みなさん、こんにちは。日本人夫「川」と中国人妻「雲」の食いしん坊夫婦です。
日本人の中国旅行にはまだビザが必要で、以前のようにノービザで気軽に行ける状態ではないものの、ビザを取得さえすれば行けるようになったので、北京に行って来ました。
北京には中国国内各地方の省政府が設置している事務所「駐北京弁事処」、略称「駐京弁(zhùJīngbàn,ちゅうきょうべん)」があります。
市政府なども独自に駐京弁を設置している場合もあります。多くの駐京弁が地元出身者の北京滞在の便宜を図るため、ホテルやレストラン(以下、「餐庁」)を併設しています。これらの餐庁は「駐京弁餐庁」と呼ばれ、地元の料理を提供しており、対外開放していて、北京にいながら各地の料理を楽しむことが出来ます。
例えば、福建は福建省政府と福州、莆田、厦門、漳州の各市政府がそれぞれ駐京弁餐庁を運営しています。
1つの駐京弁が複数の餐庁を運営している場合もあります。例えば、四川省駐京弁は4つの餐庁を、内モンゴル自治区のフホホト市駐京弁は3つの餐庁を運営しています。
グレードは様々で気軽に入れるところから、高級店まであります。例えば、広東省駐京弁は餐庁を2つ運営、1つは高級料理、1つは庶民向けとなっています。
変わったところでは茅台酒を製造している貴州省の茅台集団が企業として駐京弁を設置し、茅台酒の広告塔的な役割の餐庁を運営し、茅台酒と(激辛の貴州料理ではなく)広東料理を提供しています。
2023年2月現在、99の駐京弁が119の餐庁を運営、本稿末にリストを載せます。店名は、地名やその土地の名所・名物など、中国人がその地方をイメージしやすいネーミングをしているものが多いです。
北京には駐京弁餐庁以外にも各地の料理店が沢山ありますが、玉石混交です。それに対し、駐京弁餐庁は、地元の政府が運営し、地元の料理人が地元から運んだ食材を多く使うので、正統派というイメージがあり人気があります。
また、上海の「駐滬弁」、広州の「駐広州弁」など、北京以外でも「駐◯◯弁餐庁」がある大都市はありますが、数の上では北京には遠く及びません。駐京弁餐庁は首都だからこそのアドバンテージです。
さて、10月に北京に行った際に、福建省漳州市の「一品薌情」、新疆ウイグル自治区の「汗騰格里」、四川省の「天賦食舫」と3つの駐京弁の餐庁で食事をしたのでご紹介します。
北京から遠く離れた福建省、新疆ウイグル自治区、四川省の料理を堪能しました。
福建省漳州市駐京弁餐庁「一品薌情」
閩南料理は福建省南部の厦門、泉州、漳州一帯の料理で、薄い味付けで新鮮な海鮮をよく使います。漳州西部には客家系も住んでいて山の幸も豊富です。川は以前厦門に住んでいた事があり、大好きな料理の一つです。
一品薌情は北京漳州賓館内にあり、1階は普通のテーブル席、2階は個室になっていて、今回は2階の個室を予約しました。エレベータを上がると、漳州の特産品が展示してあります。
この店は「融合閩南料理」を謳っていて、メニューを開くと、最初に漳州市南靖県の世界遺産、客家土楼「田螺坑」を背景写真に、閩南料理の説明があり、その次のページから閩南料理をメインに福建省各地の料理が並んでいます。
この日、雲の友人たちと訪問、川が厦門時代によく食べていた料理を注文しました。
