呷飽沒?
こんにちは、中原美波です。
今回は“呷飽沒?”(ジャッパーボエ)=もうご飯食べた?
という、台湾では挨拶代わりともなっていたという一言でスタート。
というのも、今回取材に伺ったのは台湾料理のお店が、その名も「Taiwan Bee」さん! ちなみにBeeというのは「味」を台湾語で発音したときに「ビー」という音が近いことに由来して付けられた名前だとか。まさに台湾ならではの味を楽しめるお店です。
東京メトロ銀座線末広町駅、あるいは千代田線湯島駅から徒歩5分ほど、JR山手線御徒町駅から徒歩10分ほどの裏路地にひっそりと位置するこのお店。2022年にオープンしたばかりで、ガラス張りと色鮮やかな看板や飾りが目印です。 特徴的なのは、「COLON HOTEL」というホテルの一階部分にお店を構えていること。実はこのホテルとお店のオーナーは同じ台湾人の方だそうです。そのため店内レジの壁にはホテルのサインと、よく見ると店内で使われるグラスにもホテルのロゴがあしらわれています。
さらに特徴的なのは、こちらのお店は台湾料理といっても、特に台南料理を提供していること。
というのも店長は台南出身の方だからなんです。
コロナ禍にオーナーと出会い、「Taiwan Bee」の店長を務めることになったのは、台南出身の方榮峯さん(写真右)。方さんは台南出身ながら、台北で調理師学校の先生をやっていたという凄い経歴の持ち主です。また、こちらで働くアルバイトの吳効輯さん(写真左)は台北出身の方で、昨年来日し、現在勉強中という日本語は既にとても流暢でこれまた凄い。まさに台湾の方々で営まれているお店です。
お二人によると、台北と台南とでは料理も異なってくるといいます。あとでも詳しくお伝えしますが、一般的に台南料理は甘い味付けのものが多いそう。また、日本のものよりも味付けも薄めなのだとか。
台北旅行に行ったことがある私ですが、台中や台南はまだ訪れたことがありません。そのため台北で食べたものこそが「台湾料理」として一括りにイメージしてしまいがちですが、やはり蓋を開けてみれば地域によって全く異なる、というのは、これまでのガチ中華の取材を通じて学んできてきたことですし、台湾料理もまた同じ。奥が深いです。また、料理だけでなく夜市の雰囲気も違うのだとか。台南は広場等で行われることが多く、よりレトロな雰囲気が漂うのだといいます。
店内はカウンター席に加えて広々としたテーブル席も用意されています。
台湾らしい花柄のテーブルクロスが華やかな、開放的で明るい店内です。また店内BGMにはお馴染みの周杰倫さんの曲など、どこをとってもワクワクするような空間になっています。
そしてこちらのお店、台湾の方々が慣れ親しんだ料理と空間を求めて訪れるだけでなく、平日昼間には日本人含めオフィスワーカーの方も多く来店するそうです。そのためランチメニューもセットメニュー含め豊富なラインナップ。特に人気なのは麺料理。温暖な気候風土と様々な国や民族の影響を受けて形成された台湾料理は、こってりすぎない風味が特徴的で、仕事の合間のランチでも、さらりと食べられてぴったり。
夜のメニューは以下のラインナップ。ほぼ全てのメニューがカラー写真付きなので、初めてでもイメージしやすいです。おやつを意味する“小吃”から、ご飯や麺などの主食、なんと鍋まで取り揃えています。
まずは早速台湾らしいお酒をオーダーし、飲み比べてみることに。
缶ビールはオーダーすると缶ではなくキンキンに冷えたジョッキで提供されます。特別に用意していただいた缶を並べると中々の迫力! 実は私、まだまだお子様で、ビールの味が苦手なのですが(笑)、このフルーツビールは果汁入りで、それぞれのフルーツの味がしっかりしながらもとても爽やかで、美味しくいただけました。いずれもアルコール度数は3%前後。パッケージも可愛いです。
フルーティーなお酒で乾杯したあと、方さん吳さんおすすめのものと各々食べたいものを注文し、毎度恒例になりつつある胃袋チームの爆食いが始まります(笑)
台湾風サテソースクレープ
まずはじめはおすすめメニューから。
朝ご飯としても食べられる台湾式のクレープ、蛋餅に沙茶醬(サーチャージャン)を加えたもの。魚介類やピーナッツなどをベースにした沙茶醬は鍋のつけだれとして食べたりと、日常的に食べる機会がある台湾では欠かせない調味料だそうです。
この沙茶醬がカリカリもちもちのほんのり甘みを感じられる生地と相性抜群。沙茶醬のベースとなる魚介の塩味もガッツリ感じられるのでお酒にも合います。
私は昨年台湾旅行に行った際、朝ご飯でこのクレープのプレーンタイプのものを食べましたが、沙茶醬が入ったものは初めて。これまたアクセントがあって美味しいです。メジャーな料理だからこそ、それぞれのお店の特徴が表れていて面白いですね。
台湾式ソーセージ
お次も台湾料理の代表格の一つ。日本で食べるソーセージと同じく、とってもジューシーな香り。しかし食べてみると風味が日本のものとは違く、ほんのり甘みがあります。
というのも、こちらのソーセージは砂糖を使用しているそうです。温暖な気候が特徴的な台南は、サトウキビの名産地ということで、台南料理には砂糖が使用されることが多いと方さんはいいます。パッと見ると同じ料理も、食べてみるとその気候風土が表れていて興味深いです。豚肉の脂の甘さと砂糖の甘さとで、肉々しさに加えてマイルドさもあり、プリプリ食感もまた病みつきの一品。
イカ団子
こちらもおすすめしていただいた料理。そしてお気付きでしょうか…?
