大ヒットドラマ「陳情令」の「蓮根と骨付き肉の汁もの」を作ってみた

大ヒットドラマ「陳情令」の世界とは・・・。

シリーズ累計再生回数95億回越えという大ヒット華流ドラマ「陳情令」、行く道は違えど、同じ義に生きる……。正邪の区別って何だろうと考えさせられます。

正しい道を厳格に守ることが完全に正しいのか、ルールのために真実に目をつぶっていないのか。反対に、周りに邪と批判される行動も、その目的は規則からこぼれた弱者への愛なのではないか。 こうしてみると、太極拳を長くやっている私にとっては、このドラマの世界は太極図のようだなあと思えます。陽の中心に陰があり、陽極まれば陰と化す。陰の中心に陽があり、陰極まれば陽と化す。陰と陽とは一体になっているものであり、どちらかだけでは成り立たない。主人公のふたりもまさにこんな存在です。

「陳情令」が話題のブロマンス・ファンタジーってどういうこと?

「陳情令」の日本でのテレビ放送のキャッチフレーズは「話題のブロマンス・ファンタジー」となっています。これだけヒットすればアンチが出てくるのも当然で、確かに話題に事欠かないし、そもそもブロマンスというスタンスが微妙です。

原作のBL武侠オンライン小説「魔道祖師」がラジオドラマやアニメ化され、その実写版が「陳情令」なのだけれど、ドラマ化するにあたってBLがブロマンスに変わっています。ブロマンスとは男性同士の深い絆を描いた作品のジャンルで、恋愛ではなくあくまでも深い絆であるところがポイントです。これはBL作品を一般向けにするためのアレンジとも言えるのかな。

※ドラマ「陳情令」の原作のオンライン小説「魔道祖師」とは。
妖怪や邪鬼が跋扈する古代中国を舞台に、5つの修行者のファミリーが力を合わせて悪と戦います。主人公の魏無羨は鬼道の力を借りて活躍しますが、それが邪とみなされて辛い道を歩みます。彼の唯一の理解者である藍忘機とともに真相を解き明かしていく物語です。アニメは日本でも吹き替え版がヒットしました。

もともとこの概念はハリウッド映画発らしいのですが、今では美しい青年たちが演じるアジア・ブロマンスは1ジャンルとして確立しています。その代表作がこの「陳情令」というわけです。

美しい主演俳優の肖戦と王一博は今やアジアの大スターです。この路線を知って「陳情令」をみれば確かに、主要な女性キャラクターはほぼ姉で、あとはおばあちゃんと悪女くらい。ヒロイン的な女性は登場しません。男女の恋愛エピソードはないのですが、まあ、「弟かわいい!」的な部分でも女性視聴者の心をくすぐります。

「陳情令」も「魔道祖師アニメ版」もAmazonプライムをはじめU-NEXTなどの配信で見られますので、加入している配信サイトをチェックしてみてください。サイトによってはお試し無料もあるようです。

お姉ちゃんが作ってくれる、懐かしくてほっとするスープ

壮絶な戦いが続く日々のふとした隙間に、主人公の姉(師姐=姉弟子の設定ですが、いっしょに育ったので実の姉のような存在)の江厭離が弟たちに作ってくれるのが「蓮根と骨付き肉の汁もの」です。つまり、レンコンと豚スペアリブのスープ、あのドラマそっくりなのを作りたい!と思っていたところ……。

「メニューにはないのですが、よかったら」と河童軒で出してくれました!!

東京ディープチャイナ研究会の学生ライターでもある林正羽くんのご実家の東大島の河童軒に伺ったときのこと。人気の福建料理をいろいろいただいて、さて、次はどうしようと一息ついたときに「これ、メニューにはないのですが、よかったら。まかない用に作ったものです」と、まさにドラマにビジュアルがそっくりの「蓮根と骨付き肉の汁もの」を出してくれたのでした!

この記事を書こうと色々調べている最中だったので、本当にびっくり! 何しろドラマはファンタジーなので、舞台になった地方が特定できず、調べるほどに地域によるレシピのバリエーションが出てきて煮詰まっていたところでした。これも天意かと。

このスープはあまりにも普通のもので、わざわざお客さんに出すようなものではないとのことですが、だからこそ家庭の味なのでしょう。中国の南の地方では、家族の体調や天気に合わせて作るスープが生活の中で大切な存在とされています。お店で調理をなさっている林お兄さんに作り方を教えていただきました。ちなみに、河童軒の詳しいお店情報は青木邦彦さんが書いて下さっているのでお楽しみに!

河童軒直伝、蓮根と骨付き肉の汁ものを作る

私が作った材料は家庭用の圧力なべに対して

蓮根2節、豚スペアリブ1パック、大根5センチくらい、昆布少し、干ししいたけ一つかみ、生姜ひとかけ、塩、コショウ、ナンプラー。家庭の鍋で作るので、量は適当です。

まず、豚のスペアリブを下処理します。

鍋にお湯を沸かして、その間にスペアリブを水道水で洗います。骨付き肉は血液や血管などがついているので、この段階でできる限りきれいにしてください。お湯が湧いたらスペアリブを下ゆでします。

表面の色が変わるくらい茹でたらザルにあけて、触れる程度に冷ましたらもう一度、流水で洗います。ゆでた後は血液が固まっているので、生の時に残った血液や血管もきれいに取れます。

次に、肉以外の材料を準備します。

生姜は皮付きのままスライス、干ししいたけは戻さずそのまま、大根は皮をむいて厚さ2センチくらいの半月切り、昆布は一口大におでんのように結ぶ。

私は大根の皮を中華包丁でかつらむきにするので、捨てないであとで落し蓋代わりにします。

そして、圧力なべに入れて煮る。

全ての材料を圧力なべに入れて、塩コショウで味付けして、蒸気が出てから15分煮ます。この時、大根の皮や、あればねぎの青いところを落し蓋代わりにするとさらにおいしくできます。ふたが開けられるくらい圧が下がったら味見して、ナンプラーを少し入れて味を調整してください。

「味はあくまでも塩コショウが基本で、ナンプラーは隠し味程度に少しだけにする様に」と、林お兄さんは2回も繰り返しました。原料のうまみを邪魔しないように。

そして出来上がったのがこれ。かなり忠実に再現できて、おいしかったです。河童軒のシンプルなものより欲張って具沢山になりましたが、一応これもスープということで。

優しくてボリュームのある家庭料理なので、ぜひやってみてくださいね。

本場の味はどんな感じ?

林お兄さんによると、この料理は本来、ひとり分ずつサーブする蓋つきの器に入れて蒸すのだそうです。

そうすると澄んだスープになるとか。でも人数分の器に入れて蒸すのはスペースも時間もかかるので、圧力なべで作るのが現実的。

ただし、蒸さずに圧力なべで煮て灰汁のない澄んだスープにするためには、上記の肉の下処理が必要なのです。 日本語学校の学生にも聞いてみました。福建省出身の学生によると、やはり、「レンコンとスペアリブのスープ」はとっても伝統的で一般的なものだそうです。

やはり「ああ、懐かしいです。家でもよく作っていました」とのことでした。

Writer
記事を書いてくれた人

Amy 松田

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