日本唯一の貴州料理店、新小岩「貴州火鍋」のテイクアウトメニュー

中国南西部の貴州省をご存じでしょうか。四川省・雲南省・湖南省に囲まれた高原地帯にあり、18の民族、3800万の人口を抱える多民族な省です。中国内では唐辛子の産地として知られています。

貴州の料理の特徴は、豊富な発酵食材と、強烈にご飯(とお酒)が進む辛い味付け。酸菜、泡菜などの漬物だけではなく、彼らの手にかかれば、唐辛子、米のとぎ汁、トマト、わらびなど様々なものが魅力的な発酵食材に変化します。これらの発酵の技術は、痩せた土地の山間部で暮らす生活の知恵として発展してきたようです。

そんな個性溢れる貴州料理ですが、日本人のみならず、多くの中国人にとってもまだまだディープと言える存在。中国四大(あるいは八大)料理と呼ばれ、中国のどこでも食べられる広東料理や四川料理に比べると、中国内でもお店が少なく、知名度も高くありません。ましてや、日本では……。いえいえ、これがなんと東京でも食べられるのです。

新小岩にある「貴州火鍋」は、おそらく日本で唯一の貴州料理専門店。店主のおふたりは、貴州省の中でも著名な唐辛子の産地である遵義市出身。唐辛子などキーとなる食材は地元・遵義産のものを使っており、正真正銘のガチ貴州人によるガチ貴州料理が味わえます。

遵義の唐辛子は辛さが特徴で、在日貴州人の同郷会が開かれた際には、同じ貴州人から「辛い」という声が聞かれるほど。基本的にどの料理も辛いのですが、辛さは調整してくれますので、辛すぎるのはちょっと……と言う方は「微辣(ウェイラー)」で注文することをお忘れなく。

2021年6月現在、コロナの影響で残念ながらメニューを絞ってテイクアウト中心の営業となっているため、今回はテイクアウトメニューの一部を紹介します。なお多くの写真はイートインの際のものなので、見た目や分量が実物と異なる場合があります。

●藠头拌水豆豉(発酵らっきょうと水豆鼓の和え物)

日本でらっきょうと言えば独特の臭いを抑えた甘酢漬けですが、こちらでは辛味と香りをしっかり生かした和え物にしています。平和な前菜に見えますが、その実最強のご飯泥棒。ねぎ、にんにく、島らっきょう等のあの香りが好きな方は、間違いなくハマります。

●干纳豆回锅肉(干し納豆の回鍋肉)

貴州には日本とは異なる菌で発酵させた干し納豆がありますが、こちらではなんと、日本の市販の納豆をザルにあけて陰干ししたものを使用。旨味が凝縮され、ネチっとした独特の歯応えが生まれます。これまた相当なご飯泥棒で、納豆ご飯の上位互換と呼びたくなるほど。

なお回鍋肉といえば、日本では豚肉とキャベツの味噌炒め、四川では豚肉とにんにくの葉の辛い炒めものですが、本来は「茹でた豚肉をまた鍋に戻して炒めたもの」程度の意味。こちらでは様々な食材の回鍋肉が味わえます。

●辣子鸡(鶏肉の唐辛子煮込み)

同じ名前でも四川と貴州では異なる料理がありますが、これもそのひとつ。四川の辣子鶏は山盛りの唐辛子に埋もれた鶏の唐揚げですが、こちらでは糍粑辣椒(ツーバーラージャオ)と呼ばれる練り唐辛子で、マグマのようにグツグツ煮込んだ煮物。お酒が進む味です。

●蕨菜炒腊肉(わらびと干し肉の炒め)

発酵食材然り、前述の干し納豆然り、貴州では日持ちする保存食材が豊富。こちらは干し蕨と干し肉の炒めものですが、シャキシャキした干し蕨の歯応えに、燻製の香りが効いた干し肉を噛み締めれば、これまたご飯が止まらなくなります。

●怪噜饭(貴州屋台式干し肉チャーハン、ドクダミ入り)

こちらの特色ある食材である干し肉、干し納豆、ドクダミの根とすべてが揃った最強の炒飯。上述の魅力的なおかず群で白飯をたらふく食べた後でも食べたくなってしまう、恐ろしい一品。大人数のコースでも〆に欠かせません。

すでにお気づきの通り、白飯が進む料理ばかりです。一度来てみるとわかるのですが、「どの料理も一口食べるとご飯が食べたくなってしまうけど、あんまりご飯を食べすぎると品数が食べれなくなってしまう」というジレンマに必ず陥ります。

ではどうすればよいのか? それは、食べたくなったら遠慮なく白飯を食べて楽しむと共に、食べ切れなかった料理は、また次回来て食べればよいのです。東東京の方以外はちょっと来づらいかも知れませんが、何度も通いたくなるお店、貴州火鍋でございました。早く店内で宴会できる日が来ることを祈っています。

店舗情報

貴州火鍋 

葛飾区新小岩1-55-1
03-3656-6250

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