もうすぐ中秋節です。中国では中秋節に月餅を食べる話をよく聞きますが、台湾にも17世紀に中国から伝わりました。当初は貴族や富裕層の食べ物でしたが、次第に庶民の間にも広まったそうです。
家族円満の象徴である満月を家族で愛で、満月に見立てた月餅を家族で食べたり送り合ったりする文化があります。ビジネス商戦の熱も高く、台湾では中秋節の2か月以上前から月餅の予約や宣伝が始まり、日本でおなじみのスターバックスやミスタードーナツ、ハーゲンダッツにも月餅がありました。




台湾に行く前に台湾の月餅について調べると、私たち日本人が思い浮かべる月餅は「広東式(下図①)」と言われるもので、台湾では月餅は「蛋黃酥(ダンホァンスー:下図②)」という塩漬け卵と餡を中に入れたパイ生地の丸いお菓子が人気だと知りました。
それを証拠に、台湾の友達や知り合いに下の画像を見せて「台湾で月餅といえばどれ?」と聞くとほとんどの人が②と答えました。
蛋黃酥は日本でも普段から中華菓子店や中華物産店で買うことができますが、台湾でこれが「月餅」と呼ばれるとは知りませんでした! 蛋黃酥生地の基本材料は、小麦粉、バター、卵、砂糖、塩です。加えて中に入れる蛋黃、餡の元になる紅豆などの食材と、生地にはラードを使用する場合もあります。
また、「小月餅(上図③)」という同じパイ生地で白餡や緑豆餡を包んだお菓子もあります。蛋黃酥と小月餅をひとくくりに「小月餅」という言い方もします。
台湾も昔は広東式月餅しかなかったそうです。1980年代に台湾の中部、台中のお菓子店の店主が、伝統的な月餅は一口で食べきれないことから、台湾の伝統的な製菓技術と日本の製菓技術を融合したお菓子を作りました。それが小月餅(含む蛋黃酥)と呼ばれ、台湾全土に広まって現在に至るそうです。
他にも、「綠豆椪」と呼ばれるバターが入ったパイ生地に緑豆餡や豚肉を入れた丸い形のお菓子もあります。今回は、台湾現地や家で食べた月餅(「蛋黃酥」「小月餅」「広東式月餅」)をお店ごとに紹介します。
佳德鳳梨酥(ジャードゥ フォンリースー)
台湾の伝統的菓子がずらりと並ぶお店です。1975年に開業し、今年で創業50年で入店には行列ができるお店です。店内は本当にたくさんの種類の蛋黃酥やパイナップルケーキなどがずらーりと並んでいます!


こちらでは蛋黃酥を3種類と、小月餅を購入しました。
蛋黃酥は卵の黄身以外は紅豆(プレーン)と棗餡、菠蘿 (ボールォ) を選びました。
菠蘿は60元(約300円)、他は55元(約275円)で菠蘿以外は平均価格です。
菠蘿は中国語でパイナップル(鳳梨の別の呼び名)ですが、ここでは日本で言うメロンパンの見た目を指します。台湾や香港では日本のメロンパンに値するものを「菠蘿包」と呼びます。そのため、この蛋黃酥の頭もカリッとした見た目です。
この違いだけではなく、この店の菠蘿蛋黃酥は「奶蛋酥」と書いてあります。ベジタリアン対応食という意味です。プレーンと棗は成分に豚肉のラードが使われているので、餡は一緒ですが、台湾にはベジタリアンの方も多いので、見た目でも違いが分かるように工夫してあるのだと思います。
さて実食です。まず2つに割ってみます。

棗とこしあんは見た目がさほど変わりません。
紅豆は甘めのこしあんで、棗餡はねっとりしたさつまいものような味わいの甘さに塩味が感じられました。棗は餡にするとこんな風に変化するんですね。
そのあとに菠蘿を食べてみると、ラードを使用していないせいか、味がシンプルなバターだけの甘さに感じました。確かにラードを使用した方は+αのコクのある味だったように思えます。
また、この店には「鹹蛋黃酥」もあるので、こちらの方があまじょっぱさがあるかもしれません。
続いて、小月餅を食べてみたいと思います。
小月餅は生まれて初めて食べるので楽しみです! 佳徳には小月餅の名称では1種類のみ(55元(約275円))販売です。何軒か見ましたが、小月餅は基本的に1店舗で1種類くらいです。小月餅はベジタリアンでも食べることができます。
台湾人の知り合いは、ベジタリアンは (肉を使うことがない)小月餅の方を食べる言っていました。切ってみると餡が生地の中にいっぱいに入っています。