土筍凍
土筍と呼ばれるサメハダホシムシを煮凝りにしたもの、閩南を代表する小吃で前菜としても食べられます。グロテスクですが、貝のような食感で、タレにつけると、ほのかな甘みが引き立ちます。
木姜油絲瓜尖
ヘチマの若葉のヤマソウシ油炒め、 クセがなく、ヤマソウシ油の清涼感が加わります。
醤油水雑魚
小魚を大根の漬物と一緒に醤油で煮たもの、厦門を代表する味です。
同安封肉
豚肉を香辛料と一緒に布で包んでタレで煮込んだもの、厦門市同安区の名物で、祝い事には欠かせません。封肉は台湾の滷肉飯(魯肉飯とも、ルーロウファン)に乗せる肉の元になった料理と言われています。
干煎河田鶏
福建省西部の長汀市河田鎮の地鶏「河田鶏」のグリルです。平飼いの地鶏の濃厚な味がたまりません。
茶油猪肚燜豆腐
豚ガツと豆腐のカメリア油入り煮込み
清炒地瓜葉
サツマイモの葉のラード炒め
水果
フルーツ
新疆ウイグル自治区駐京弁餐庁「汗騰格里」
新疆料理は少数民族ウイグル人の清真料理(ムスリム料理)がメインで羊肉や羊肉、肉料理に欠かせないスパイスのクミンを多用します。1980年代以降漢族が新疆に移民して、現地化した新疆中華とも言える料理もあります。
さて、北京市甘家口に新疆ウイグル自治区駐京弁があったことから、1980年代から周囲にウイグル人が集まりウイグル街を形成、新疆料理店が並んで非常に活気がありました。川は留学中、エスニックな味を求めてよく行っていました。2000年代前半には再開発でウイグル街は無くなってしまいましたが、駐京弁は健在です。
駐京弁が入っている新疆大厦ビルのある道の入り口には、牌楼的にゲートが立っており、通り抜けるとすぐ「汗騰格里」が見えてきます。餐庁には一度、新疆大厦ビルの中に入って内側の入り口から入ります。平日の昼時に行ったところ、満席で大変賑わっていました。
メニューは一枚ものの簡単な作りで、何枚か料理の写真は載っていますが基本的に料理名だけです。この日は友人たちが集まってくれ、総勢6人、それぞれ好きなものを1-2品注文しました。
磚茶
新疆のお茶は,古来シルクロードを運搬しやすいようにレンガ状に固めた茶葉を使っており、今でも磚茶が飲まれています。飲む分の茶葉を「茶刀」という専用ナイフで崩して使います。
新疆老虎菜
新疆風サラダ
椒麻鶏
鶏肉の山椒ソース和え
凉皮
小麦の澱粉から作った麺
新疆大盤肚
大皿の牛モツ。大皿料理も新疆の名物となっています。
酸菜粉条炒羊肉
東北地方の白菜の漬物「酸菜」、春雨、羊肉の炒め物
紅柳肉串
新疆に多く生えている紅柳(タマリクス)の枝を串にして、塩、クミン、唐辛子で焼いた羊肉、新疆料理の定番中の定番です。
豪情手抓肉
スープで茹でたラムチョップを豪快に手づかみで食べます。
烤包子
羊肉を小麦粉の生地で包み焼いたものです。スパイスが香ります。
自製酸奶
自家製ヨーグルト
四川省駐京弁餐庁「天府食舫」
川が初めて駐京弁の餐庁に行ったのは、1990年代の留学中、四川出身の同級生に連れて行ってもらった建国門の四川省駐京弁餐庁でした。この餐庁は元々対外解放していなかったのですが、1995年に対外開放され、料理人は四川出身者、食材も四川から運んでいるということで、在北京四川人の間で話題になっていたところです。
