日本人がまだ知らない順徳のご当地“粥しゃぶ”が高田馬場に登場

日本人がまだ知らない順徳のご当地“粥しゃぶ”が高田馬場に登場

前回私は香港やマカオなどで食べられている広東式の粥をご紹介しましたが、今回はいま注目の中華粥シリーズの第二弾!

お粥の火鍋料理に注目してみましょう。

広東省・順徳のご当地名物料理

訪れたのは、池袋、上野に並んで、話題の「ガチ中華」の店も多い高田馬場です。

今年2月にオープンしたばかりの「孫二娘 毋米粥(ソンジジョウ ウーミージョウ)」は、日本ではまだ珍しい「毋米粥」(「米が無い粥」の意味)という “お粥のしゃぶしゃぶ”が食べられるお店です。

毋米粥

実は、私はオープンしてすぐにこの店で毋米粥を食べているのですが、「こんなお粥の食べ方があるなんて!」と驚きとおいしさに興味が増して、改めて今回、TDC代表の中村正人さんと訪れました。

店名を見て、「あっ!」と思った人もいるかと思いますが、「孫二娘」といえば、まだ日本では珍しいご当地ガチ中華を展開する人気急上昇の飲食の系列店です。高田馬場や御徒町などで話題の店を続々とオープンさせています。

詳しくは、また後ほどお伝えするとして、まずは中国・河南省出身のオーナー孫芳さんに料理についてお聞きしました。

中国・河南省出身のオーナー孫芳さんに料理

店内にはチャイナドレスを着た女性のイラストが。孫さんがモデルとなっている。

孫さんがモデルとなったイラスト

「私はとにかく食べることが大好きなので、興味のある料理があれば、どこにでもでかけます。毋米粥は、広東省仏山市にある順徳発祥の名物料理で、私も順徳で初めて食べました。とにかくおいしいものがたくさんあって、魚介類も豊富です。魚介と肉を合わせることでおいしさの相乗効果が生まれ、美の意識からも体によい粥の魅力があるなと感じたんです」と孫さん。

順徳の毋米粥レストラン。斬新なスタイルで提供
孫さんが訪れた順徳の毋米粥レストラン。斬新なスタイルで提供

順徳は、以前ご紹介したシンガポールの春節料理「魚生」も元々は順徳の刺身料理ですし、私が好きなマカオや香港の名物デザート「牛乳プリン」も順徳の名物でした。他にも素材本来の良さをいかした料理がたくさんあって、まさに美食の町ですね。

お米と鶏ガラスープでしゃぶしゃぶ

鍋に入ったスープを熱して、具材をしゃぶしゃぶしていきます。

毋米粥鍋底
「毋米粥鍋底」1000円

ベースとなるスープは1種類。具材は魚介類や牛肉、野菜など約40種類の中から注文できます。魚介類(団子を含む)、牛肉(臓物を含む)は580円~、野菜は各298円です。

このスープは、鶏ガラを入れて3時間ほど炊いて、そこに米を加えて更に30分ほど火を通します。米は別に取り分けられ、乳白色のとろみのついたスープに。取り分けた米はお粥の状態にして、〆の粥として提供されます。

一般的に鍋料理を食べる時は、人数分で注文することが多いですよね。しかし、この鍋スープ1つを注文すれば、量的には問題ないです。※テーブル席4人くらいでもOK。

食べ慣れない料理だと、手順がわかりにくいので、毋米粥の食べ方を教えていただきました。

まずは、魚介類から入れていきましょう!

湯切りお玉に具材を入れてしゃぶしゃぶします。
エビやアワビなど出汁が出やすい魚介だと、スープに浸透してさらにおいしくなりますね。

ヨシエビ
ヨシエビ(川エビの一種)は、すぐに赤色に変わり食べごろに
鮮度の良い牛肉もさっと色が変わる程度でOK
鮮度の良い牛肉もさっと色が変わる程度でOK

しっかりとした赤身の肉質は、見ているだけで良質のものとわかります。ロース、ランプ、ミスジ、前スネと、すべて680円とリーズナブル。というのも、系列店で新鮮な牛肉を取り扱っていることから、同店でも同等の質のよい牛肉を入手することができるんですって。

孫さんからのアドバイスは、「とても新鮮な牛肉なので火を通すのは肉がピンク色に変わる8秒程度でOK」とのことです。

最後に野菜を入れていきます。キノコ類を入れると、さらに出汁の味わいがよくなりますね。

しゃぶしゃぶしたら火鍋おなじみの自分でカスタマイズできる特製タレでいただきましょう。

自分でカスタマイズできる特製タレ
左奥から、時計まわりに。赤唐辛子、海鮮醤、ニンニク、沙茶醤、香菜、小ネギ、辣油。

赤唐辛子は匙の先っぽで少しすくう程度の量でも、しっかり辛みが出ます。調味料はだいたい同じ分量ずつ(1の割合)で入れて、沙茶醤は多め(2の割合)がおすすめです。

スタッフさんに合わせていただいたというのもありますが、このタレがめちゃくちゃおいしかったです。海鮮醤の甘みのある万能的なうま味に、沙茶醤特有のエビや魚の味が加わって、後を引くおいしさ。たっぷりつけて食べましょう。

