【検証】東京、深圳、香港、ペナン、シンガポールの水餃子を食べ比べてみた

本場中国東北地方での餃子は水餃子が主流ですが、日本では現地化展開として焼餃子が主流です。中華料理の人気メニューとして確固たる地位を築いていて、地方ごとの特色などバラエティー豊かな展開を見せています。

しかし、昨今、広まりつつあるいわゆる「ガチ中華」の流れの中で、餃子も、本場中国の料理人の方が、本場の味をそのまま伝える専門店が続々生まれています。

では、歴史的に華僑・華人の移住が多い東南アジアでの、本場東北料理の餃子店の状況はどうなっているのか。そんな関心も膨らんできます。

東南アジア諸国での中国東北地方の餃子店ご紹介

昨年11月に、数か国を巡ってきましたので、日本を含めそれぞれの地域における東北餃子の専門店の状況についてご紹介をします。場所は、訪問順となりますが、日本、香港、深圳、ペナン、シンガポールです。

1 日本、高田馬場「春ちゃん手作り餃子」

高田馬場は昔からの学生街の一つで、外国人留学生も多く、また歴史的な経緯もあって隣の大久保と共に、いわゆる「ガチ中華」の大きな拠点の一つとなっています。

「春ちゃん手作り餃子」は、そんな高田馬場の、早稲田通り沿いを、早稲田大学の反対方向に10分強歩き、横道に少し入った比較的静かなエリアで2022年から営業しています。

1.日本、高田馬場「春ちゃん手作り餃子」

遼寧省瀋陽出身の明るい店主さんの店で、中国人のお客さんが多いのですが、店主さんの温かい人柄に惹かれて日本人のお客さんもかなり増えてきているようです。

中国東北地方を代表する食材を使った「漬け白菜と豚肉の餃子」(酸菜)もメニューにあるのですが、日本のお客さんからの注文も多いとのこと。中国東北地方の貴重な食文化を日本にも伝える重要な役割を果たしてもらっています。

ただし、この店でもいわゆるガチ中華にありがちな「言葉の問題」は感じるのですが、ゆっくりと、筆談!を使ってでも、少しでも何か会話できると、食事の時間が更に気持ちよくなります。

高田馬場「春ちゃん手作り餃子」

朝早く7:00から営業しているので、手作りの豆乳(¥300)、中華揚げパン(油条)(¥200)、 かぼちゃ粥(¥300) といった朝食の定番メニューで中国の朝の光景を連想してもいいし、軽くワンコインセット(¥500)(餃子は酸菜水餃子も可)で餃子かワンタンをいただくのもありです。

昼はランチセット(A餃子ランチ、Bワンタンランチ)(¥1,180)を目的にお客さんは集まるし夜は幅広いメニューでお酒を飲みながら寛ぐこともできます。

基本の餃子は、水餃子、焼餃子それぞれ10個¥950、20個¥1,800。冷凍餃子の持ち帰りもできます。

高田馬場「春ちゃん手作り餃子」メニュー

新しい店で店内は小ぎれいさが隅々まで行き渡っています。

高田馬場「春ちゃん手作り餃子」

高田馬場駅からでは徒歩約13分と、少々時間はかかるのですが、そのためなのか朝早くから配達のバイクが集まってきています。

2 香港「北方餃子源」

香港の観光客的に有名な繁華街は、半島側ではまず「尖沙咀」となるのですが、MTRで3つ先の「旺角」は、もっと地元的な繁華街と言えます。

コロナ前の印象ではまず「眠らない街」であり、事情があってかなり深夜に立ち寄ったときであっても、煌々とした飲食店の灯りの連なりに随分驚かされたものです。

そんな旺角の一角に、東北餃子の老舗「北方餃子源」は店を構えます。MTR、旺角と油麻地のちょうど真ん中くらい。メインストリート、NATHAN ROADの一つ西側の通り沿いにあって、雑踏とは少しだけ離れたところで、重厚な店構えと共に、伝統を守る空気が濃厚に伝わります。

香港「北方餃子源」

餃子は、中入れる野菜が複数種類、および肉も、豚肉、羊肉、蝦、鮑、牛肉など揃っています。麺入りスープ餃子も人気です。お薦めの、一番基本的な白菜+豚肉の餃子を注文しました。

水餃子の皮は少し肉厚でもちもちしていて、つるんつるん。中華式の滑りやすい箸では刺さないと口に持っていくのが大変です。中の餡はしっかりジューシー。

香港「北方餃子源」水餃子

水餃子10個=HKD53 (約¥1,060――換算レートは以下すべてご参考です)

なお、湾仔店(G/F, No.259, Queen’s Road East, Wan Chai)、西環店(G/F, 1 West Central Water Street 西環水街1號地下)など、複数店舗があるので便利なところを選べます。

3 深圳「喜家徳」

中国で800店舗を超す大型のチェーン店です。深圳だけでも33店舗を展開!

