今年の10月6日は、例年よりちょっと遅めですが、中秋節です。中国では、中秋の名月を眺めながら家族や大切な人と過ごします。
この中秋節にかかせない食べ物が「月餅」です。実は日本でも月餅は人気で、コンビニのレジ横などに置かれていますが、お饅頭の一種と思っている方も多いようです。
そこで、東京ディープチャイナ(TDC)では、みなさんに月餅を深く知ってほしいという思いから、日本国内のお店、通販で買える商品を選び、また中国文化に精通している人にも聞き込みをして、編集部に商品を持ち寄り、9月中旬某日、「第0回TDC勝手に月餅グランプリ」を開催しました。

※今回は「第0回」のため、買い求めた商品も、審査についても、すべて審査員が独自に選んでいます。だから「勝手にグランプリ」というわけですが、来年以降「第1回」を開催する予定ですので、もうすでにいろんな方が投稿してくださっていますが、みなさまおすすめの月餅をこれからも教えてくださるとうれしいです。自薦他薦は問いません。
これだけ集まると圧巻ですよね。本当にいろいろな月餅があり、個人店のお店の職人のテクニックやパッケージへのこだわり等いろいろな思いを感じ取れました。
本場台湾、中国の月餅は、今回は審査の対象外としましたが、メンバーが持ち寄ってくれた月餅も本当においしくびっくりしました。
開催経緯
実は事前に、生成AIで「月餅ってどんな種類があるの?」と副代表の私(多賀井)が聞いてみたのですが、ご当地、有名ブランドメーカー、ホテルで作られているものなど、その種類の多さを見て驚きました。
それが「東京ディープチャイナで月餅にまつわる企画をやってみたい」と思った理由です。半ば強引にはじめた企画でもありますが、審査に参加してくれた編集部のみなさま、ご協力いただきありがとうございました。
審査のポイントは、「味」「見た目」「独自性」「食べやすさ」「ギフト要素」など、複数の項目をもとに、東京ディープチャイナ編集長を含む7人で審査させていただきました。
【審査員】
審査委員長 | 中村 正人(東京ディープチャイナ 編集長) |
審査副委員長 | 多賀井 隆之(株式会社ライフエスコート 代表取締役) |
特別審査員 | 菊池 一弘(羊齧協会 主席) 村田 洋祐(フレンチシェフ、株式会社UN-BE 代表取締役) |
審査員 | 和田 茜(東京ディープチャイナ ライター) aokinapple(東京ディープチャイナ ライター) 文香(東京ディープチャイナ ライター) |
審査結果発表!
それではいよいよ審査結果の発表です。東京ディープチャイナで勝手に審査した結果、以下の7商品を受賞商品とさせていただきます。受賞された皆様おめでとうございます。
グランプリ
Cc点心

Instagram https://www.instagram.com/cctenshinn/
準グランプリ
味坊集団

審査員のコメント
もう「ガチ中華ブランド」という枠を超えて知られる存在となった味坊集団が、お客様の声をもとに3年かけて完成させた月餅でした。商品名はかわいく【味坊特製・完全手作り】。ころんと小ぶりな6個入りの月餅ギフトセットで、手のひらサイズの食べやすさ。1個ずつ小分け袋に入り、パッケージも愛らしく、ちょっとしたギフトにも最適です。
中身はあんこ・ナッツ・ラムナッツの3種類。今回はラムナッツを試食しました。羊肉を使った月餅と言われても、最初はは想像がつきませんでしたが、ひと口食べると香ばしい羊肉の香りとクリスピーなナッツが見事に調和し、クセになる味わいです。
味坊の月餅は、ザ・ペニンシュラ、ハイアット リージェンシー、ザ・リッツ・カールトンといった名だたるホテルブランドと並び紹介されるほど注目されています。
(多賀井)
▼2025年秋の注目スイーツ! 幸運を呼ぶ「月餅」コレクション
▼購入は通販サイトと老酒舗(ろうしゅぼう)店のみ。
オリジナリティ賞
中華面食


