初めまして。食べることが大好き、東京で編集ライターをしている上田朱莉です!
今回は、2022年12月中旬に東京・上野にオープンした「孫ニ娘潮汕牛肉火鍋(そんじじょう ちょうさんぎゅうにくひなべ)」(文京区湯島)を訪ねました。
私は中華料理が好きですが、「ガチ中華」は初めて踏み入れる領域。少し緊張しています、、、。
店は東京メトロ上野広小路駅からすぐのビルの2階です。階段入り口の雰囲気から、もうすでに日本っぽさが全然ありません。海外経験がない私……。
階段を一段ずつ上るたびに、馴染みのない場所へ突入していくようです。不安と好奇心がどんどん膨らみます。
店へ入って最初に思ったのは、意外に「きれい!」ということ。見たことのない異国な世界が広がっているのかと思いきや、想像以上に過ごしやすい空間でした。
注文はタッチパネル式です。見てわかるメニューもあれば、「なんだこれ?」というメニューも。中国語の隣に日本語も書いてあるので、それを見ながら注文していきます。ドリンクだけでも全然知らないものがたくさんで、見ていて面白いです!
孫ニ娘潮汕牛肉火鍋は、中国の火鍋料理のひとつ、「牛肉しゃぶしゃぶ(潮汕牛肉火鍋)」の専門店です!
オーナーの孫芳さんによると、潮汕牛肉火鍋は中国で流行中だそう!
※潮汕(チョウサン)というのは、広東省の潮州市や汕頭市にまたがる地域を指す呼称です。
早速注文すると大きな鍋が登場! 中のスープには大根やとうもろこしが入っていて、牛骨スープで煮立てて出汁を取っています。そして驚いたのが、わりと大きなザルも一緒に運ばれてきたこと。使い方は後ほど説明します……!
牛骨スープも何種類かあり、しゃぶしゃぶをする牛肉は自由にさまざまな部位を選べます。
今回はおすすめと教えてもらった部位を注文しました。それぞれ簡単に説明していきます。
やわらかい食感とほどよい脂身の味わいが絶妙!
サシの入った肩から背中にかけての部位。ロースよりもやわらかく、とろけます……
腰からももにかけての部位。細切れの赤身肉で歯応えがあります。
あばら骨の周辺の部位。脂身が多く、濃厚な味です。
前足のふくらはぎの部位。筋肉質のため赤身が多く、噛み応えがあります。
後ろ足のふくらはぎの部位。前スネよりも硬く、コリコリ食感が特徴です。前スネとともに人気が高いそうです。
肩甲骨から手首にかけての部位。やわらかくも歯切れがよく、噛めば噛むほどうま味が出てきます。
どの牛肉も本当に色鮮やかですよね。この店は日本国産の牛肉を一頭買いして、非冷凍のまま最短日数で店に届けているそうです。新鮮なうちの牛肉を食べられるのは嬉しいです!
運ばれてきた牛肉をしゃぶしゃぶしていきましょう!
ここで先ほどの大きなザルの出番! 中国のしゃぶしゃぶはなんと取っ手の付いたザルのような調理器具を使って牛肉をスープにくぐらせるんです。
一度に入れるのは3〜4枚。1枚ずつ鍋に入れる日本とは違いますね……。
スープにくぐらせるのは大体8秒ぐらい。ほんのりピンクがかった状態でOKです。タレにつけていただきます。
詳しい食べ方についてはこちら
その前に知っておかなければならないことがあります。タレはなんとバイキング形式! 自分好みに組み合わせていきます。タレの種類が多いのは中国火鍋ならではです。
孫ニ娘潮汕牛肉火鍋では、東南アジア由来の沙茶醤(サーチャージャン)や海鮮醤油があるのが特徴です。「ガチ中華」が初めてという人のために、各種タレを組み合わせてカスタマイズするための掲示板もあります! よかった……。
ちなみに、今回は孫芳さんがおすすめしてくれた「沙茶醤+醤油+紅葱油(ネギアブラ)+香菜(パクチー)」のタレにしました。パクチーの香りと濃いめの味付けが絶品です!
名前から「どんな味なの?」と気になる調味料もあったので、ほかにも試してみたくなりました。
鍋の中に入れる食材は牛肉だけではありません。今回試してみたものをご紹介します。
牛肉を団子状に固めたものです。想像より遥に食感がムチムチでした! 食べ応えも抜群です。
団子の中に魚卵が入った食材です。団子の生地はプリプリ、中の魚卵はクリーミーでやさしい味わいでした!
写真は左から油麦菜、ほうれん草、ゆば。油麦菜は中国の野菜です。牛肉と野菜を交互に食べることができて最高です!
