盛り上がることでしょう!
(文香)
Writer
記事を書いてくれた人