審査員のコメント
以前TDCの取材で記事を書かせていただいたお店で、通年で買える無添加で歯ごたえのいいナッツ月餅がおいしいので共有したいと思ったのが最初の理由です。
中秋節前にはギフトパッケージや限定の味の月餅を販売することは知っていたもののまだ行ったことがなく、行ってみると約10種類もの月餅がありました! 珍しい味も多く、今回食べ比べをした紅茶生地で豚肉フレーク等入りやチョコレートの他、東南アジアでよく使われるパンダンリーフを使用したものや生地にも黒ごまを使用したものも売られていました。
形もハートやうさぎなど全部違う形で、見るだけでも楽しむことができるので、ぜひみなさんにも知っていただきたいとオススメしました!
今回試食した中華面食の月餅3種の正式名称は、
- 豪华大五仁月餅(5種類ナッツ入り月餅)
- 伯爵茶香金丝坚果仁(紅茶・豚肉フレーク・胡桃・ヘーゼルナッツ入り)
- 棒果巧克力月饼(ナッツ・チョコレート) です。
オリジナリティもある上に今回食べたチョコは審査の中でも味の評価が高かった一品です。
(aokinapple)
Instagram https://www.instagram.com/liujimianshi/
デザイン賞
華菓日和

審査員のコメント
この店は「葛飾経済新聞」の記事(亀有に中華菓子専門店「華菓日和」 看板商品は黄身入りダンファンス)で知りました。今年亀有商店街に移転し、移転後は3分の2が日本人客という人気店です。
伝統的製法を守りながらも日本人にも注目されているのと、インスタグラムで改めて見るとそのお菓子の見た目が綺麗なので、かねてから一度行きたかった店でした。
店を訪ねると、一見洋菓子店のような外観のお店には約10種もの月餅が並べられていました。個包装のパッケージも綺麗なので、1つだけ誰かにあげても形になります。今回試食したのは「サンザシと林檎 月餅」でした。
ちなみに店主の張文亜さんは中国・福建省の出身。他の店と比べ、月餅のデザインが繊細できれいさを感じ、しかもデザイン(味)の種類も多いのでぜひ共有したかったです。個包装のパッケージも綺麗なので、1つだけ誰かにあげても形になります。
(aokinapple)
Instagram https://www.instagram.com/sweetdiarymatsudo/
トラディショナル賞
新宿中村屋

審査員のコメント
中村屋の月餅は1927年(昭和2年)より発売、日本の月餅の礎を築いたと言っても過言ではありません。詳しい歴史などは中村屋HPを参照してください。
味に加えこの歴史的背景を知り、日本で行われる月餅グランプリには外せない! と思い、持ち込ませていただきました。
今回受賞をした「栗月餅」は、月餅らしさは残しつつも日本人でも食べやすいようにカスタマイズされており、刻み栗を入れたしっとりとした白餡で舌触りもよく、自然な甘味で食べやすかったです。一つが約160円と手が出しやすいのもポイントが高いです。
(文香)
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▼日本人向けにローカライズ 新宿中村屋が広めた中秋の名月の供物「月餅」
イノベーション賞
甘露と虫二【氷皮月餅 开心果(ピスタチオ)】

審査員のコメント
今回購入したのは「虫二」です。冷凍月餅を自然解凍して食べます。和菓子の練りきりのような美しい見た目。日本での中華焼き菓子ブームを生んだ「甘露」さんならではの斬新な月餅でした。
購入したのは、白餡や練乳、ピスタチオ、ホワイトチョコなどを使用した「ピスタチオ月餅」。りんごとクリームチーズ、ブドウ入りの「りんご月餅」。あんずとクリームチーズ、砂糖や醤油、小麦粉を使用した「あんず月餅」でした。
審査委員一同、ひと目見て独自性が高いと注目しました。求肥(きゅうひ)のような食感も独自性がさらに高めました。審査員たちは、このうち「ピスタチオ月餅」を一推しとしました。
(中村)
Instagram https://www.instagram.com/kanro_nishiwaseda/
ご当地賞
永祥生煎館