サイドメニューも豊富です。前菜から順にご紹介します。
写真は左からジャガイモの千切り(土豆絲)、ピーナッツの水煮、干し豆腐(干豆腐絲)、トマトの漬物。どれも中国では定番の惣菜だそうです。少し酸味があるので、食中のお口直しにもぴったりだと思います。前菜はタレと同じくバイキング形式なので、好きなだけ食べられちゃいます。
海老を醤油、白酒、紹興酒、ニンニクなどからなるタレに漬けています。想像以上に海老がプリプリでした! 紹興酒の香りが強いです。
米からつくる皮に海鮮や肉を入れて蒸し、特製タレをかけて仕上げた料理です。名前の漢字を見たとき、どんなものがくるのか少し怖かったです。食べてみると、プルプルモチモチ! 今まで食べたことのない味です。
河粉(ホーファン)というきし麺を牛肉やニラ、モヤシなどと一緖に炒めています。醤油の甘辛い味が食欲をそそるので、お腹にたまる料理です。日本の焼きそばに近い気がします。
人生初の「ガチ中華」。
店を訪ねる前は、知識がないあまり、まったくイメージがつかめず、少しこわいという印象もありました。しかし実際は、「あれ、美味しいぞ?」と知れば知るほど新しい発見があって面白い分野でした!
知らない文化に触れることは、ある意味勇気を伴います。でも一歩足を踏み入れると、学びがあり、それが楽しさにつながっていくんだなと実感しました。実際に行って食べてみないと分からないことですね……。
「ガチ中華」に興味がある人は、孫ニ娘潮汕牛肉火鍋の牛肉しゃぶしゃぶからトライしてみるのはいかがでしょう。
(上田 朱莉) 写真/白井裕介
店舗情報
孫ニ娘潮汕牛肉火鍋
文京区湯島3-41-2 林ビル2F
03-6803-0585
Writer
記事を書いてくれた人
上田 朱莉
代表からのひとこと
上田さんにとって今回は初「ガチ中華」体験だったようですが、それが潮汕牛肉しゃぶしゃぶだったなんて、とても恵まれていたかもしれません。誰しも未知の領域を体験するにはちょっぴり勇気が必要でしょう。でも、一度乗り越えたら……、もう大丈夫ですね。
ところで、今回上田さんが食べた潮汕料理というのは、中国でも人気の地方料理のジャンルです。潮州市や汕頭市は広東省に位置していますが、福建省とも近いので、むしろ食文化のつながりはそちらの方が強いかも。実は、この地方の人たちは古くから東南アジアに移住してきたことから、タイやシンガポール、香港などでもよく食べられています。
海に近い土地柄から海鮮料理が有名です。魚醤やスルメ、干しカキ、魚の干物、フカヒレなどの乾物を使った絶品スープが知られています。ほかにも、今回出てきた鍋の具材の卵入り魚団子のような魚のつみれ入りのスープもおいしいです。
つまり、潮汕料理といえば、本来は海鮮のイメージなのですが、今回食べた牛肉しゃぶしゃぶ(潮汕牛肉火鍋)というのは、調べてみると、1940年代くらいから現地で食べられるようになったそうです。スープは牛骨と大根がベースで、タレに東南アジア由来の沙茶酱(サーチャージャン)を使うのも、牛肉の味を引き立てるためかと思われます。
中国各地で牛肉しゃぶしゃぶ(潮汕牛肉火鍋)がヒットしている理由は、牛の部位を細かく分けて提供したことと、熱湯にさっとさらして、しゃぶしゃぶする食べ方が新鮮でウケているからだそうです。
確かに、日本では焼肉の場合は部位を細かく分けて食べますが、しゃぶしゃぶはそこまでしてはいませんでした。そこがこの「ガチ中華」の新しいところかと思います。
エビの紹興酒漬けの「潮汕生腌」や潮汕風の「海鮮腸粉」など、しゃぶしゃぶ以外のサイドメニューも、一般の香港点心の店とは調理法が異なり、楽しめます。
ところで、オーナーの孫芳さんはここ数年、ご自身の名前「孫」とかけあわせた「孫二娘」というブランドを冠した新ジャンルの「ガチ中華」の店を続々オープンさせてきた女性です。
先月、伊能すみ子さんがレポートしてくれた高田馬場に今春オープンした広東省順徳のご当地“粥しゃぶ”の店「孫二娘 毋米粥」がそうですし、同じ高田馬場の「孫二娘 跷脚牛肉」は四川省楽山市の名物料理の店です。
ちなみに、孫二娘というのは、中国人なら誰でも知っている水滸伝に出てくる女性キャラです。お店の名刺に描かれた女性キャラの顔は、もう気がついた人もいるかと思いますが、孫芳さんご本人です。遊び心がいいですね。
そんな彼女が今度はどんなジャンルの料理を届けてくれるのか、期待してしまいます。