当時北京の巷間では、四川の青菜の漬物「酸菜(中国東北地方の白菜の酸菜とは違うもの)」は流通しておらず、そこで初めて川魚を四川から運ばれた酸菜と煮込んだ「酸菜魚」を食べて、この料理が好きになりました。
その後、新しい四川省駐京弁が設置され、元からあった四川省駐京弁は「老川弁」と呼ばれるようになりました。新しい四川省駐京弁は「新川弁」と呼ばれ、それぞれの餐庁は老川弁餐庁、新川弁餐庁と呼ばれています。
今回、友人家族と、新川弁餐庁「天府食舫」で食事をしました。料理は友人のチョイスです。四川料理は辛いイメージですが、実は辛くない料理の方が多いです。
成都跳水鵞腸
ガチョウの腸の前菜
馬蹄茅根水
クワイの根のお浸し
夫妻肺片
定番の前菜、牛モツの唐辛子ソース和え
椒麻鶏縦菌
鶏縦菌(けいそうきん)というキノコの和え物
宮保鶏丁
定番、鶏とピーナッツの炒め物
臨江鱔絲
タウナギの唐辛子煮込み
野山菌当帰烏鶏
烏骨鶏と当帰(漢方食材)のスープ
酸菜烏魚
ライギョの四川酸菜煮込み
三椒脆肚
豚ガツと唐辛子3種(朝天椒、灯篭椒、泡椒)の炒め物
水煮牛肉
自貢発祥の牛肉の唐辛子煮込み
小米撈豆尖
エンドウマメの若葉と粟の煮込み
宜賓燃麵
宜賓の名物、油分が多く火をつけると燃えるので「燃麺」
紅油炒手
唐辛子スープのワンタン
水果
フルーツ
この餐庁には四川省商務庁編の四川料理図鑑『天府名菜』が置かれています。特別推薦菜と四川省内の21の市及び州ごとにまとめられていて、115の料理が掲載され、各料理のページには、その料理の説明、材料、作り方が載っており、英語が併記されています。
しかも、裏表紙のQRコードをスキャンすればウエブで閲覧できる優れものです。さらに、ウエブ上ではなんと、中国語だけですがそれぞれの料理についての動画もついていて、写真上の再生ボタンを押すと再生されます。四川料理は中国四大料理の一つであることは誰もが知るところ、その四川料理をさらに広めようとする四川省政府の本気を見た気がしました。
天府名菜 https://flbook.com.cn/c/Fk6wNVndJ7
今回訪問したのは3ヶ所だけですが、駐京弁餐庁ごとに、それぞれ違う個性があり、地方の味を楽しむことができます。みなさんも北京に行く事があれば、駐京弁餐庁で中国各地の料理を味わってみてはいかがでしょうか。
駐京弁リスト
※『RED 北京探店小螃蟹」より。住所、電話番号、営業時間などの詳細は下記をコピペして検索してください(簡体字を使用しています)。閉店している場合もありますので、もし行かれる場合はご確認ください。
东北地区(黑吉辽)
- 黑龙江 龙港酒楼
- 哈尔滨 京滨饭店
- 八一农垦 北大荒餐厅
- 吉林省 雪松宾馆吉人缘
- 吉林市 北国江城餐厅
- 辽宁省 辽宁饭店辽食府
- 辽宁省 辽宁大厦盛京阁
- 锦州市 锦州饭店
华北地区(京津冀蒙晋)
- 唐山市 唐山大厦餐厅
- 内蒙古 内蒙古大厦餐厅
- 呼和浩特 金缘源火锅
- 呼和浩特 元大都奶茶餐吧
- 呼和浩特 蒙古宾馆中餐厅
- 鄂尔多斯 蒙元宾馆蒙元涮肉
- 鄂尔多斯 鄂尔多斯艾力酒店餐厅
- 巴彦淖尔 天赋河套餐厅
- 山西省 晋府大酒店
- 山西省 三晋宾馆晋盛食府
- 运城 黄河京都大酒店
