【上海発】具材を選べるあっさりスープの進化系「蘇州麺」をご存知ですか?

【上海発】具材を選べるあっさりスープの進化系「蘇州麺」をご存知ですか?

【上海発】蘇州麺が進化中! 本場蘇州の話題店3選。

上海とその周辺地域でよく食べられている麺料理といえば、「蘇州麺(蘇式湯麺)」です。
特徴は、タウナギや鶏などでダシをとったあっさりスープと細ストレート麺。これに浇頭(ジャオトウ/具材)をのせて食べます。近年は、さらに伝統に忠実に、器や素材、インテリアにこだわったお店が上海市内にも増えています。

代表格「松鶴楼」は2021年以降上海市内に店舗が増加。店舗数や客の入りを見ていると、日系ラーメン店の勢いを上回っている感もあります。

蘇州麺は脂っこさが一切なく、定期的に食べたくなる味なのですが、蘭州拉麺やビャンビャン麺のような派手さ、わかりやすさがないからか、興味を持つ日本人は少ないよう。この『東京ディープチャイナ』のサイト内でも「蘇州麺」を検索してみましたが、関連情報、お店情報の投稿はゼロでした……。
ということで今回は、日本での蘇州麺の印象を変えるべく、本場蘇州市内で私がこれまでに食べた蘇州麺のなかから最新の人気店をご紹介したいと思います。

今回の記事の監修は、蘇州生まれ、蘇州育ちの古い友人Kさん。
彼女は、飲食店選びに欠かせないアプリ『大衆点評』(ユーザー数2.5億人)にて、「江南小格格」のハンドルネームで活躍するインフルエンサー。スコアは「Lv8」(※)という、蘇州市内グルメの専門家です。
このKさんに、どのお店を紹介すべきか聞きつつお勧めの3軒を決めてみました。

※投稿の質、投稿内容の信用度、いいね数、フォロワー数などでレベルが上がる。外食好き、グルメ好きな一般ユーザーが頑張って投稿しても「Lv5」前後。そのため、「Lv7」以上はインフルエンサー的存在になる。店側は、ランクが高い人に高評価の口コミを書いてもらうことがステータスになる。

まず1軒目は「裕麺堂」。

唐代の詩人・白居易ゆかりの運河沿いの古鎮「山塘街」から徒歩圏内の人気店です。

高速鉄道の蘇州駅から地下鉄で一駅の古鎮「山塘街」。
「山塘街」を抜けて5分ほど歩いた場所にお店があります。

蘇州麺には、醤油ベースの紅湯と、ダシの旨味を生かした白湯があります。どちらかのベース(具材なしの麺とスープだけのもの)を選んでから、浇頭をオーダーするのが一般的。蘇州麺は、麺が主食、浇頭がおかずと考えるとわかりやすいかもしれません。

今回は、ベースの「紅湯麺」(10元)に、浇頭として「青菜」(2元)、「醤爆腰花(豚キドニーの醤油炒め)」(30元)をオーダー。
スープは見た目の印象よりかなりあっさり。ほんのりとした塩味と甘味にだしが効いている程度なので、やや濃い味付けの浇頭を入れることで味が完成します。麺は硬ゆででした。
蘇州麺の基本を楽しめるお店です。

スープの紅と白×浇頭(20種類ほど)で、無限の味を楽しめるのが蘇州麺のいいところ。

Kさん曰く、「この店のいちばんお勧めは『三蝦麺(三種のエビ炒め付きのセット麺)』だけど、旬の初夏以外はオーダーしなくて可」とのことでした。

2軒目は、私のいちばんのお気に入り店。「北寺塔」の近くにある「姑蘇橋麺館」です。

姑蘇区のランドマーク「北寺塔」。南宋時代(1153年)に建てられたものがそのまま残っている。

若い世代のニーズに合わせたセカンドウェーブ系麺館の代表格で、インテリアも、麺自体も、美しいとしか言いようのないお店。なのに、店員さんたちがものすごく気さくで庶民的で、地元のおじいちゃんおばあちゃんの常連も多いという、魅力的なギャップがあるお店です。

外観はこんな感じ。
「禅系侘び寂び」なインテリアがとにかく素敵。中二階、二階もおしゃれです。

今回は「白湯麺」(6元)に、蘇州麺の定番「燜肉」(20元)と、きのこや麩を炒めた「羅漢浄素」(15元)をオーダー。
それと、ビールを頼んでしまったのでおつまみ4種盛り「精品四味碟」(20元)も。右から蒸し鶏のナツメ漬け、タケノコの和えもの、きのことピーナッツの和えもの、緑豆凉糕(伝統的なお菓子)です。

