今年3月に池袋にオープンした中国西北・ウイグル料理の店「大新疆」に、取材に行ってまいりました!
スパイシーでボリューム満点なこちらの料理、一度食べたらクセになってまた行きたくなること、間違いなしです…!
今回いただいたのはこのラインナップ↓
- 大盤鶏(大皿鶏肉煮込み)
- 羊肉串
- 羊スペアリブのナン乗せ
- 牛肉餅(牛肉入りおやき)
- 牛肉麻婆豆腐麺
- 羊肉炒め麺
- 炒りピーナッツ
まず運ばれてきたのは、大盤鶏(大皿鶏肉煮込み)。ウイグル出身のお姉さんが運んできてくれたのですが、料理名の通りの大皿山盛り、テンションが上がります。
ピリ辛の汁にひたった大ぶりの鶏肉とじゃがいもを口いっぱいに頬張ると、これ以上なく幸せな気分に……多分、脳内麻薬が出ているんじゃないかと思います(笑)しっかりめの味付けにビールが進んで、最高。ご飯も欲しくなってきました。余談ですが、思い切り食べてもなかなか無くならない大皿の肉料理が大好きです。食いしん坊なので……
新疆ウイグルと言ったらド定番の羊肉串と、お肉の香り引き立つ、牛肉餅。牛肉餅はお店一押しメニューで、お酢をつけて食べるのがおすすめとのこと(一口目が美味しすぎて、気づいた時には全部お腹の中でした。皆様は最初からお酢のご準備を)。
日本ではあまり食べることがない羊のスペアリブ、柔らかくて感動……! 実はこのナンが美味しくてハマります。
旨みがギュッと詰まった麻婆豆腐もこのお店自慢の一品。麻婆豆腐麺ってウイグルにあるの?と聞くと、こちらはお店オリジナルの料理とのこと。しかしコシのある麺の食感はウイグルっぽい。新疆ウイグル料理ぽさと、いわゆる中華料理のミクスチャが面白い!
一本一本があまりにも長いので、ハサミが一緒に運ばれてきまして(笑)、オーナーの呉冠達さん自ら、チョキチョキ切って取り分けてくださいました。
しかしこの長さ、もしかして手作り…?と聞くと、呉さんは「厨房に見にきなよ」と。良いんですか…! とワクワクしながら入ると、タン!タン!とダイナミックに麺を打ちつける音。こうして手延べしているから、プルプルもちもちの食感が生まれるんですね!
ちなみに新疆の麺は、手で「拉」(延ばす、引っ張るの意)することから、「拉条子la tiao zi」と呼ばれます。
羊炒め麺を炒めている動画↓
オーナーの呉冠達さんは安徽省出身で、2006年に料理人として来日。横浜中華街で数年間働いた後、赤羽に移り、料理人として腕を振るっていたそう。
「あの時はエネルギーに溢れていたから、夕方5時から朝5時まで毎日200皿の料理を作っていたよ」と、呉さん。
その頃は、自身でもウイグル料理を作ってお店で出していたのだそうです。その後、共同で飲食店の経営するようになり、現在、池袋・新宿などで他に計6店舗の経営に携わりながら、こちらのお店を経営しているとのこと。
ウイグル料理の店を持つのは、呉さんの長年の夢だったそう。
「以前、上海でウイグル料理を食べた際に、こんなに美味しいのか!と衝撃を受けて、それ以来、いつかはウイグル料理の店を開きたいと思っていたんだ」
ついに夢が叶ったんですね…素敵!
そんな呉さん、ウイグル料理が好きすぎて、夜は毎日のようにお店に寄って拌面(まぜそば)を食べて帰るのだそう。オーナー自ら毎日食べたくなる料理、そりゃあ美味しいはずです!
ちなみに先ほど紹介した麻婆豆腐麺は、以前赤羽で呉さんが作っていた牛肉麻婆豆腐が、1人で2皿平らげるお客さんがいるほど大人気だったため、同じレシピでこちらの店舗でも出すことにしたらしく。
「僕が作った味には及ばないかもしれないけど、それでも結構イケるでしょ。」
確かに。しかし呉さんが作った麻婆豆腐も、いつか食べてみたいわぁ…!
本日、ふた皿めの麺は、先ほど延した拉条子をいただきました。高温の油で炒めて香りが立った羊肉と香味野菜がベストマッチ!
王老吉を頼んだところ、氷たっぷりのビールジョッキでサーブされたのが、良い感じにジャパナイズされているなぁと。個人的にかなりツボでした。
料理人でもあるオーナー・呉さんのウイグル料理愛が詰まった、味にこだわったお店。ウイグル料理が初めてでも、中華料理に馴染みがあれば、どれも食べやすい味付けで、美味しく楽しめます。
羊肉串や炒りピーナッツをはじめ、ウイグルらしい、お酒に合うパンチの効いた料理やおつまみが盛り沢山なので、ビールが美味しい夏の間に是非ともまた訪れたいと思うお店でした。
オーナーの呉さんをはじめ、もてなしてくださったHUHEさん、お店の方々、そして一緒に取材してくださった中村さん、ありがとうございました。
(東京のちえ🔚上海)
店舗情報
中国西北料理 大新疆
豊島区西池袋1-38-3 D:Vort池袋 8F
Writer
記事を書いてくれた人
東京のちえ🔚上海
代表からのひとこと
「東京のちえ🔚上海」さん、オーナーの呉さんのウイグル麺に対する思いをきちんと伝えてくれて、ありがとうございました。
実は、この店のFacebookの投稿に対して、あるウイグル人の方からの以下のコメントがありました。
「ウイグル料理を好きになってくれてありがたいですが、この店はウイグルと一切関係無いし、味は『本格』と言えません。もし本当に『本格』を食べたいなら新宿、四ツ谷、埼玉にあるウイグル料理店をお勧めします」
これはどういうことでしょう。投稿に対するあからさまなクレームではないと思いますが、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人のみなさんの偽らざる心情を伝えていることは理解しなければなりません。
これに対し、ぼくは以下のようにコメントしました。
「おっしゃるとおりです。純粋なウイグル人経営の店(シルクロードタリム=新宿、タンドールマスター=四ツ谷、シルクロードムラト=埼玉など)とは違い、ここは漢族経営の店ですものね」
ウイグル人はもともとトルコ系の民族で、食文化としては隣国のウズベキスタンに近く、漢族経営の「新疆ウイグル料理」とはかなり味が違います。
これはどちらが美味しいとかいう話ではなく、新疆ウイグル自治区に漢族の人たちが長い時間をかけて移住するようになって、双方の料理がミックスして生まれたものです。
その後、彼とは何度かメールのやりとりがありましたが、ぼくが彼の指摘した新宿、四ツ谷、埼玉の3つのウイグル人経営のお店を訪ねており、「ウイグル料理」と「新疆ウイグル料理」は別物であることやその背景について理解していることを知って安心したようでした。
そして、今度一緒にウイグル料理を食べに行きましょうと話しました。
この話は、漢族である呉さんのウイグル麺愛とはまったく別の話と考えていいでしょう。実際、今日の東京もそうですが、中国でも創作的な新疆ウイグル料理の店が増えており、オーナーは漢族というケースも多いです。
少し話が長くなりました。このように「ガチ中華」の世界に分け入っていくと、中国や中国語圏で起きていることがそのまま日本でも見られることがあります。そこが面白さだとぼくは思っています。
それにしても、彼はどんな店に案内してくれることでしょう。とても楽しみです。