中国で大晦日にごちそう(年夜飯)を食べることはまだあまり知られていません。私は去年、中国語の先生からこの文化を知り、興味を持ちました。今年、ガチ中華店の草分け的存在、味坊集団(以下味坊)が年夜飯を食べる会を企画していたので参加してきました!1人で実現は難しくても、これなら体験できますね♪
食事会の日も旧暦にぴったり合わせて1月16日。週の初めの月曜日……一瞬だけ躊躇しましたが、行くとなったら楽しんじゃいますよ~~!
会場は、去年東京駅近くにできた「味坊之家」。お店の紹介はこちらもどうぞ。
私はこの店に行くのも初めてだったので、それも楽しみにしていました。
通路側の壁はガラスも多く、すごくオープンな感じがします。
席には食器とお品書きが準備されていて、読みながらわくわくします。

それにこのテーブルの朱色よりちょっと茶色がかっている感じが、椅子の赤と少し差別化されていて、落ち着きもあって素敵な色だと思いました。オーナーの梁(はり)さんは中国で美術を専攻しており、お店の装飾も自ら手掛けていることもあって、やはりセンスあるなぁと思います。
会場を「味坊之家」にしたのは「春節はみんな実家に帰るから『おかえり』という意味で「味坊之『家』」を選んだ」と、乾杯の時に梁さんから話がありました。
年夜飯のキーワードは「縁起」「団らん」「豊かさ」。これらを願う料理が振舞われます。
今日は各地域の料理を準備してくださっているようで、各料理名の先頭に地域も載っていました。地域区分の地図を載せたので、それも見ながらイメージしてみてくださいね。
では料理を紹介します♪
- 1 大江南北卤味拼盘 (中国全土の卤味の盛り合わせ)
- 2 南京盐水鸡 (南京 塩水鶏冷製)
- 3 东北大拉皮 (東北 板春雨サラダ)
- 4 东北老虎菜 (東北 パクチー青唐辛子和え)
- 5 新疆烤羊肉串 (新疆 ラム串焼き)
- 6 西北蒜香排骨 (西北 ガーリックスペアリブ)
- 7 白菜猪肉饺子 (東北 白菜と豚肉水餃子)
- 8 东北酸菜羊肉 (東北 発酵白菜と羊肉煮込み)
- 9 内蒙古手把羊肉 (内モンゴル 骨付き茹で羊肉)
- 10 湖南毛氏红烧肉 (湖南 毛氏豚角煮)
- 11 豆花魚(日本語名なし)
- 12 味坊农园白灼青菜 (味坊農園青菜湯引き)
- 13 香港糖味煲仔饭 (香港 腊味煲仔飯)
- 14 天津三鲜饺子 (天津 三鮮水餃子)
- 15 北京糯米切糕 (北京 糯米切糕)
- 16 店舗情報
大江南北卤味拼盘 (中国全土の卤味の盛り合わせ)

「大江南北」は中国全土という意味。卤味(ルーウェイ)とは醤油に八角やシナモンを入れて肉などを煮込んだもので、中国・台湾ではおつまみや前菜でよく出ます。厚切りの豚タンは八角が香り、脂身がなくとてもしまっています。対して牛筋は一部に脂身もあり食感の違いを楽しめます。ソーセージはピリ辛です。中国のソーセージは北の方が塩味があり、南方になるにつれて甘くなります。
南京盐水鸡 (南京 塩水鶏冷製)

醤油に変わり、今度は塩味の前菜です。これも八角のほのかな香りがします。
脂身は油っこくなくて食べやすいので、食べていて罪悪感がありません(笑)
中華圏では縁起の良い言葉と同音意義の食べ物は祝いの席でよく出てきます。中国語で「鶏」は「吉」と同じ発音で縁起がいいため、年夜飯の必須料理です。
东北大拉皮 (東北 板春雨サラダ)

味坊の得意とする料理の一つです。太い板春雨にラー油、甘い味付けの細切り肉、きゅうり、パクチーが載っています。春雨も手作りです。弾力がありモチモチした春雨と複数の具を絡めて色々な食感を一度に楽しみます。この甘辛さが食欲を増進させます。
东北老虎菜 (東北 パクチー青唐辛子和え)