美しすぎる盛り付け。しかも麺だけならたった6元という安さ……。
浇頭2皿とおつまみ4種。

私はこの日、知識ゼロのまま初めて「燜肉」を頼み、「冷たい肉」であることにびっくりし、頼んだことをやや後悔していました。「でもまあ、麺にのせるんだよね?」と思い、写真のような状態で麺を食べようとしました。

「燜肉」は、先に麺の下に入れるのがルールだった……。

すると店員さんが飛んできて、「燜肉は、麺の下に入れて“燜”(熱で煮込む)!」、と。言われるがままに肉を麺の下に入れ、麺を食べ終わってから燜肉に着手したのですが、脂身が驚くほどとろとろになっており、麺を食べている間に肉の旨味がスープに溶け出して、感動するほど完璧な状態になっていました。
この方法、日本のラーメン屋さんでも使えそう。チャーシューは麺の下方式のお店、流行るかも。

3軒目は、「陸振興麺館」。

先ほどの「姑蘇橋」と、運河沿いの散策ストリート「平江路」の中間地点にあります。

どこを撮っても絵になる「平江路」。この界隈は一日中歩いても飽きない。

「陸振興麺館」は創業100年という老舗。蘇州市内に複数の支店があり、地元の人たちにとってなくてはならないお店だそう。Kさんも、「裕麺堂や姑蘇橋もおいしいけど、普段食べる麺というと蘇州人はここを思い浮かべる」とのこと。

店構えです。行列ができていることも。
この日も満席。おそらくみんな地元の人。「多分観光客は来ない」とKさん。

ということで、いちばん庶民的な普段の麺料理「搾菜肉絲麺」(8元)をオーダー。
ザーサイと細切り肉炒めの麺で、安定のおいしさ。麺には小麦の香りも残っていて、スープもおだやかな風味。しかもレシートを二度見してしまうほどの安さ。蘇州、やっぱり安くておいしい店が多いなと改めて思いました。

麺に浇頭が最初からのっているスタイル。

2020年以降、蘇州市内には「姑蘇文化(古き良き蘇州の文化)」と、最近のトレンド(シンプルでレトロ)を融合させたスポットが多数登場しています。
代表格は、「蘇州東西橋市集」が開催される美術館「蘇州本色美術館」や、昔ながらの食材市場と若者カルチャーをミックスさせた「双塔市集」、フードコート「姑蘇二十四集」などです。
活躍しているのは建築デザイナーの沈雷氏。彼の手がけたスポットは違和感や奇抜さがなく、しっとりと周囲の雰囲気に馴染む上質な空間ばかりです。

古い食材市場と若者に人気のショップを融合した「双塔市集」。日本からは、札幌の人気カフェ「森彦」が出店している。
モール内のフードコートとは思えない空間が広がる「姑蘇二十四集」。

蘇州といえば、コロナ前までは「拙政園」や「寒山寺」を日帰りでまわって、「シルク博物館」で買い物をさせられるのが日本人向けツアーの定番でした。
でも、それだけが蘇州の思い出ではあまりにも悲しい……。

行くなら、最低2泊はしてほしいところ。
古い路地を散策しつつ、地元の人に人気の店でのんびり食事しながら名所をまわり、泊まりは運河沿いの古民家リノベホテルへ。
地下鉄が5路線開通しているので、中心地の各観光スポットから日系企業が集まる新区エリア、高層ビルが立ち並ぶ園区エリアまでのアクセスも簡単。日本人学校のある淮海街は、日本の商店街そっくりにリニューアルされていて、浜焼き系居酒屋やビストロなど、日系のお店に行列ができています。
旅行者の渡航が解禁されたら、まずは自由旅行初心者向けの街・蘇州、お勧めです。

2023年春現在の蘇州のブームは竹筒ミルクティーとのこと。街歩きのお供に。

店舗情報

裕麺堂

蘇州市姑蘇区南新路73-77号
8:00-14:00 17:00-20:00


姑蘇橋麺館

蘇州市姑蘇区人民路1736号
6:00-21:00


陸振興麺館

蘇州市姑蘇区白塔西路24-26号
6:00-13:30 16:00-19:00

Writer
記事を書いてくれた人

萩原晶子

プロフィール


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