なんとプレートが台湾の形!さりげないデザインが可愛らしいです。一口大のこちらはイカだけでなく、魚などのすり身を揚げたもので、もちもちで食べ応えもバッチリ。味付けには五香粉と胡椒が使用されています。
五香粉もまた台湾料理では欠かせないスパイス。組み合わせは様々ですが、一般的に花椒やシナモン、陳皮など5種のスパイスを組み合わせた本格的なスパイスです。この味付けが、なんとも表現し難い「あ、あの台湾の味がする…」と直感的に感じる際の理由の一つかも。
台湾式魚の練り物
エリンギのような見た目のこちらはなんとメカジキを使用した練り物。食感はちくわが近いでしょうか、ねっとりもっちり感があり、噛めば噛むほど魚の旨味と甘みが感じられます。トッピングのスパイスの細かいスパイシーさと塩胡椒の塩味がちょうどいいバランスです。
台湾ジーパイ(ジャンボフライドチキン)
こちらは今や日本人にも大人気の台湾式唐揚げ、ジーパイ(鷄排)。食べ歩きフードとして若い世代にも人気で、都内のキッチンカー等でも販売されているのを最近よく見かける気がします。珍しいのは、こちらは食べやすい大きさにカットされていること。店内でシェアして食べるには最適で、お客さん思いの優しさが感じられます。
また、こちらのお店ではほんの少し日本人にも好んで食べてもらえるような工夫がなされています。
まず鶏肉は日本人が好むという鶏むね肉を使用。台湾では鶏もも肉の方がメジャーなのだとか。また、カリカリでおこげのような香ばしさの衣も、生姜、にんにく、ごま油等で味付けされており、味に癖がなく食べやすくなっています。しかしながら香りには台湾独特な花椒の香りもしっかり残っていますよ!
ここまで料理が運ばれてきてふと感じていたのですが、テーブルの上はまさに、台湾の夜市を歩いている時のような空気…。道の両サイドから香ってくる、屋台料理の食欲が掻き立てられる匂いとあの温かさ。旅行の時に感じた空気感がよみがえって、なんだか懐かしい気持ちになりました。
ミニ台湾ハンバーガー
手のひらサイズの可愛らしい見た目の台湾式ハンバーガー。もちもちでぎっしり感ある白いバンズの中には、煮込んだ豚肉ときゅうりがサンドされています。台湾ではパクチーを乗せるのが主流ですが、こちらは日本人でも、パクチー嫌いの方でも楽しめるよう、きゅうりのトッピングにしてあるそうです。
下の方にほのかに見える黄色いものはピーナッツの粉。たっぷりと塗られていて、ピーナッツの甘い風味がしっかりします。お肉はジューシーですが、後味は甘いので、おやつのような感覚で食べられます。ちなみにこのバーガーも台南と台北とは特徴が異なってくるそうです。やはり台南の方が甘みがあるのでしょうか?