青野菜がいっぱい。これも東北料理です。梁さんは東北の黒竜江省出身なので、味坊の店にも東北料理がいっぱいあります。味坊には自社農園があり、青野菜は自社農園から直送、とにかく新鮮です。去年は畑を拡大し、4万平米になったそうで、それは東京ドーム9割弱の面積です(驚!)
白髪ねぎ、ふんだんにかかったパクチー、きゅうりにまぎれた青唐辛子。うっかり大口で食べるとつんとくる大人の辛さですが、このシャキシャキとパクチー好きにはたまらない一品です。
新疆烤羊肉串 (新疆 ラム串焼き)

でました! 味坊と言ったら羊肉。中でも羊串はド定番。味坊の羊は料理によって産地を使い分けていて、これはオーストラリア産。中国東北でも食べますが、新疆ウィグル自治区でも色々な料理に使われます。特製スパイス付きでいただきます。クミンと唐辛子ベースのこのスパイスはいつ食べてもおいしいです。
中国語で羊は吉祥の祥と同じ発音なので、これもめでたい席に良くでるそうです。
西北蒜香排骨 (西北 ガーリックスペアリブ)

どんどん肉が出てきます!ニンニク味の衣がとにかくおいしい!
肉は豚スペアリブです。日本だと骨付きは食べるのが面倒くさいという人が多いですが、中国では骨付きが人気で、スペアリブや鶏の爪(もみじ)の部位を好んで食べます。梁さん曰く、「中国人はとにかくしゃぶりたいんだ(笑)」と。
白菜猪肉饺子 (東北 白菜と豚肉水餃子)

水餃子は梁さんの年夜飯の思い出の料理の一つだそう。形が「元宝(昔のお金)」に似ているので「財を招く」という意味があり、粉ものを食べる北方の年夜飯には欠かせないものです。しかも白菜は「百財(たくさんの財)」と音が近いので、これは更に財を招くことになります。
ふと周りをみると、大賑わいです。今夜は約80人の参加者がいます!

そこに林社長が白酒を持って回って来てくださいました。
とても明るい方で、今日の宴を積極的に盛り上げてくれています!みんなにスムーズに配れるように、後ろのぽっけ2か所にもおかわりの白酒瓶を入れていました(笑)


梁さんから大晦日の過ごし方を聞きました。中国にいた頃は大晦日に10数人~20人くらいで集まっていたそうです。食事の準備の他、地域によって違いはありますが、代表的なのは「春联(チュンリァン)」という縁起の良い字を赤い紙に書いて壁にひし形状に貼ります。

また、爆竹を鳴らしたり、日本ではお年玉を年明けに渡しますが、中国ではそれにあたる「紅包(ホンバオ)」を大晦日にも渡したりするそうです。
さて、続けて料理を食べましょう。お腹もいっぱいになってきました(笑)
东北酸菜羊肉 (東北 発酵白菜と羊肉煮込み)

この日の中で私のお気に入りの一つでした。今年は白菜の育ちが良いと梁さん。東北では寒い冬を越すため、保存食として発酵白菜を作るといいます。羊肉(オーストラリア産)が薄切りでも濃い味で酸味のある白菜とよく合い、箸休め的な優しい味です。太目の丸い春雨も入っていて、のど越しもよいです。
内蒙古手把羊肉 (内モンゴル 骨付き茹で羊肉)

今度の羊は茹でたものです。これを3種類の好きなタレにつけます。写真奥から、ゴマ、韮の花、ニンニク。中でも韮の花をすりつぶしたものが定番なんだそう。これはちょっと渋い味もあり、大人な味です。ニンニクは刻んだ後に熱い油をかけて火を通しているので、自然な甘味を感じられるようになっているそうです。ニンニクもよく合います!
湖南毛氏红烧肉 (湖南 毛氏豚角煮)

毛氏というのは、毛沢東のこと。湖南省生まれで、この料理が大好きだったと言われています。今回はこの角煮をなんと大きな酒壺に穴をあけて煮込んで調理してくれていました!


