みなさん、こんにちは。中医師の村木亜ゆみです。
まずは新年おめでとうございます。
え? 新しい年になってもう2か月すぎてるだろ、って?
いやいや、中華圏では「春節」と呼ばれるお正月があります。
農暦ともいわれる旧暦の新年は月の満ち欠けをもとにしているので、毎年その年の1月1日が違うのです。今年は2月10日、立春の後に春が来る年でした。
前回、日本のおせち料理を薬膳的に見てみると、という話を書きましたが、今回は
「中華圏のお正月におせち料理はないのですか?」
と質問をいただいたのでそれにお答えしますね。
村木は昨年末、友達が「中華のおせちを取り寄せたのですが一緒にどうですか?」と誘ってくれて、ご馳走食べながら年越し女子会でした。女子?という突込みはこの際なしで。その時にこの友達が「むー先生の実家はおせち料理はいつ食べるんですか?」と聞かれたので、うちはおせち自体作らないという話をしたところ、お友達のところは年越しのときに食べるそうな。あら、中華圏もそうなのよ。
中華圏では、春節、つまり旧正月1日目の前日(除夕)、日本でいうところの大晦日は家族全員が集まって食卓を囲み、年末の特番を見たり、はいずこも同じですなあ。
そこで「年夜飯」と呼ばれる年越しのごちそうを食べます。日本と同じく、使われる食材が中国語ならではのおめでたい語呂合わせになっているのがおもしろいところです。今日は薬膳的なところも見ましょうね。
まずは「魚」。
おめでたい絵に「年年有魚」と書かれたものを見たことがあると思いますが、余裕の「余」が中国語では「魚」と同じ発音なので、おめでたいものと考えて、魚を揚げたり蒸したりしたものが食卓に登場します。
魚は性味が温または平・甘のものが多く、おめでたいうえに身体も元気にする食材です。ただし、海の魚よりは川の魚が多いお国柄です。生姜やネギを載せて蒸したものに醤油ベースのたれをかける清蒸(チンジェン)は村木が以前作ってレシピ紹介したことありますので見てね。
次に「鶏」。
「吉」と発音が同じなのでおめでたいと考えます。性味は温・甘で脾にはたらくので、お腹に優しく、滋養強壮のはたらきもあります。柑橘類の「橘」も「吉」に似ているので縁起物とされており、お正月に金柑やみかんの鉢植えを飾るのはこのためです。
柑橘類は甘・酸、ビタミンCも豊富で、かぜの予防になります。みかんの皮を干した陳皮は気を巡らせるはたらきがあります。みかんを食べる前にきれいに洗って皮だけ干したら自分で作れますよー。紅茶に入れたり、料理酒に漬け込んだり。村木はお部屋の芳香剤に使っています。
野菜もいろいろ食べますが、白菜は「百財(財産がたくさんある)」、レタスは生菜と呼ばれるので「生財(財産を生み出す)」めでたいものとして食べられますし、干すと髪の毛に似た形状になる海藻の一種「髪菜」は「發財(お金が儲かる)」ので必須アイテムです。白菜は微寒・甘、レタスは涼・苦でどちらも身体の熱をとるはたらきがあります。
てな話をしながら私たちも年越しそばをいただきましたが、中華圏だと「年越し餃子」。
なぜかというと、餃子の発音が「交子」と似ているので、子の刻に年が交代するから、餃子の形が昔の金塊に似ているから、など諸説ある模様。ただし、小麦食文化圏の習慣と聞いたことがあります。麵を食べる地方もあるとかで、各地で食文化違うのもまたおもしろき。日本だっておせち料理いつ食べるか、お雑煮どんな風かも地方によって違うしね。
こういったお正月のごちそうセットを社員に配る企業もあります。
我が家も職場から魚やら肉やら、高級なスープのセットやらもらってきたことがありますが、大家族向けの量なので持て余すことが予測され、地元の人と結婚して家族一同で年越しをする日本人の友達におすそ分けしたことがあります。「佛跳墙」と呼ばれるこのスープは、美味しすぎて仏様も壁を飛び越えちゃうそうですが、これだけは残しておけばよかったかと後悔する村木であった。
(村木亜ゆみ)