みなさんこんにちは、中医師の村木です。
八十八夜も過ぎて、新緑の美しい季節になりました。
※八十八夜は立春から数えて88日目のことで、今年は5月2日(月)でした。
今年は春の訪れから最近まで寒暖の差が激しい日が続いていましたが、この後も天気はどうなるやら。さわやかな五月晴れの後にやってくるのは雨がちな6月。梅雨の季節がやってきます。
梅の実が黄色く実る頃の雨なので「梅雨」と呼ぶそうですが、この文字を見た途端、私たちの脳内で「え~梅雨?じめじめ、ベタベタ、気分うつうつ、嫌だなあ」といった言葉に変換されませんか。
湿気が多くてジメジメするのと同時に、この時期にむくみや身体の重だるさ、めまいや頭の重い感じが出てくる方が増えてきます。
これはどういうことでしょう?
その前に、中医学で「人は何故病気になるのか」を話しましょう。
私たちには健康であろうとする力が備わっています。世間一般では自然治癒力とか免疫とかいいますが、中医学では「正気(せいき)」と呼び、これがあるので、私たちは容易に病気になったりはしません。
逆に、人を病気にする原因を「邪気(じゃき)」と呼びます。
この邪気と云うもの、四季において暑さ寒さの程度が激しかったり、その季節にふさわしくない気候だったりすると、邪気となって私たちの体調を崩して病気にさせます。
人体の外にある邪気なので総合して「外邪」と呼び、それぞれの季節の特徴に邪を付けて「風邪」「熱邪」「湿邪」「燥邪」「寒邪」「暑邪」と呼んでいます。
梅雨時は湿度が普段よりも高いので、この湿気が人体に影響を与える「湿邪」となり、上記のような症状が起こると考えます。
もともと私たちの体内には「水(津液)」という身体を潤す液体が春の小川のようにさらさらと流れていますが、そこに余計な水が入ってくるので、流れが滞って春のどぶ川になり、体内に溜まると想像してみてください。
足に溜まったら足がむくんで重くなるし、頭に溜まったら水の入った洗面器がたぷたぷ揺れるようにめまいがするし、頭が重くなったりします。
そう、水は重いですからねー。梅雨時に身体が重だるくなったら湿邪の影響を受けていると考えてよいでしょう。
そんな時には! 身体に溜まった湿邪を追い出す必要があります。いろいろな方法がありますが、まずは「余分な水を動かして出すはたらきのある食材を摂る」こと。よく使われるのはハトムギです。
夏の定番麦茶は、余計な水を出す優れもの。そしてこれからの季節美味しくなる「とうもろこし」も大事な食材です。
とうもろこしの性味は甘で平、胃と大腸に帰経(食材や生薬がどの臓腑にはたらくかを定めたものをいう)します。甘い味は胃腸を元気にし、その結果として水を巡らせて出すはたらきがあります。
そして、とうもろこし本体だけでなく、今回注目したいのはひげの部分。中国では「玉米鬚(ユィミーシュー)」と呼ばれてむくみや尿の出ない場合に使われる生薬です。こちらも性味は甘で平ですが帰経が膀胱、肝、胆となっています。日本では「南蛮毛(なんばんげ)」という名前で呼ばれています。
これからとうもろこしが出てくる季節ですので、皮付きのものを買ってきたら、ひげを捨てずに取っておいてこの「南蛮毛」を自分で作ってみましょう。
皮の外に出ている茶色になった部分は切り取り、中の奇麗な部分だけを使います。洗って数日天日干しにして、茶色く乾燥したら出来上がりです。これを煎じてお茶にします。
また、とうもろこし本体と合わせて炊き込みご飯やスープにしてお召し上がりください。ただし、乾燥させると結構バリバリ硬くなりますので、食感が気になる方は食べるときに取り出しても構いません。芯も入れると更に効果アップ。こちらも食べるときには取り除いてくださいね。
また、軽い運動で汗をかいて水を出すことや、部屋の除湿も湿邪対策のひとつです。激しい運動で大量に発汗すればいいと考えがちですが、大量の発汗は体力を消耗しますのでご注意ください。
今年はハトムギやとうもろこしのひげで湿邪対策を行って元気に過ごしましょう!
さて、今回の「カンタン!元気になる、ズボラ薬膳」は、鷄ととうもろこしのスープです。
レシピを説明しますね。
まず材料から。
材料(2人分)
- とうもろこし2本
- 鷄手羽元6本
- 生姜ひとかけ
- にんにく3粒
- ネギの青いところ1本分
- とうもろこしのひげ1本分
- なつめ1個(あれば)
- クコの実6〜7個(あれば)
作り方
鍋で胡麻油を熱し生姜、にんにく、ねぎを炒めます。
とうもろこし、手羽元を入れて調理酒(材料外)を振りかけて蓋をして蒸します。
鶏肉に火が通ったら水を加えて20分ほど煮ます。
とうもろこしが柔らかくなったら、ズボラ薬膳鶏ととうもろこしのスープの出来上がり〜。
次回もどうぞお楽しみに!