肉を40分下茹で後にカットして2時間煮込んだもので、年夜飯によく出てくると梁さんから聞きました。更に調べると「红烧」の赤が喜び・福を表し、脂の艶が富と豊かさを表すとのことです。肉はホロホロ、ニンニクはこっくりとした食感で甘味があります。ほんのりかわる辛味が味にメリハリをつけます。
豆花魚(日本語名なし)

ここで初めて魚が出てきました。豆腐も入っています。「余」と「魚」が同音意義のため「年々有余(毎年生活に余裕がありますように)」と願いを込めて1匹の魚を丸ごと出す、一番重要な料理であるといっても過言ではありません。あえて食べ残して新年に豊かさを持ち越すという伝統文化もあります。
今回はテーブル数が多いのと、取り分けやすいように味坊流にこのように考えたと梁さん。豆花と聞くと台湾の豆腐入りデザートを思い浮かべますが、中国では朝食やおかずとして、味もピリ辛等様々です。麻辣味もあるとは。そろそろ辛いものを欲していたのと、食べ慣れた味で安心感がありました。
味坊农园白灼青菜 (味坊農園青菜湯引き)

青菜は中国で「清清白白(清らかで誠実)」を象徴するものだといいます。
小松菜はあえて少し苦味を残している感じがして、少し甘めの味付けと調和します。
香港糖味煲仔饭 (香港 腊味煲仔飯)

そろそろ終盤です。今日初めて香港からの代表料理「煲仔饭(ボウジャイファン)」です。具材と甘いタレを混ぜた炊き込みご飯です。
今回はお皿に盛り付けですが、伝統的には土鍋で出てきます。南方なのでソーセージは前菜の時と違って甘いです。まさか2種類のソーセージが食べられるとは! ベーコンは燻製の香りと油がのってできたてのような味わいです。米は茨城のコシヒカリだそうです。程よくパラパラした小さくて丸い一粒一粒の米がずっしり重く、たれが染み込んでいるのがよくわかります。
天津三鲜饺子 (天津 三鮮水餃子)
「三鮮」とは「ニラ・卵・海老」。肉が入っていないので、その分軽く、味もあっさりしていています。皮も前半の餃子より色が薄くて、厚みも少し薄い感じがします。
北京糯米切糕 (北京 糯米切糕)

最後はデザートの北京限定もち米ケーキです。北京と書いてあるだけに、やはり全国で食べられているものではないそう。実は、林社長が切る前のケーキをみんなに見せてくれました。

もち米の間に粒あんが挟まれ、粒あんの中になつめ、上にはなつめが苺のようにのっている、和中の材料のショートケーキみたいです。もち米はもっちりぷるんとして柔らかく、やや弾力があります。あんことなつめが甘さ控えめで、そこに柑橘がひとかけのっており、その酸味がいいアクセントでした。
今回の食事会はいつにもましてボリュームと食べ応えがありました。現地のボリュームもこんな感じなんだろうなと思います。しかも中国各地の料理を食べられて、食べながら中国一周している気分になれました!
もう一つ思ったのは料理の順番です。何品かごとに辛めの料理が出たり、みんなお腹いっぱいの頃にはライトな三鮮水餃子が出てきたり、ちゃんと”この時間に食べたいもの・食べやすいもの”が用意されているんですよね。
大晦日は食事だけではなく、「家族が集まること」そのものを大事にすると梁さん。食事をした後も夜遅くまで団らんしたり、テレビで春節の特番を観たりするそうです。
この日も夜9時までの予定が、いつの間にか10時になっていました。
今日「味坊の『家』」に帰ってきたように大勢で家族のように集まり、リラックスして前向きな気持ちになれる料理を余るくらい食べられて、正しく「縁起」「団らん」「豊かさ」のつまった時間でした。体験できてとても楽しく、嬉しかったです!私達のために時間をかけて工夫して”味坊流”の「おかえりスタイル」でもてなしてくれた梁さん達、本当にありがとうございます!

もらったお土産を開封しました。

春節の時に飾るものです。漢字は「招」「財」「進」「寶」の4つの字を組み合わせてできたデザインです。「招財進寶」という「財を招き、宝を進める(多くの富がやってくる)」という中国でとても縁起のいい四字熟語です。また、馬は「馬のように早く物事が成功する」という意味があります。早速家の壁にかけました。
みなさんのこの1年がよい年になりますように。马到成功,平平安安(物事がうまくいき、平穏に過ごせますように)!
(aokinapple)
店舗情報
味坊之家

千代田区丸の内1-4-1
丸の内永楽ビルディング iiyo!!(イーヨ!!) B1F
03-6256-0422
Writer
記事を書いてくれた人






