進化を続ける上海名物の焼き小籠包のローカルチェーン「小楊生煎」

2025年は、帰国時に日本のローカルチェーンの話題をよく耳にした一年でした。

私は出身が埼玉県なのですが、福岡の「資さんうどん」が県内に進出していて大行列ができていたり、群馬在住の友人に「前橋に『日高屋』がオープンしてたよ」という話を聞いたり、その流れで「『日高屋』って埼玉のローカルチェーンだったのか」と初めて知ったり。

というわけで今回は、日本のローカルチェーンブームに乗って上海生まれの「本土連鎖(ローカルチェーン)」の代表格「小楊生煎」を紹介したいと思います。

小楊生煎
メニューも味も進化中

「小楊生煎」は中国の各主要都市に約300店舗を構える生煎(焼き小籠包)チェーン。1994年、屋台街だった上海市内の呉江路で創業しています。当時を懐かしむ読者の方も多いと思いますが、「小楊生煎」の魅力は、懐かしんでいる間を与えないほど数年ごとに変化していること。

なのに、「変わっちゃったのか。じゃ、もう行かない」とはならないのがこのお店のすごいところだと思います。というか、「前の方がおいしかった」という感想をあまり聞いたことがなく、常にアップグレードしている感じ。

過去に執着せず、潔く切り捨てて進化する経営戦略(?)は、なんだかカッコよく見えてしまうほどです。

2000年代初めくらいまで呉江路にて、この感じの店舗で営業していた
2000年代初めくらいまで呉江路にて、この感じの店舗で営業していた

今回ご紹介するのは旗艦店になっている黄河路店。

実は呉江路にはもう店舗がありません。移転後のあのビルの中の店舗も引き払っています。潔い。

2025年末現在の最新のメニューはこんな感じ。

生煎は調理場窓口まで自分で取りに行き、それ以外は番号札をテーブルに置いて待つシステム
生煎は調理場窓口まで自分で取りに行き、それ以外は番号札をテーブルに置いて待つシステム

上海にやってくる中国の他都市からの観光客向けに、小籠包、排骨年糕(揚げた骨付き豚と餅を甘辛のタレに絡めたもの)、葱油拌麺などの上海名物をひととおり揃えています。

そして、「牛肉湯」から「咖喱」の文字がなくなっています。創業当時から定番だったあのスープ、今はカレー味ではないのです。

「小楊生煎」調理場
調理場がオープンなのは変わっていません

それでは、最近の定番とお勧めを紹介していきたいと思います。

まずは看板メニューの「小楊生煎」(13元/4個)。

もちろん昔とは変わっていて、皮がかなり薄くなり餡もジューシーになった気がします。これに関しては、「昔の方がおいしかった」という人がいたら、「本当に最近食べました?上海で?」と問い詰めてしまう気がします。

それと、このお皿。最初は長らくホーローで、その後黄色のプラスチック、黒のプラスチック、ピンク系と次々に変化し、最新がこのバージョン。なので仕事柄、他社のガイドブックや旅行サイトなどを見ているときに「新規取材してないな」などと余計なことを考えてしまったりもします。

薄皮の中に肉汁たっぷり。底は焦げ目が美味
薄皮の中に肉汁たっぷり。底は焦げ目が美味

3〜4年前に登場して以来定番メニューになりつつあるのが「藤椒大蝦生煎(藤椒とエビ入り)」と「蟹粉生煎(上海蟹の蟹味噌入り)」。写真は、これが2個ずつセットになった「蟹粉藤椒大蝦双拼」(26.5元)です。

蟹味噌は黒酢をたっぷりつけて、藤椒大蝦は「麻」の風味(辛くはない)の香ばしさを味わうために何もつけずに、がお勧めです。

「小楊生煎」白ゴマ入りの方が蟹味噌。完璧な組み合わせの一皿
白ゴマ入りの方が蟹味噌。完璧な組み合わせの一皿

カレー風味ではなくなった「牛肉湯」(12元)は、蘭州ラーメンの牛骨スープの味。

薄いカレー味のあのスープ、以前は定番だからと何も考えずに頼んでいました。創業時の呉江路の店舗で、発泡スチロールの器に入ったカレースープを持って、こぼしそうになりながら木の階段を上がった思い出もありますが、正直、あれはおいしかったのだろうか、と思います。

今のスープの方が好みです……。

「牛肉湯」
薄切りの牛肉と春雨入り

そして個人的にいちばん好きなのが「招牌老鴨粉絲湯(アヒルだし春雨スープ)」(18元)。

これが新たにメニューに加わっているのを知ったときは歓喜しました。私は中国の全小吃の中で老鴨粉絲湯が多分いちばん好きなのですが、個人で老鴨粉絲湯を出す店が減り、南京(金陵老鴨粉絲湯が名物)まで通うしかないと思っていたところでした。

砂肝、レバー、香菜もたっぷり。生煎を頼まずこれだけで済ますときもあります。

「牛肉湯」器の小鍋もかわいい
器の小鍋もかわいい。お土産として販売したら売れると思う

今回改めて訪れたこの日の黄河路店には、若い日本人女性の旅行者もちらほらいました。

多分初めての上海旅行で、カレーのスープを知らない世代。帰国して、昔上海に来たことがある親世代に「焼き小籠包? あまりおいしいと思わなかったけど」とか言われても気を落とさないでほしいです。今の方がおいしいので。

話はそれますが、黄河路といえば最近の名物は「国際飯店」のベーカリーの大行列。看板商品「蝴蝶酥(蝶々パイ)」が急に全国区で有名になり、連日数100メートルの行列ができています。
そのベーカリーのまわりに充満したバターの香りに包まれるのがこのエリアの楽しみ。昔の、あのバターの感じではなく、高級感のあるバターの香りです。

ただこの「蝴蝶酥」、個人的には一枚が大きすぎて食べきれず、個包装ではなく、スーツケースやカバンの中で割れるので、お土産には向かないなと思っています。

「小楊生煎」のほかにも、上海には「振鼎鶏」「吉祥饂飩」「新亜大包」などの老舗ローカルチェーンがあります。ずっと上海にいるとあまりに普通で、日常で意識することはほとんどないのですが(埼玉県民における「日高屋」に相当)、それぞれメニューやロゴを変えながら進化しているよう。機会があれば、またローカルチェーンについて書いてみたいと思います。

(萩原晶子)

店舗情報

小楊生煎(黄河路旗艦店)

小楊生煎(黄河路旗艦店)

上海市黄浦区黄河路97号
6:30-22:30

Writer
記事を書いてくれた人

萩原晶子

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