みなさんこんにちは、中医師の村木です。ようやく暖かくなってきましたね。
この数年、日本でも二十四節気※1、七十二侯※2といった自然の移り変わりに意識を置いて生活する人が増えてきました。中医学は人が自然とともに生きる智慧から生まれており、それぞれの季節を如何に健康に過ごすかについての叡智が詰まっています。
※1 二十四節気とは、立春や春分、夏至、冬至など、1年を4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたもの。
※2 七十二侯とは、さらに細かく1年を72の季節に分けたもので、季節ごとの鳥や虫、植物、天候などの様子がそれぞれの時候として名付けられています。
さて、硬い話はそのぐらいにして、「イースター」(今年は4月17日)はもう終わりましたが、ちょっと先に「立夏」も控えていますので、今回は「卵」の話題にしましょう。
キリスト教圏ではクリスマスに次ぐ大きな行事の「イースター」、「復活祭」ともいわれているのはイエス・キリストが十字架にかけられて復活したことを祝うものであり、「イースター」というのは、もともと異教徒だったゲルマン民族の神話の春の女神にちなんでいるのだとか。豊穣と再生のシンボルである卵をカラフルに色づけしたものを作ったり飾ったり……。子供の頃通っていた教会のイースター礼拝を思い出しました。
卵はビタミンCと食物繊維以外の栄養成分がそろった栄養価の高い食材です。ちょっと前まではコレステロール値を上げるといわれて悪者扱いされてきましたが、近年では1日1~2個なら健康に良いとされるようになりました。
卵(鶏卵)の性味※3は「甘、平」で身体の熱を取り、口やのどの渇きを潤すとされています。
また、身体のエネルギーである気や栄養である血を補うはたらきがありますので、疲れて元気のないときにぴったりです。ただし、アレルギーのある方はお控えください。
「平」は、これまで出てきた身体を温める「温熱」、冷やす「寒涼」ではなく、冷やしも温めもしない性質をさします。「平」の食材は「足りないものを補う」はたらきがあるとされます。
エネルギーや栄養が不足しているとき=元気がない、疲れている、病後などに栄養補給をするのに良いとされています。
※3 性味とは、その食材が身体を温める食材か冷やすかをさす「性」と酸、苦、甘、辛、鹹(かん・塩辛い味)の5つの「味」のいずれをさすかを表す漢方用語です。
鶏卵は白身が身体を冷やす涼性、黄身が温めも冷やしもしない平性です。全卵になると「平性」とされています。「身体の熱をとる」のは白身のはたらきです。
立夏と卵に関してはこんな伝説があります。
むかーしむかし、天に女媧(ニューワー)という女神がおったと。女媧は、幼い子供たちが夏バテや病気で命を奪われないように「疫病神」と戦ったんじゃ。女媧は自分の子孫には災いを及ぼさないように「疫病神」に約束させ、そのための目印をつけることにしたんじゃと。
天から降りてきた女媧は村人たちに「子供たちに腹がけをさせ、そこにポケットを付けて茹で卵を入れて食べさせるように」と告げて天に帰っていった。
腹がけのポケットに茹で卵を入れているのは女媧の子孫なので「疫病神」は手が出せず、子供たちは茹で卵を食べてすくすく元気に育ちましたとさ。おしまい。
立夏は5月5日頃ですが、このあたりから暑さが増してきて、場所によっては湿度も高くなってきます。暑いからといって薄着でいるとお腹が冷えたりするので、腹がけをしてお腹を冷やさないようにすることや、暑さで身体に熱がこもったり、身体がだるいときに茹で卵で栄養補給をすることは理にかなっています。昔の人の知恵が、このような伝説の形で受け継がれてきているのでしょう。
ところで、中国では、あちこちで茹で卵を茶葉と醬油や五香紛などで煮込んだ「茶葉蛋」が売られていて、その独特のにおいに食欲を刺激されたものでした。
懐かしいなあ!というわけで、今回は「茶葉蛋(チャーイエダン)」を作ってみましょう。
料理サイトなど見ると調味料をいろいろ使うレシピもありますが、村木はシンプルに卵、醤油、五香紛だけで作ってみました。
作り方
卵4個は7~10分茹で、殻にひびを入れておく。剥いちゃだめだよ。
茹でている間に茶葉と香辛料の準備をします。中華っぽさを出すにはこれ!
卵にひびを入れて、水、醤油、茶葉、八角、五香粉を入れて、沸騰したら弱火にして1時間ほど煮込みます。
火を止めて粗熱が取れたら煮汁ごと冷蔵庫で一晩寝かせます。
火を止めて粗熱を取り、冷蔵庫で1番寝かせる。食べる前に煮汁ごと温めてどうぞ。
ちょっと小腹が空いたときのおやつにちょうどいい茶葉蛋、お弁当のおかずにも。