スペシャルフライド台湾餅
こちらは方さんのご厚意でサービスしてくださったスイーツ!なんと方さん考案のオリジナルデザートなんです。ミルクと小麦粉を使用した生地は、外はサクッと、中はとろーっとクリーミーで柔らかいお餅のよう。この食感を存分に感じられるよう熱々のうちにいただくのがポイントです。たっぷりトッピングされたゴマ、きな粉、マイルドな甘味の生地の相性がよく、甘すぎずペロリと軽く食べられちゃいます。台湾料理はデザートまで優しい風味でほっこりした気持ちになれますね。
台湾風ワンタン
こちらは我らが胃袋チームの谷井さん傳さんが台湾風のワンタンとは? 気になる! とセレクトした一品。
見た目は真っ赤、香りもスパイシーで遂にここにきて激辛か?! と一瞬身構えた私たちですが、見た目より辛くありませんでした。確かに胡椒や唐辛子のようなヒリヒリ感はあるのですが、赤いタレからは旨みも感じられます。
というのもこちらは、8種類ほどの漢方、ネギ、ニンニク、生姜、何種類もの油などなど……とにかくたくさんの具材をブレンドしたこだわりたっぷりの味付けなんだそうです。辛みだけでなく、一言では表せない奥深い味わいはまさにお店でしか食べられない味。手作りのもちもちの皮とぎっしりと詰まったほんのり甘みを感じられる餡もまた、市販のワンタンとは一味も二味も違います!
こだわりたっぷり、旨みたっぷり、小ぶりながら食べ応えも抜群でお腹も心も満たされます。
鍋焼き意麺(イーメェン)
こちらは今まで見たことがなく、気になって仕方がない!ということで、私セレクトでオーダーした一品。
意麵とは、見た目も少し茶色みがかっていますが、実は卵でできた揚げ麺だそう。卵好きは必見です。
また“鍋焼き”という名にふさわしく、まるで鍋のように、麺の他にも具材がどっさり入っています。
イカ団子、麺料理ではメジャーなトッピングの魚のツミレや肉団子、ほんのり甘くて台湾風味のタコさんウインナー、揚げワンタン…これでもかと台湾らしい具材が入っており、みんなでシェアして食べても楽しいです。
スープ表面に浮かんでいる茶色いものは、先ほど紹介した沙茶醬。これらを豪快に混ぜてからいただきます!
と言いたいところでしたが、あまりに具沢山でこぼれるのが怖く、私はそろーり混ぜました(笑)
いただいてみると、麺の後味は確かに卵の黄身っぽい!
食感もつるつる、というよりかはざらざらして歯切れが良い感じ。中太麺かつ揚げてあるので腹持ちも良さそう。スープは後味あっさりのこれまで飲んだことのない風味。実はこれまた手が混んでいて、豚骨や鶏の皮、セロリやキャベツ、玉ねぎなど様々な食材をベースに作られたもの。肉類から出る出汁だけでなく、野菜も使われているからか、味わい深くも後には引かない飲みやすいスープで、たくさん飲んでしまいそう。私には麺も具材もスープも、全てにおいてタイプでした。リピート確実です。
肉絲チャーハン
ここまで食べておいて、「やっぱお米は食べたいよねー」と胃袋チーム。ラストに畳み掛けるようにオーダーしたのがこちら。
青椒肉絲などで見かける「肉絲」とチャーハンとの組み合わせを見つけたのは初めて。よく見ると、確かにあの細い棒状のお肉がふんだんに盛り込まれています。
チャーハンの味付け自体はやはり台湾らしく胡椒の風味がよく利いていますが、味は濃すぎず、日本人も大好きなチャーハンの味。お米もパラパラしつつもおこげのようなところもあり、やっぱりチャーハンっていいなあと。こちらもボリューミーなのでみんなでシェアしても良さそう。お昼の時間帯もいただけるメニューなので、ガッツリめのランチにもどうぞ。
あとからお聞きしましたが、アルバイトの吳さんはルーローファンがお好きなのだとか。頼めばよかったぁ…。次回食べてみたいと思います。 と、ここでさすがにお腹が満たされました。
これぞやはり台湾料理、後に引く脂の重さやしょっぱさなどがなく、本当に優しく食べやすい味付けが多かったことを体感しました。とりわけ今回の取材で学べたこととして、台南料理の魅力は豊かな美味しさにあるということ!
この豊かさには複数の意味が含まれるかな、と私なりに考えます。
まず、温暖な気候夜や海に囲まれた豊かな環境からの恵みの豊かさ。サトウキビ由来の優しい甘さの味付けや、魚介類などの具材や調味料と、台南ならではの環境こそが、食事そのもののバラエティの豊かさを生んでいることがわかりました。
そしてもう一つ、料理に現れた台南の方々の人柄の穏やかさから生まれる豊かさ。後味さっぱり、でも味わい深い、そんな心に染みる優しい味付けは、方さんの手料理からたっぷりと感じられます。今回は数々の料理を通じて、そんな豊かさが詰まった台南の魅力を味わうことができました。
なおTaiwan BeeさんはInstagram、X、facebook等を通じた情報発信も行っています。ぜひ覗いてみてください♪
最後に、今回も大活躍のお二人の感想をどうぞ。
~谷井朱花さん感想~
かなり日本でもメジャーになりつつある台湾料理! ジーパイも魯肉飯も街中でよく見かけますが、私はタイワンビーさんを訪れるまで意外と食べたことがなかったんです。初台湾料理でした!