食べてみると、軽くほろほろとした食感です。生地にバターを使っていますが蛋黃酥ほどこってりしておらず、まるでギルトフリーのような気分です。でもカロリーはしっかりあり、276kcalです(笑)
李亭香(リーティンシャン)

台北でドライフルーツや乾物の問屋が多い迪化街(ディーファジエ)にあり、1895年創業ととても古くからある店で、亀の形をした「平安龜 」というお菓子が有名です。

こちらの蛋黃酥は1種類のみ販売しています。
値段は75元(約375円)で少し高めです。ラード不使用のベジタリアンでも食べられるものです。この蛋黃酥の焼目は広範囲についていて表面のパイ生地が割れにくくなっているように見えます。切り口は一般的な蛋黃酥と変わりません。

味は佳德のものとだいぶ違い、甘さ控えめの餡にはっきりと塩気が感じられ、上品な仕上がりになっています。
佳德とはまた違った種類の伝統的なお菓子が何種類もあるので、通った際はぜひ覗いてみてほしいと思います。
台北駅構内で買える小月餅もあります。
漢坊餅藝(ハンファン ビンイー)

台北駅周辺に限って調べていると、小月餅が有名な店を見つけました。台北の隣の市、新北(シンペイ)のお店だそうです。お店には蛋黄酥などいくつもの種類が一か所に見やすく置いてあります。


お店の人に「台湾では蛋黃酥も小月餅も、「月餅」なんですか」と聞くと、「そうです。中秋節に送るお菓子はどれを入れても総合的に『月餅を送る』と言います」と言っていました。なるほど…また新しい文化を知りました。
さて実食です。こちらの看板商品「金沙小月餅」(52元:約260円)は大き目ですがカロリーは180kcalで控えめです。バターの他にオリーブオイルも使用しているからでしょうか。
切ってみると、中身がホロホロと出てきます。「沙」とは砂の意味で、その名の通り見た目からしてサラサラしています。

食べてみるとそのサラサラとした食感を確かに感じ、口の中で溶けていくような餡!冷凍して解凍途中に食べると、また違う味わいがあるとのことで、食べてみると…バニラアイスのような味がしました!
今まで見たお店は台湾発祥のお店のこともあり、広東式月餅は見なかったのですが、地元の人によると、紹介した蛋黃酥、小月餅、広東式月餅はパン屋やスーパー等で3種類そろえてしばしば販売されているとのことです。
最後に、大型スーパーの家樂福で広東式月餅を見つけることができました!
家樂福(ジャーラーフー:カルフールの中国語名)

台湾の南西の雲林県で作られているものです。蛋黄入りのものはなく、抹茶、寒天柚子、棗、五穀等が小サイズは52元(約260円)で売られていました。
この中で、日本で見たことのない2つ、桂圓(竜眼餡)と香菇豆蓉(きのこ餡)を選びました。
竜眼とは南国フルーツの一種です。竜の眼に見立てられてその名になりました。果肉がライチと似ていますが、ライチよりさっぱり感はなく、甘さが強い感じがします。
2種類とも白餡ベースで生地の感じといい、日本の饅頭を食べているのに近い感じがします。
餡の甘さは今まで食べた台湾月餅の中では普通の甘さで、どちらかというと控えめな方になると思います。桂圓の方は言われないと分からないですが、竜眼の果肉が入っていることがわかります。
きのこ餡は食べると椎茸の風味が分かり驚きです! 椎茸がスィーツになってしまうなんて!
台北犁記(タイペイリージー)
今回は購入しなかったのですが、台北では「台北犁記(タイペイリージー)」も有名で、中国語で「百年老店」と言われる100年以上の歴史がある老舗です。ここでも月餅やパイナップルケーキ等が購入できます。


伝統菓子店では月餅も一年中購入できるので、台湾に行った際はぜひ注目してみてくださいね。なお使用材料によっては、日本への持ち込みが不可のものもあるので各自で確認をお願いします。
(aokinapple)
店舗情報
1. 佳德鳳梨酥

台北市松山區南京東路五段88號
2. 李亭香

台北市迪化街一段309號
3. 漢坊餅藝 台北火車站店

台北市中正區北平西路3號1F (台北火車站1F 南2門右轉第三間)
4. 家樂福 桂林店

台北市萬華區桂林路1號
5. 台北犁記

台北市長安東路二段67號
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