この数年で香港レストランや飲茶専門店が続々とオープンしていますね。本サイトでも、味坊集団による「宝味八萬」をはじめ、様々な店が紹介されていますが、メインとなる点心と共に注目されているのが広東式のお粥です。
日本のお粥というと、体調がすぐれない時に食べる病院食のようなイメージだったりしますよね。でも、中国をはじめ東南アジアの広い範囲では朝食の定番であり、日常食としてお粥は食べられています。ファストフードの朝食メニューにもお粥があるくらいで、日本でも提供してほしいと願うのは私だけではないはずでしょう。
いくつかあるお粥の筆頭といえば広東式ですね。豚や鶏、魚介で出汁をとったスープで米から長時間トロトロになるまで炊いたものです。塩味で調味した日本のお粥とは、似ているようで味も食感も違う仕上がりになります。
そんな広東式のお粥が、以前に比べて見かける機会が増えて、より気軽に食べられるようになっているんです。
そこで今回は、広東式のお粥に注目です!
毎日食べても飽きない種類豊富な広東粥
私が初めて広東粥(以下、お粥)のおいしさを知ったのはマカオで訪れたお粥屋さんでした。朝食として食べるイメージのお粥でしたが、深夜営業や24時間営業の粥店がけっこうあり、夜食としても需要があることにびっくりしました。
お粥は、米に油をまぶして出汁と一緒に長時間炊いていきます。出汁の食材は豚骨だったり鶏ガラだったり、貝柱を入れる場合も。店の一角には大体小さな厨房があり、注文のたびにお粥と具材を小鍋に移して火を通して提供します。
米粒が割れて形が崩れてトロトロになったお粥には、臓物や肉団子、魚の切り身など、様々な具材がメニューに揃っています。具材の味がお粥に浸透して味に変化が出てくるので、肉や魚介など色々入っていると味が格段にクレードアップします。
お米を炊いて「調理」したものと思っていた日本のお粥が、マカオでは(広東粥として)立派な「料理」として成立していることに感動して、滞在中毎日のように食べていました。
お粥店の移り変わり
この記事の内容を考えていた時に、中国料理を食べるのは今みたいに池袋や上野に行くのではなく、高級店、庶民店に限らず、中華街へ行くということがステータスだったな、とふと思いました。
ここで、ちょっとお粥店の流行を振り返ってみましょう。
横浜中華街で1950年創業の「謝甜記」は、お粥の元祖ともいえる店で、その人気は現在も変わることなく、行列の絶えない店です。
また、「馬さんの店 龍仙」も同様で、横浜中華街にお粥を食べに行くきっけになりましたし、中華街の繁栄に一役買った店といえるでしょう。
2000年以降になると都内を中心に、女性一人でも入りやすいお粥店が登場し始めます。
新宿京王モールに現在もある野菜をふんだんに取り入れた「粥餐庁」(2001年~)や、お粥と香港スイーツの新スタイル店として東京ミッドタウンにオープンした「粥茶館 糖朝」(2013年~)です。
「粥餐庁」は「謝朋殿」をはじめとする中国系レストランを展開するグリーンハウスが運営。「粥茶館 糖朝」はご存じ香港発の「糖朝」が日本で展開する新業態でした。アジアンエスニック系の料理がブームから定着へと変わった頃で、新たな試みをする店がたくさんありましたね。
さらに、2015年あたりからは、おしゃれでかわいらしい演出を兼ねた、バラエティー豊富な“映え系粥”が増えてきました。「カユ・デロワ」(墨田区)のように、チーズやほうれん草といった新感覚な食材を加え、おしゃれな空間演出をする店や、「3米3」(杉並区)のように食器にポーランドの食器を採用するこだわりの店もあります。
また、今年2月には、北上野に「健康で美しくなれる料理(健美粥)」をテーマにした中国式粥レストラン「HENGEN」がオープンするなど、ニューフェイスも登場しています。今もなお継続して営業している粥店も多く、お粥の世界観がどんどん広がっていきますね。
お粥を食べに行こう!【店舗紹介】
先ほどご紹介したお粥と点心の専門店「3米3(サンマイサン)」は、香港人ご夫婦によって2017年にオープンしたお店。店名は、「粥」の漢字を分解して、「弓→3」に見えることからネーミングされました。
鶏ガラや貝柱などで仕込んだ出汁と国産米、オーツ麦で3時間以上炊いて作るお粥は、10種類以上あり、どれも栄養のバランスを考慮し、健康維持のためにと考えられています。
「漢方元気粥」のランチセット(点心、サラダ付き)。豚肉やクコの実、ハスの実などが入っていて、まさに食べれば元気になるようなお粥です。米粒が崩れていて、スープのようにスーッと喉を通っていきます。お好みで白コショウをパラっと! お粥の優しい味は、胃に負担がかからないのがいいですよね。
職人によって手書きされたポーランドの食器のかわいらしさと、アジアのお粥の融合がお店の雰囲気にぴったりです。
もう一軒ご紹介しましょう。
この数年、大人気となっている茶餐廳のお店から。
2020年にオープンした「香港傳奇 Legendary Hong Kong(ホンコンデンキ) 」(文京区)は、茶餐廳ではおなじみの点心やロースト飯、フレンチトーストなど約50種類のメニューが揃うお店です。ランチのピーク時間を外しても常にお客さんが出入りする人気ぶり。広東語での会話が方々のテーブルから聞こえてきます。
「窩蛋牛肉粥」は、たっぷりの牛肉に生卵をポンと落としたお粥。鶏ガラをメインとした出汁で、優しい味わいながらも出汁のうま味がしっかり出ています。米粒がとろける寸前の絶妙なトロミ加減が印象的です。生卵を崩しながら食べるとさらに美味。牛肉も食べ応えがあり満足感が得られます。
こちらの店も香港人ご夫婦がオーナーの店で、中国でのホテル勤務後第二の人生に飲食店経営を選び、中国・廈門市に1号店をオープン。シンガポールに2号店があります。
店舗情報
3米3 荻窪本店
杉並区上荻1-19-9
050-6877-5576
平日 11:30~15:00/17:30 〜21:00
土日祝 11:30〜21:00
※荻窪本店は2023年4月7日にて閉店。神保町店や下北沢店など都内支店についての詳細はHPをご確認ください。。
HP:http://www.3mai3.com/
香港傳奇
文京区湯島3-34-8 第一天神ビル1F
03-6806-0157
月曜休み平日 12:00~21:00 (L.O.20:30)
祝日12:00~15:00/16:00~21:00 (L.O.20:30)