【北京発】1個30円と感動のお得感!行列ができる粉もの屋で食べ比べ

3月下旬にコロナ後、初めて北京に行ってきた。

北京在住の友人からは「びっくりするほど物価が上がったから覚悟してきてね」と言われ、春節に天津の実家に帰国していた友人からは「知っているお店が(コロナで)ほとんどなくなっているよ」と言われていた。

北京に着き、宿に荷物を置くやいなや馴染みのお店のチェックに出かけた。お店が近づいてくるとドキドキ、視角に入ると一瞬緊張が走った。

私が好き焼餅(シャオビン)屋も麻辣烫(マーラータン)屋も無事だった~。興奮のまま周辺をざっと歩くと、個人経営で古く小汚いけど、うまい店はいたって普通に営業していた。

逆に見事になくなっていたのはチェーン店。一時は行列が絶えなかった「鮑师傅」などのチェーンの点心店も消えていた。コロナ禍を生き抜いたとはいえ、影響も大きな今だから、これからも北京に行くたびに通わずにはいられない粉もの屋さんを応援の気持もこめて紹介したい。

1.老北京焼餅鋪

間口1メートルほどの細長い店舗が目印。ショーケースの中にはゴマたっぷりの焼餅(シャオビン)が2種類。色が薄いほうが軽い塩味の椒塩、色が濃いほうは、芝麻醤を生地に練り込んで焼いた麻醤だ。

老北京焼餅鋪
老北京焼餅鋪
東城区安定門内大街222号

コロナ前の数年、行列が長かった時があった。その頃を思えば2024年3月はおちついていた。「老北京焼餅鋪」は同名店舗が何軒もあるので、この写真と住所を見ていってほしい。

老北京焼餅鋪看板
看板に見える「一直被模倣、従未被超越(ずっとマネされ続けているが、いまだに越えられたことはない)」がいい! こんな小さなお店でも味に対する自信がみなぎっている。でも、これは誇張じゃなく、本当においしい。

中国では焼餅とは、焼き餅ではなく、小麦粉生地を焼いたパンのようなもの。中国北方の主食の1つで、中でも北京のものは表面にゴマをまぶしたゴマパンだ。

羊のしゃぶしゃぶの涮羊肉(シュアンヤンロウ)には欠かせない焼餅は、北京っ子にとっては日本人のお米に対する思い入れと同じようにこだわりがある。だから老北京焼餅鋪みたいな目立たない店もおいしいければ、行列店になるのだ。

焼餅はザクザク系ともっちり系の2種類。老北京焼餅鋪の焼餅は間違いなくザクザク系。ラードをたっぷり使って、層になった生地がザクザク。焼き立てはこのザクザク感がたまらん。このザクッと軽めの食感にあうのは、麻醤より椒塩なので、椒塩がおすすめだ。もう少し重めの食感が好きなら麻醤も美味しい。

老北京焼餅鋪の椒塩味の焼餅
老北京焼餅鋪の椒塩味の焼餅。値上げしたせいか、今年はややサイズがでかくなっている気がする。

2024年3月下旬、この焼餅が1個1.5元(約30円)! 2019年12月が1個1.2元(18円)だったので、大きく値上がりしてはいない。こんな美味しい焼餅が未だに1個30円なんて、感動ものだ。

老北京焼餅鋪の椒塩味の焼餅 中身
中はこんな風に層になっている。それなりに層が厚いのでサクサクというよりはザクザクが近い。しっかりきいた胡椒と塩味がうまい!

2.満記焼餅

イスラム教徒の回族が多く住む北京のイスラム街と言えば、牛街。

この牛街の牛羊肉市場の入り口の右側にある小さなお店が満記焼餅。コロナ前からいつも5,6人が並んでいる人気店だったのが、今回行ってみたら、ぎゃ~っと悲鳴をあげたくなるほどの大行列店に変わっていた。これじゃ、旅行者は買えないじゃないか! 今回は泣く泣くあきらめるけど、次は食べたい。

