先週、巷で噂の池袋西口に連なる中華料理の数々を堪能しようと、僕は街に降り立った。
時は昼下がり。待ち合わせ場所は、とある雑居ビルの2階。そこにはなぜか本屋があり、その隣に中華料理の屋台が広がっているのだ。「食府書苑」というフードコートらしい。
最初に僕の目を引いたのはこの看板! ドラフトビールじゃないですか……。まだ僕が飲んだことのないチャイナドラフトビール→まさに大人の自由空間。

おわかりいただけますでしょうか?
ところが、本に囲まれたこのインテリジェントな空間で、早速ドラフトビール注文しようと思ったら、これは看板のみで、チャイナドラフトビールは無いとのこと。な・ん・て・こ・と・だ……。
結論から先に言うと、”ディープチャイナ”は僕の中にいつもあった。
ここで幼少期の記憶が蘇る。1990年代のウラジオストクのキタイスキー市場(中国市場)で 子供受けする毒々しい色のアイスキャンディーの看板が並ぶ→小銭握りしめ、指差してオーダー→あるのは決まってバニラとチョコ味のみ……。
油断してはいけなかったのだ。
なんとか気を持ち直して、同じビルの4階にエレベーターで上がる。すると、そこもまた”ディープチャイナ”であった。
「友誼商店」という名の中華食材のスーパーである。
そこには数々の稀覯(きこう)な食材が並んでいる。

とにかく値段が安い。高級食材店でしか売ってなさそうな珍しい中華調味料やスパイス類が半額以下!

ねえ、奥さん、山椒が安いんですよ。青山椒も安い(僕、山椒好きです)。でも、どうして??
僕の目を引いたものベスト3はこれです。
第3位
ボトルのパッケージにポエムが綴られている、アルコール度数の高そうなアルコール飲料。白酒(バイジゥ)というそうだ。ヨーロッパでも強アルコール飲料離れが起きており、中国でもさまざまな取り組みが行われているが、その一環と見た。

ちなみに、ロシアでも詩がボトルに書いてあるウオッカがあるんですが、実際、効果あるのでしょうかね。
第2位
冷凍餃子。奥さん、これ1袋で500円とか630円とかですよ。

僕の生まれ故郷ロシアでは、ペリメニという水餃子があるのだが、それを思い出させるので、選ばざるを得なかった堂々の2位。自宅が近いなら買いだと思うんですよね……。はいっ 次!
第1位
タンジャオ油(藤椒油)

この緑のやつです!青山椒の油ですね〜。僕が北京や大連でラーメンを食べていたとき、テーブルにあった調味料。いわゆる、お薬みたいなものですね。もうね、痺れて口の中がわけわからなくなるんですが、それがクセになってヨダレが……。
そんな調子でひとりで勝手に盛り上がっていたら、連れから「次行こう」との一言。
「買い物なんて食事のあとにまたここに立ち寄ればいいじゃない」と言うのだが、どうしてもいますぐ買ってしまいたいのが、そのときの僕だった。
ここでワンポイントアドバイス。
***テーマーパークでのお土産やぬいぐるみと友誼商店での買い物は一番最後にしたほうがいいです。邪魔になります。
さあ、再び気を取り直して、いよいよお待ちかねの屋台巡り。
池袋西口の雑居ビルから外に出て歩くと、周囲は中国レストラン、屋台、その手の店だらけでした。まさに、トンネルを抜けたらそこは……(略)

日本にいる感じがしなくなりますよ。横浜中華街のような、わかりやすくて、ガッツリした場所ではなく、自分はどこに迷い込んだのだろうという感覚に襲われました。
さて僕らが入ったのは、池袋第3の中華フードコートの「沸騰小吃城」。

空腹に勝てず、お待ちかねのビール様とよだれ鶏ですよ。

こうなりゃラムチョップも頼んでしまいましょう。

と、いろんなものオーダーしてゆくのですが、後半は会話や酒の雰囲気も手伝って、記憶がぼやけてしまいました。
これ確か、四川料理の涼粉で、この緑色の団子は福建料理の龍高番薯丸。サツマイモの皮でできたものだとか。
さて、このあと、僕は料理の進化とターゲットや商売について考えてみた。
何が凄いって、なぜ都内で本場中国の料理を本場の人が作っているのか。実は僕は飲食店や調理場で15年以上働いていた経験があり、洋食レストランの立ち上げにも携わったことがある。
それらの店では表向き、本場を謳っていても、結局そのときどきの流行りや、その国の民の舌に合わせる料理を作るものだ。だが、ここ池袋はそうではなかった。
もっとも、思いがけないことに、食欲そそる料理の写真からQRコードでオーダーをしようと思ったとき、店長から「その料理はいま出せない」と言われた。なんでも「中国からコックを招聘しているが、コロナでまだ来日許可が下りない。彼が来ないとその地方の料理は出せない」というのだ。
さて、少々真面目くさい話になってしまったが、味に関しての僕の素直な感想は「本場の中華を確かに食べた」というものであった。
ホントに美味しかった。
日本の陳さん風中華もとても美味いが、池袋は中国の味がした。
僕は中国東北地方のすぐ隣のウラジオストクで生まれ、子供の頃から中国人の食堂で、妙に甘味の利いた中華を食べていた。いま思えば、なぜあのような味だったのか。その理由をここ池袋で知ることになるかもしれない。

この記事を書いていたら、学生時代にバイトしていた函館五島軒の中華シェフが語ってくれた話を思い出した。
いずれその話も書きたいと思う。
”東京ディープチャイナ”は、子供時代の記憶と深く結びつき、いつも僕の中にあったのである。
番外編
昨日スーパーで茄子が75円だった。池袋の友誼商店でいくつかの中華調味料を入手していた僕は、冷蔵庫の余り物で麻婆茄子を作ることにした。

この見た目だけでは全く味のわからない王守義さんのスパイスも160円ほどで購入していた。早速使用したところ、凄いですよ!!

あの味になります!!! あれですよ。
何が入っているかわからないけど中華だ! みたいなやつ。
王と名乗る方は料理が美味いと僕は勝手に思い込んでます。函館のハンバーガー屋のオーナも王さん、関西の有名ホテルの料理長も王さん! そう、この世界は王さんが美味いものを作っています。
で、この調味料は八角が少し強い感じがしましたが、うまいです。

最後にパンチが欲しいときにタンジャオ油をかけて食べれば、ばっちり中華。何を食べてるのか痺れてわからなくなってきます! これはおすすめです。

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