今回深圳での餃子店のアドバイスを在深圳の友人から求めたところ、複数人から真っ先にあげられました。2002年黒龍江省鶴崗市で創立(本社は大連)。

今回は友人3人との会食で待ち合わせの都合で福田華強北路の茂業百貨店内の喜家徳に行こうとしたところ、場所を間違ってしまい大変な思いをしました。店舗が多く、更によく似た住所の茂業百貨店が複数あると、こういうこともあります。

しかしやっぱり複数人でおいしい食事を囲むと少しのトラブルは瞬時に消え去ります。様々なメニューが揃っているのですが、何といってもメインは水餃子です。中国の春節に家族が集まって水餃子と他の料理を囲む光景が届きました。

喜家徳では他の店でも見ましたが、餃子を作っているところを、店外からガラス超しに見られる演出をしています。思わず立ち止まる通行人さんも多く、安心感が高まりますし、入ってみたくなるのではないでしょうか。

3.深圳「喜家徳」

4 マレーシア ペナン「東北餃子」

ペナンは、中心街となるジョージタウンも比較的狭い街で、主だったところの多くは徒歩でも行けます。

「東北餃子」は、中心街からは南東に位置し、例えば観光名所の一つ、プラナカンマンションからはそれでも徒歩20分くらいです。ジョージタウンは特にユネスコの世界文化遺産に2008年に認定されて以降、街歩きとしての見どころがまさに集結していますので、ゆっくりと歩きながら店に向かうのも楽しいのではないでしょうか。

マレーシア ペナン「東北餃子」
芹白菜豚肉水餃子10個=RM15 (約¥500)
マレーシア ペナン「東北餃子」メニュー

訪問したのはランチタイムから少し外れた14:30頃。少し静かになった時間帯なのでしょう。従業員の方々が店先で材料の準備をしているところにのんびりとした空気を感じました。

マレーシア ペナン「東北餃子」

そしてもっとも印象あるのが、壁に大きく掲げられた「手工餃子(手作り餃子)」のメッセージ。一個二個と水餃子を噛みしめて食べ進むと、中国の伝統の光景に戻っていくようです。

マレーシア ペナン「東北餃子」

5 シンガポール「東北人家」

チャイナタウンの北端となるUPPER CROSS STREET 沿いにあります。

この通りは他にも複数軒「東北」を謳った店があるので、さしずめ、「ミニ東北通り」と言えるかもしれません。

シンガポール「東北人家」

全体的にコストパフォーマンスが高い店で、特にランチタイムは相当混むようですが、その日は14時過ぎに店に行ったため、比較的ゆっくりと食事ができました。

餃子には餡がみっちりと入り、皮もしっかりとして、「餃子が主食」である文化を改めて確認できます。

シンガポール「東北人家」にら菜豚肉水餃10個
にら菜豚肉水餃10個=S$6.48 (約¥700)

店の奥では手作りの餃子制作中であるのが覗き見えます。配達・持ち帰りの注文は随時入っているので、そのためなのでしょう。

シンガポール「東北人家」メニュー
シンガポール「東北人家」メニュー

シンガポールはもともと中国系の移民の方々が75%程度と高い国なのですが、反面、時代の流れと共にアイデンティティーを「シンガポーリアン」と持つ傾向にあるようです。

しかし一方で、ここチャイナタウンの再開発等で、中国の伝統を継承していく動きもチャイナタウンを歩き回るとひしひしと感じます。中国それぞれの地方色に溢れたレストランが集結したこの地で、様々な店での餃子を食べ比べることも、大いなる楽しみとなります。

まとめ

中国からの移民の歴史を見たとき、大きくは「鄧小平の改革開放の1980年頃『以前』と『以降』に分けられます。『以前』は華南地区からの移民が大半で、『以降』は全地域から、と言えます。餃子店においては、『以前』の店は現地化が進んだ店、『以降』の店で東北地方出身の方々の店は伝統を守る店、と全体的には特徴付けられます。

今回挙げた5地域の5店舗は、すべて伝統を守るタイプの店なのですが、もちろん時間の経過と共に多少の現地化は進んでいくものでしょうが、店の古さ新しさによる雰囲気の違いはあるものの、「中国東北地方を連想させる」共通の雰囲気に覆われていたところに、まずは驚嘆しました。

それぞれの店のメニューは、日本のいわゆる町中華的に多彩なメニューを揃えているのですが、明らかに主力は水餃子で、他のお客さんの注文状況からも見て取れます。水餃子の皮は基本厚めで、主食とするのに申し分ありません。

「東北地方の原点」を測る一つのポイントは、「酸菜」(発酵されて酸っぱくされた白菜)が使われているかどうか、なのでしょうが、今回の5店舗のうち、中国深圳の「喜家徳」を除く4店舗でメニューにあります。「春ちゃん」では、日本人客の多くは酸菜の水餃子を注文されている、ということで認知が進んでいるところも興味深いです。「喜家徳」については、一度もう少し突っ込んだ部分を聞いてみる機会ができれば、と思っています。

以上が、今回廻ったところで見られた表層的な部分なのですが、次の段階として広がる関心が、「お客さんの構成と状況」となります。

例えば、日本では、いわゆる「ガチ中華」の流れの中で、一般日本人にも客層を広げてきているのですが、他の東南アジア諸国ではどうなのか? 

「現地化展開」以外に、「伝統文化の伝播」という側面でも広がりを見せて行けば非常に面白いと思います。じっくりと時間をかけて、現地化展開という側面を踏まえて状況を見続けていきたいと考えます。

(近藤雅義)

店舗情報

春ちゃん手作り餃子

新宿区百人町4-8-2 

北方餃子源

G/F,134 Portland St,Mong kok, Honkong

喜家徳

中国広東省深圳華強北路2009号

東北餃子

56,Jalan C.Y.Choy, George Town 10300, Pulau Pinang Malaysia

東北人家

22 Upper Cross St, Singapore

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記事を書いてくれた人

近藤雅義

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