店内のどの料理も日本人向けに味付けされており、とっても食べやすかったです。
特にジーパイは、日本人向けに味付けや鶏肉の種類を変えているのだとか。皆さんがイメージする顔くらいの大きさのジーパイをカットして提供してくださるので、おつまみにもお連れの方とシェアをして食べるのにもおすすめです。
私のお気に入りは台湾式ソーセージ! 豚肉の脂がとっても甘くて癖になりました。飲み物は台湾ビールを頼んだのですが、それともよく合いますよ。
おつまみのメニューもガッツリお食事のメニューも両方あるのがこのお店のポイント‼ 店内も台湾を感じられる置き物やガイドブックがたくさん置いてありました。東京で食べやすい台湾料理を探している方にぜひ訪れていただきたいです〜‼
~傳あおいさん感想~
今回お邪魔したタイワンビーさんは個人的にすごくビールが進んじゃうお店でした!
大皿で量が多いイメージがありましたが、こちらの一品料理は比較的少量でおつまみに最適! 果物フレーバーの飲みやすい台湾ビールも種類豊富にあり、ビールの苦味が苦手な方でもとても飲みやすいと思います。
台湾料理と言ったら誰もが最初に思い浮かべるであろうジーパイは、食べやすい大きさにカットされており、サクサクな衣と味がしっかりついたお肉で安定の美味しさでした。
私のお気に入りは台湾風サテソースクレープです! 台湾ではお馴染みの沙茶醬が台湾朝食としてメジャーなダンピンに入っていて、卵の甘みと沙茶醬の旨みが絶妙なバランスでした。個人的には朝ごはんというよりも夜食に食べたくなりました。日本人でも食べやすい味付けで、ランチメニューも充実してるので日常的に行きたくなるお店でした!
(中原美波)
店舗情報
Taiwan Bee
千代田区外神田6-10-3
03-6384-4606
https://www.instagram.com/taiwanbeetokyo/
Writer
記事を書いてくれた人
中原 美波
代表からのひとこと
Taiwan Beeとぼくの出会いはSNSのグループの方のコメントから始まりました。
以前、「台南のエビ飯(蝦仁飯)が食べられる店は東京にないかなあ」とTDCのFacebookにつぶやいたところ、鈴木文子さんが「御徒町のTaiwan Beeのメニューにありましたよ」とコメントくださったので、いつか訪ねてみようと思い、ある日上野に行く用があったので、足を運んでみました。
ところが、最近メニュー改訂し、エビ飯は出さなくなってしまったそうで、代わりの新メニューとして台南名物の「意麺」があるというので、注文しました。
台南の小吃を食べ歩いたことがあるぼくですが、意麺は食べたことがありませんでした。いわゆるタマゴ麺を揚げた独特の食感のある麺で、淡いスープに練り物がたくさん入っていました。優しい味ですね。
その話をFacebookに投稿し、「意麺は台湾風なべ焼きうどんみたいな説明がよくありますね」とコメントしたところ、事情通のおふたりがいろいろ教えてくれました。
北村雅之さん
「これは鍋焼意麺というジャンルのもので、揚げてサクサクにした意麺をちゃんぽんのようなスープに入れて食べるものですね。
台南にある一般的な意麺とは少し違います。意麺自体、インスタントのように1回揚げて保存性を上げてる麺ですが、鍋焼意麺の麺は、皿うどんの麺みたいにもっと揚げてあります」
なるほど、地域によって違うんですね。
鈴木文子さん(Taiwan Beeを教えてくれた方)
「台南で私が行く店は鰹出汁というか、ザ!どん兵衛なんです。
でもすごく好きで汗をダラダラかきながら啜ってます。店によって出汁の味は違いますね。
ちなみに田鰻入の野菜あんかけ、甘酸っぱいタレなのですが田鰻乾意麺というのがあって、もちもちの揚げ麺に餡が絡んでこれまた美味しいです」
具材もいろいろあるんですね。みなさん、ありがとうございました。
このようにTDCのSNSでは、知りたいことがあったら、投稿で質問してみると、ほぼ必ず今回のように、事情通の方が現れ、詳しく教えてくれます。すばらしいですね!
どうぞみなさんも、どしどし質問してください。どなたかがきっと教えてくれるはずです。