家族ぐるみで営む池袋のハートウォーミングなラム肉専門店「羊大厨」

「ガチ中華」の店を訪ねてほのぼのする瞬間があります。

それは昼下がりのランチが終わったころ、客の少なくなったテーブルを使って、夜の営業に備えて従業員の人たちが羊肉を串に刺したり、餃子を包んでいたりする光景が見られることです。

日本の飲食店ではあまりないことですが、中国を訪ねたことのある人なら、町の食堂でよく見られる光景でもあり、微笑ましく感じるのではないでしょうか。

今年5月に西池袋にオープンしたラム肉料理専門店の「羊大厨(ヨウダイチュウ)」は、そんな家庭的な店です。

羊大厨(ヨウダイチュウ)店内
38席ほどの小さなお店

その日も店を訪ねると、厨房に近いテーブルでふたりのご老人が餃子を包んでいました。

この店の餃子ですから、当然ラム肉水餃子です。そのおふたりは、この店のオーナーの伊藤静(楊静)さんのご両親だそうです。

伊藤さんは中国吉林省長春出身で来日30年という方です。ご主人は接骨医をされています。いつか自分の故郷の味を提供する飲食店を出したいと思っていました。それは伊藤さんにとって羊料理の店でした。それが今年実現したのです。

ではラム肉料理三昧のこの店の料理を一部紹介しましょう。

まずラム肉水餃子です。

ラム肉水餃子

包みたてをそのまま茹でて提供されます。豚肉の餃子と違う肉の香りが楽しめます。タレをつけなくても美味しいですが、この特製ピリ辛ダレはぜひ試してください。

前菜として選んだのは、ラム肉盛り合わせ(羊撕、羊肝、羊ハチノス、羊心)。

ラム肉盛り合わせ(羊撕、羊肝、羊ハチノス、羊心)

部位によって味がさまざまです。なかでも羊肝はレバーの塩茹でで濃厚な食感。「羊撕」というのは、茹でたラム肉を千切ったものです。「羊心」は心臓という稀少な部位で、脂肪が少なくコリコリ、サクサクした歯応えがあります。ハチノスも白酒のような強い酒が合いそうです。

麻辣羊棒骨鍋(ラムのゲンコツ醤油煮)はこの店の名物といっていいでしょう。

麻辣羊棒骨鍋(ラムのゲンコツ醤油煮)

太くて大きな骨付き肉を手でつかんで齧りつきます。お店では手が汚れないようビニール手袋を用意してくれます。軽いピリ辛味で、食欲が沸いてきます。

ラム肉の辛み和え(拌羊雑)は醤油味です。タレを付けても付けなくてもかまいません。味はしっかり付いています。

ラム肉の辛み和え(拌羊雑)

ラム肉のスペアリブ醤油煮込み(麻辣羊排)も骨付きで、齧りついて食べましょう。パリパリの香ばしい皮と脂身が同時に楽しめます。ほかにもスペアリブの塩茹でもあります。

ラム肉のスペアリブ醤油煮込み(麻辣羊排)

炒め物もあります。

これはラム肉のクミン炒め(孜然羊肉)。中華のラム肉料理の定番中の定番です。ピリ辛味ですが、クミンの香りが口の中でスッとしてほろ苦さがあり、肉のうまみと相まって食欲をそそります。

ラム肉のクミン炒め(孜然羊肉)

ラム肉と長ネギ炒め(葱爆羊肉)も定番のひとつで、ネギとラム肉を塩味で炒めるシンプルな味わいです。ラムの脂とネギはよく合いますね。

ラム肉と長ネギ炒め(葱爆羊肉)

ラム肉スープ(羊肉湯)はラム好きにはたまらない味です。ホルモン入りの羊雑湯もあり、意外とこちらが好みの人も多いのではないでしょうか。

ラム肉スープ(羊肉湯)

これは事前予約の必要がありますが、羊の頭の煮込み(羊頭)も提供できるそうです。魚の頭と違って日本人には慣れていないグロテスクな見た目ですが、一度体験してみたいものです。

羊の頭の煮込み(羊頭)の看板

最近、日本人の間で人気となっている中華ハンバーガーの肉夾(ロージャーモー)もあります。

中華ハンバーガーの肉夾饃(ロージャーモー)

陝西省西安名物の小吃で、饃 (モー)という小麦粉のパンに煮込んだ羊肉や野菜をはさんで食べます。この店の煮込み羊肉は一つひとつが大ぶりで食べがいがあります。ボリュームたっぷりなので、一食分はあるほどです。

伊藤さんによると、自家製酸梅湯もおすすめだそうです。夏の暑い季節にはほどよい酸味と薬膳素材も採り入れた健康飲料ですね。

薬膳素材も採り入れた健康飲料 自家製酸梅湯

この店の注文は基本QRコードを使いますが、紙のメニューもあって、そこから頼むこともできます。

ラム肉専門店なので、ラムのどの部位をどう調理するかで料理が決まります。その点、他の「ガチ中華」の店に比べればわかりやすいのではないでしょうか。

ランチも充実しています。「ガチ中華はランチから」と言われますが、スープや麺、炒めものなど、これまで紹介した料理がランチで気軽に食べられます。

羊大厨ランチメニュー

最後にその日、店にいた伊藤さんと息子の候墨恩(4歳)くん、そしてご両親を記念撮影しました。ご両親はふだん息子さんの面倒を見ているのでしょうか。でも、こうして店にも手伝いにいらっしゃるのですね。

店にいた伊藤さんと息子の候墨恩(4歳)くん、そしてご両親の記念撮影

伊藤さんは話します。「最近、東京にたくさん羊料理の店ができましたが、やはり味の好みが自分に合うとは限りません。だったら、自分の好きな料理を自分でつくった方が美味しいに決まっています。

子供連れで外食するのは大変ですが、うちはお子さんを連れていらっしゃってほしいです。お子さんでも食べられる優しい味にしています。特にうちのスープはおすすめです」

ちなみに厨房にいるのは、伊藤さんと同じ中国東北地方の遼寧省瀋陽出身の張国志さんです。

実は9月にこの店の2号店を西川口にオープンする予定だそうです。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

羊大厨

羊大厨外観

豊島区西池袋1-37-15 4F
050-5600-5144

定休日:月曜日
営業時間
【平日】
ランチ 11:00~15:00(L.O14:30)
ディナー 17:00~23:00(L.O22:30)
【土日祝】
11:00~23:00(L.O22:30)

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