満記焼餅
満記焼餅
西城区輸入胡同2号

同名店舗が北京には何軒もあるので牛街牛羊肉市場を目印に探せば、間違いなし。

満記焼餅の椒塩焼餅
満記焼餅の椒塩焼餅。私は椒塩味が好きなので、いつもを椒塩味を買うけれど、満記で人気なのは麻醤味のほう。

サクサク系の老北京焼餅とは違い、もっちり系のお店。やや厚めの層の焼餅は、ずしっと噛み応えがある生地が美味しい。

2023年11月は1枚1元(約20円)だった。今は値上がりしているに違いないけれど、1枚1.5元(約30円)ぐらいだろう。

3.鼓楼饅頭

北京で一番有名な胡同と言ってもいい南鑼鼓巷の北側にある鼓楼饅頭は以前の名前を「山東呛面饅頭店」という。旅行者の私にとっては、常に常に大行列でごくたまに列が10人以内という時に並んで買うしかないお店だった。

鼓楼饅頭店
鼓楼饅頭店
東城区鼓楼東大街139-1

南鑼鼓巷と鼓楼東大街の交差点をわずかに東に行けば、すぐ到着。

徒歩15分ほどかかるが、安定門内大街には支店(安定門内大街181号)もある

私が山東呛面饅頭店を知ったのは2011年、呛面饅頭(チャンミェンマントウ)が普通の饅頭とどう違うのか、なかなかわからなかった。北京出身の料理家であり、料理教室主催者のたきざわいにさんにお尋ねしたところ、子どもの頃からよく食べた思い出の味でもあり、丁寧に説明をしてくださった。

「呛面は一回発酵した生地にまた小麦粉を練り込んで、2次発酵ほとんどしないで蒸します。そうすると生地が柔らかいけどしっかりして、つまり腹持ちがいい饅頭になります。その過程によって噛めば噛むほど甘くなるので好きな人が多いです」

北方の主食饅頭は、ミシ~ッとつまった生地が特徴。蒸したては、ふかふかとやわらかいけれど、つまった生地なので腹持ちはむちゃくちゃいい。たきざわさんが言われるように噛んでいるとほのかに甘く、この甘さが感動的に美味しく、癖になる。

鼓楼饅頭店 呛面饅頭
こんもり丸い饅頭ではなく、縦長で釣鐘のような形が特徴。
呛面饅頭
中はこんなにつまっている。気泡がないからとにかく食べごたえがある。

2024年3月、呛面饅頭は1個1.2元(約24円)。

4.宮門口饅頭

今年の北京で、天橋に近い香廠路で大行列の「宮門口饅頭」を発見。一緒にいた北京在住の友人は宮門口饅頭でよく買うので、おすすめを教えてくれた。

2002年創業の宮門口饅頭店は、他の3店と比べ、チェーン店なので店舗数も多く、扱っている粉ものの種類も豊富。

宮門口饅頭
宮門口饅頭鋪(創始店)
東城区香蔽路1号

「網紅」というネットで話題のお店でもあり、検索すると動画が多数あがっており、市内に支店も多数。

烤饅頭(カオマントウ)1個1.5元(約30円)。蒸した饅頭に比べ、烤饅頭はオーブンで焼いて作るので、表面はカリっと香ばしく、中はしっかりつまっているけど、ふかふか。ほのかな甘味もあって、美味しい。

宮門口饅頭
宮マークのほのかに甘い饅頭?(名前不明)は1個3元(約60円)。味は烤饅頭と同じように控えめな甘さで、食感は烤饅頭よりもふわっと軟らかい。

看板商品の豆包(トウバオ)は甘さ控えめのこしあんが入りの饅頭。上品な甘みのあんまんは和菓子みたいだった。今回3種類しか食べられなかったけれど、毎年行って、あれこれ試したいお店だ。

コロナ前、一杯14元だった麺が18元になり、20元代で食べられた定食が33元になっていた。スタバでモカのトールサイズを飲むとなんと1杯33元(約660円)。なにかにつけ値上がりした中で饅頭や焼餅などの伝統的な粉ものは、政府が価格を抑えているのか、びっくりするほど値上がり幅が少なかった。

北京在住の友人たちは、物の底値が上がったと言う。そんな状況で伝統的な粉ものの安さ、美味しさは感動ものだった。逆にこじゃれたベーカリーのパンは日本より高かった。こじゃれたパンは、時にはずれがあるけれど、伝統的な粉ものは、決して裏切らない。旅行者は北京にいる時は伝統的な粉ものをもっと食べよう。

(浜井幸子)

店舗情報

老北京焼餅鋪

北京市東城区安定門内大街222号

満記焼餅

北京市西城区輸入胡同2号

鼓楼饅頭店

北京市東城区鼓楼東大街139-1

宮門口饅頭鋪(創始店)

北京市東城区香蔽路1号

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記事を書いてくれた人

浜井 幸子

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