- 大同市 云华阁
西北地区(青陕甘宁新)
- 青海省 青海大厦兰香苑
- 陕西省 长安白云大酒店
- 陕西省 山西大厦风味餐厅
- 西安市 汉唐春秋西安小吃食府
- 铜川市 玉华宫宾馆餐厅
- 甘肃省 飞天大厦飞天食府
- 兰州 兰州宾馆餐厅
- 白银市 银峰兰州拉面
- 敦煌 敦煌大厦敦煌食府
- 宁夏 百草滩羊
- 银川市 银都餐厅
- 新疆 汗腾格里
- 新疆 西域驿品
- 乌鲁木齐 新疆饭庄
- 石河子 准格尔餐厅
- 巴音郭楞蒙古自治州 巴州金丝餐厅
- 克拉玛依 克拉玛依雪莲餐厅
- 克拉玛依 克拉美丽酒店餐厅
- 生产建设兵团 新疆兵团食府
- 新疆喀什 新疆喀什餐厅
- 塔城 塞兰坤新疆美食
- 塔里木 塔里木石油酒店餐厅
西南地区(云贵川渝藏)
- 云南省 云腾宾馆云腾食府
- 云南省 彩云天云南餐厅
- 昆明 昆明大厦餐厅
- 昆明 昆明大厦一品滇餐厅
- 大理 蝴蝶泉宾馆中餐厅
- 贵州省 贵州大厦贵州厅
- 贵阳 甲秀楼缘餐厅
- 遵义 醉美遵义
- 铜仁 南长城食府
- 毕节 大黔门食府
- 黔西南州 布依人家酸汤鱼
- 茅台集团 茅台大厦香者餐厅
- 四川省 四川大厦天赋食舫
- 四川省 贡院蜀楼川办餐
- 四川省 新川办餐厅
- 四川省 天府龙爪
- 成都 蜀都宾馆
- 宜宾 北京宜宾招待所
- 绵阳 蜀阳酒店
- 绵阳 富乐山酒店餐厅
- 攀枝花 攀西土菜馆
- 攀枝花 蜀竹情酒楼
- 凉山州 阿斯牛牛·四川凉山菜
- 重庆 北京重庆饭店
- 西藏 珠穆朗玛餐厅
华南地区(粤贵琼台)
- 广东 广东大厦云山茶餐厅
- 广东 山泉粤宴
- 广州市 广州食府
- 珠海 幸福城
- 广西自治区 广西大厦那兰酒楼
- 广西自治区 那兰酒楼
- 南宁市 南宁大厦南宁食府·那兰酒楼
- 广西来宾 来宾广西餐厅
- 海南 海南大厦海南食府
华中地区(豫湘鄂)
- 河南省 河南大厦豫香苑餐厅
- 郑州市 商都酒店
- 信阳市 信阳味道
- 南阳市 南阳食府
- 湖南省 湖南大厦首湘缘餐厅
- 湖南省 湘都湘味
- 长沙市 静海轩湘餐厅
- 永州市 潇湘·永州会馆
- 益阳市 湖南益阳驻京联络处餐厅
- 岳阳市 洞庭君乡
- 娄底市 湘中缘·湖南菜
- 湖北省 湖北大厦湖北味道
- 武汉市 武汉大厦九头鸟食府
- 襄阳市 隆中宾馆餐厅
华东地区(鲁苏浙沪皖赣闽)
- 山东省 齐鲁苑餐厅
- 潍坊市 潍坊菜馆
- 烟台市 百纳烟台商务酒店餐厅
- 济宁市 孔府酒店
- 章丘 海泰食府
- 江苏省 江苏大厦苏畅园
- 江苏省 江苏饭店苏畅园
- 南京市 南京大饭店南京精菜馆
- 扬州 冶春
- 常州市 常州宾馆餐厅
- 徐州市 汉堂苏北菜
- 淮安 淮扬菜品鉴堂
- 溧阳 天目湖之家
- 张家港 江南春
- 浙江省 浙江大厦浙江食府
- 宁波市 宁波宾馆·中餐厅
- 安徽省 安徽大厦餐厅
- 合肥 同庆楼
- 黄山 徽商故里
- 安徽淮南 寿州大饭店·江淮人家
- 江西省 赣人之家
- 江西省 江西大厦合味原江西宴
- 南昌市 南昌饭店
- 抚州市 大厨匠
- 福建省 福建大厦八闽食府
- 福州市 福州宾馆
- 厦门市 厦门大厦颐园餐厅
- 漳州 一品芗情
- 莆田 兰水心桥·经典莆田菜
(川雲)