審査員のコメント
毎日行列が絶えない人気店で、私が日本で“ガチ中華”と出会った原点ともいえるお店が「永祥生煎館」です。上海出身の友人に「本場B級グルメのおすすめ」と連れられて池袋を訪れ、以来通い詰めました。
今回はECサイトで購入した「鮮肉月餅」を試食。一般的な月餅と異なり、パイ生地の中に豚肉がぎっしり詰まっています。冷蔵で届くため、フライパンやオーブントースターで温めると、サクサク生地と肉汁あふれる餡が絶妙にマッチし、本場の味がよみがえります。
上海のご当地月餅として「鮮肉月餅」を選びました。今後もこうしたご当地月餅の魅力を日本に広めていきたいと思います。
お店は池袋北口すぐの場所にあり、通販や楽天でも購入可能です👇
(多賀井)
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審査を終えて
一口に月餅といっても本当にいろいろありますね。
1927年(昭和2年)に新宿中村屋さんが「和菓子」として売り出し、日本に広まった月餅はいま、さまざまなバリエーションに生まれ変わり市場に出回っていることをあらためて知りました。
でも、それは本家の中国でも同じで、月餅の洋菓子化など、もともとの姿とは違う大きな変貌が起きていることを教えてくれたのは、今回審査員を務め、先月現地を訪ねたTDCのふたりのライターでした。
今回の企画ははっきり言って、見切り発車だったかもしれません。というのも、審査員一同、こんなに多種多様な月餅が日本にあることに驚くばかりでしたから。審査中、TDCの考える「独自性」とは何だろう? という意見が出てきて、われわれが選ぶ以上、「本場に近い本格的な中華菓子(ガチ中華)であること」を高く評価する方針で臨むことにしました。
これは最初の一歩にすぎません。ただし、今回思ったのは、昨今ガチ中華のオーナーたちがスイーツ分野をどんどん開拓していて、これまでわれわれが体験することのなかった新しい月餅を送り出してくれていることです。
それが今回の審査の結果につながっているのは確かです。もしよろしければ、これからもみなさまと新しい月餅の世界を訪ね歩いてみたいと思います。
(東京ディープチャイナ研究会)
店舗情報
Cc点心

品川区南大井2-11-4 3A 102
老酒舗(味坊集団)

台東区上野5-10-12
中華面食

江戸川区松島3-14-3
華菓日和

葛飾区亀有3-21-7
新宿中村屋

新宿区新宿3-26-13
虫二

新宿区高田馬場2-24-5
永祥生煎館

豊島区西池袋1-29-2
サンシティホテル西側1F
審査員のコメント
今回おすすめする Cc点心の月餅 は、昨年試食でほんの一口食べただけで、すっかり好きになった逸品です。
まず味についてですが、餡(あん)は程よい甘さで、塩漬け卵黄の塩気とのバランスが絶妙で、とても食べやすいです。卵黄特有の臭みもなく、しっかりと下処理されていることが分かります。さらに、皮もしっとりとしていて、上質な仕上がりです。
もう一つの魅力は、月餅に一つひとつ縁起の良い四字熟語が刻まれている点です。たとえば、「花好月圓(花が美しく咲き、月が満ちている)」は、幸福な家庭や円満な人間関係を象徴します。「吉祥如意(吉兆に満ち、願いがかなう)」は、相手の幸運と成功を祈る言葉として用いられます。見た目にも楽しめる月餅です。
オーナーの西貝さんは、無添加・手作りにこだわっており、なんとドレッシングまでも一から手作りされています。店舗のオープンからまだ1年ほどしか経っていませんが、週末には時々商品が完売して、早めに閉店するほどの人気店となっています。
味とは直接関係ありませんが、店内で使われている食器は、ほとんどが「ル・クルーゼ」という高品質ブランドで、細部にまでこだわりが感じられます。
Cc点心さんの「蓮蓉蛋黄月餅」(ハスの実をペースト状にした「蓮蓉」を餡に使用した月餅)や、「五仁月餅」(5種類以上のナッツや種子を餡に使った月餅)も非常に人気があるようです。
特に「五仁月餅」は、毎回すぐに完売してしまうほどの人気ぶりで、今回は審査に間に合わず、とても残念でした。
(和田)