海鮮醤の甘みのある万能的なうま味に、沙茶醤特有のエビ

もちろん、順番に入れるのでなく、具材をいっぺんに入れてもよいのですが、さっとくぐらせて食べるのがおすすめなので、何回かに分けて入れる方が良いでしょう。

〆はお粥

〆はお粥で! うま味が溶け込んだスープで作るお粥も最高です。お好みで、油条(揚げパン)を加えてもいいですね。こちらの粥もスープ代に含まれています。

一人前のお粥や一品料理も素材の良さが際立つおいしさ

営業時間内はいつでも毋米粥を食べることができますが、広東省出身のシェフが作る広東料理をはじめとする主食メニューや一品メニューも充実しています。

皮蛋痩肉粥
皮蛋痩肉粥(ピータンと赤身肉の粥)油条付き 980円。

ベースの鶏ガラスープは毋米粥と同じですが、お粥用に別炊きされています。お粥とピータンって相性ばっちりですね。お粥だけでも5種類が揃っています。

腊肠煲仔
腊肠煲仔(腸詰の土鍋炊き込みごはん) 950円

煲仔飯があるのは嬉しいですね。牛筋やスペアリブのごはんなど、ランチでも食べたくなるようなごはん料理も揃っています。

おつまみ、おかず系も充実のラインナップです。

撈汁海鮮
撈汁海鮮(海鮮の特製タレ)1080円

さっぱりした辛みが具材に浸透して、これから夏にかけてもぴったりな冷菜。

エビ、イカ、アサリの絶妙な火入れがされた海鮮の素材の良さが際立ちます。枝豆も思わず食べる手が止まりません。

同じく冷菜の「撈汁牛肉」(980円)も牛肉が盛沢山。柔らかく仕上がっていて、ペロッと食べてしまえるほどです。これらの冷菜はビールに合いますね。

爆炒三嫩
爆炒三嫩(プリプリの三種炒め)1080円

豚マメ(腎臓)、豚ガツ(胃袋)、豚レバー(肝臓)を豪快に炒めた一品。それぞれの部位は、しっかり下処理ができていて、切り方も工夫されています。なので、歯応えをしっかり感じながらも柔らかく仕上がっています。

他にも、さっぱりとしたお味の「エビとアスパラガスの炒め」(1080円)や「白切鶏」(980円)もありますよ。

料理は素材の良さがしっかりあって、お味も辛すぎることもなく、見た目よりもさっぱりと食べられるものが多く、飽きずにたべることができます。

私はビール党なのですが、嬉しいのがもうひとつ。

ハルビンビール
ハルビンビール 580円

一部の「ガチ中華」店では取り扱いがあるものの、一般的にはまだ飲める店が少ないので、これは貴重ですね。他に、「江小白」(780円)もありますよ。

注文はテーブルに設置しているタブレット端末からできます。日本語、中国語の表記はクリックすることで切り替わるので、中国語が分からない場合でも安心です。

日本人がまだ知らない料理でおいしさを探求

私は、お粥でしゃぶしゃぶをするということに、おいしさと楽しさがあるなと感じたのですが、それもオーナーの孫さんがおいしいものへの探求心が旺盛で、「これだ!」と思える料理を店舗つくりに反映されているからだと思います。

同じく高田馬場で展開する「孫二娘 跷脚牛肉」は四川省楽山市の名物。「孫二娘 潮汕牛肉火鍋」(文京区湯島)も広東省潮汕のご当地グルメです。孫さんは「日本人がまだ知らない料理はたくさんあるし、初めて体験する味を好きになってほしいです」と。

孫二娘 跷脚牛肉
孫二娘 跷脚牛肉
孫二娘 跷脚牛肉
孫二娘 跷脚牛肉

さらに、「日本人はサーロインのような霜降り肉が好みのようですが、赤身のおいしさもあります。そんなおいしさを、料理を通して知ってほしいと思ったんですよね」。

実際、牛肉のおいしさには本当に驚きました。これも「跷脚牛肉」、「潮汕牛肉火鍋」の出店経験があったことで、より牛肉のおいしさに追及できたのではないでしょうか。

孫さんにインタビューをしている最中、頻繁に口にしていたのが、「お客様第一」という言葉でした。日本に住む中国人だけでなく、日本人にもおいしいものを提供したいと思う気持ちが溢れているなと感じました。

※ 記事内の価格は全て税込み。

店舗情報

孫二娘 毋米粥

孫二娘 毋米粥の店内の様子

東京都新宿区高田馬場1-17-15

03-6273-8632

11:00~22:30
無休

Writer
記事を書いてくれた人

伊能 すみ子

プロフィール

代表からのひとこと

この日、ぼくも伊能さんと一緒にこの店に行きました。南洋中華の事情に詳しいアジアンフードディレクターの彼女は「いまお粥が来ている!」と教えてくれたのですが、その理由を次のように話してくれました。

「この数年、都内に飲茶を提供したり、茶餐廳のようなカジュアルな香港カフェスタイルで営業したりする店が増え、南洋中華のお粥も気軽に食べられるようになった。健康志向を意識して具材を工夫した、おしゃれなお粥専門店もにわかに増えている」

確かに、これまでどちらかというと、自分の故郷の味を食べてもらいたいという「ガチ中華」のオーナーが多かった気がしますが、最近は日本人の食の好みに合わせた味を提供しようとしている人が増えていると思います。

そのひとりが孫芳さんです。味坊の梁宝璋さんや陳家私菜の陳龐湧さんが「ガチ中華」の第一世代だとしたら、孫さんは第2世代といえます。その特徴は、先に述べたように、日本人の嗜好に合わせつつ、いまの中国の食のトレンドを意識した新しい料理を日本に持ち込んでいることですが、食彩雲南の牟明輝さんもそうです。

「ガチ中華」はますます多様化しています。自分の好みの味をぜひ見つけていただきたいと思います。

ちなみに高田馬場にある四川カジュアル火鍋店の「賢合庄」も孫さんの店です。

日本人がまだ知らない順徳のご当地“粥しゃぶ”が高田馬場に登場
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