こんにちは! 今日は中国語勉強仲間4人で新竹に行くことになりました。
あ、台湾の新竹ではなく、御徒町にある台湾料理店の「新竹」です。台湾料理を希望したメンバーより、この店を選びました。ここは台湾料理の中でも「客家(はっか)料理」というジャンルの料理を提供しています。
「客家」とは、中国の明朝末期から、清朝時代初期(明朝が清朝に変わったのは1644年)に福建省や広東省から移住してきた人々のことです。台湾人口の約 20%(2022 年現在)で、その多くは台湾の北西部の新竹県やその隣の苗栗(ミャオリー)県に住んでいます。独自の言語も持っており、台湾で台湾鐡道に乗ると、車内アナウンスには中国語、台湾語の次に客家語が流れます。

店内は円卓が5つ。レストランですが、円卓が木製だったり、照明の感じから、ちょっと家庭的な雰囲気もあります。

店長の平林さんは新竹出身。客家人で新竹出身の父、同じく客家人で苗栗出身の母の間に生まれ、祖母は日本人だそうです。平林さんが8歳の時に家族で来日、元から料理が好きな平林さんの母が1990年に新竹を開店、1992年に今のお店に移転、2000年に平林さんが店を継いで現在に至ります。
ではまず乾杯しましょう。メンバーの男性2人は台湾ビール、私ともう一人の女性は仙草ジュースにしました。

この台湾ビールはよく見たら「金牌(ゴールドモデル)」の方です。モンドセレクション金賞を受賞しているとのことです。試飲しなかったので普通の台湾ビールとの違いは判らないのですが、これもすごいあっさりしているとのことです。
あっさりしているので、油を使った炒め物をはじめ、どんな料理にも合うと男性それぞれが言っていました。仙草とはシソ科の植物で、乾燥させた草や茎を煮出して冷やすと黒いゼリー状になります。そのままでも食べられなくはないですが、やや苦いので、砂糖や蜂蜜などで甘味をつけて食べたり、ジュースにして飲んだりします。台湾では一般的な食べ物で、暑い夏や、台湾人の友達は「二日酔いにいい」と教えてくれました。
最初は蒜泥白肉 (ゆで豚肉の酢にんにくたれ付け)と香腸(台湾ソーセージ)をオーダー。
蒜泥白肉は茹でた厚切りの豚肉にさっぱりとした酢にんにくをかけて食べるのですが、肉の茹で具合もちょうどよくて、たれでさっぱりと食べつつも、刻みニンニクが時々ガツンと来るコントラストがたまりません。台湾では醤油ベースの甘いたれが主流だそうですが、このたれは平林さんの母のレシピだそうです。
香腸は私が台湾の南の町、台南で食べた時より甘さ控えめでした。メンバーの一人は「これでも甘くないんですか?」と言っていましたが、台湾は北の方が味がしょっぱめ(濃い)で南の方に行くと甘い味つけになっていきます。少し甘いソーセージ食べるだけで異国文化の世界に入っていますね。
続いて番茄炒蛋(トマト卵炒め)が来ました。

見た目が普段見たことのある、トマトの赤っぽい炒蛋ではなく、茶色系の色なのでびっくりしました。この料理は少し甘いイメージがありますが、少し塩味があり、醤油ベースで味つけしているとのことです。1口サイズの卵やネギが大きくて、大数人で分けて食べても満足感があります。
そして初めて「客家」とつく客家豆腐(豆腐の黒豆炒め)が到着。

存在感のある大きな豆腐に干し海老に刻みニンニク、と野菜がトロトロの餡と絡んでいます。こちらも醤油ベースと塩胡椒の味付け。このまま白飯にもかけたい1品です。
そして、私ともう一人の女性メンバーが楽しみにしていた、客家小炒(するめとセロリの炒め)です!

客家地域の代表的な料理です。私がこの料理を知ったのは実は日本で、千葉県市川市行徳(ぎょうとく)に「台徳林(タイトクリン)」という台湾料理店があり、そこでイカセロリ炒めを初めて食べ、「イカとセロリの組み合わせはなんて合うんだ!と思い、半額のイカとセロリを手に入れては自宅でも作るくらいに好きになりました。
残念ながらコロナ禍の経営難により閉店してしまい、他で食べられるところを探していたところでした。
食べてみると、料理に入っているイカは小さくても味の存在感と歯ごたえがしっかりあります。それに臭味なくシャキシャキする大き目に切ったセロリの食感が良いです。肉や干し椎茸、人参やネギも入って、栄養満点の料理です。
ここまでの料理に、ある共通点が見つかりました。醤油ベースで味が濃いめ。トマト卵以外には、干し海老や刻みニンニクやネギがよく使われています。
平林さんが客家料理について説明してくださいました。
客家料理は、ニンニク、ネギ、生姜など身近にある食材で作られている家庭料理です。当時貧しい民族で、1品でお腹いっぱいになれるように濃いめの味つけになったのだと言います。
海鮮は使わず、肉は豚肉が多いそうです。でも干し海老は海鮮ですよね?と聞くと、客家人は昔、迫害を受けて山岳地帯に住んでおり、海鮮を獲るのは困難なため、干した海老やするめを保存食や神様にお供えするのに利用、その供え終えたものも調理していたことから干しエビやするめが使われるようになったそうです。
台湾料理は味がそんなに濃くないと言われますが、昔は割と濃かったとのこと。近年の健康志向によって台湾全体の味つけも変化してきたそうです。私も客家料理ほど味の濃いものは台湾ではほとんど食べたことがなかったので、このような歴史や料理を知って驚きました。
後半は水餃子を注文しました。

6 個入りなのですが「2個足して8個にしますか?」と店員さんが気遣ってくださり、8個入りにしました。醤油と酢、ニンニク、胡麻油等の自家製のさっぱりめのたれで頂き、厚くてプリプリの水餃子によく合い、食欲も増します。
主食には新竹と言ったらやっぱりビーフンということで、ビーフンと、牛肉麺は品切れだったので、客家丼を注文しました。客家丼は貴重なメニューということが後からわかり、牛肉麺が品切れで残念でしたが、これが食べられたことはとても価値があることでした。

ビーフンは干しエビ、干ししいたけ、野菜を合わせて炒めてあり、香ばしさがありました。油の量が絶妙なので、しっとりではなく、ふわっと盛り付けてあるのが印象的でした。
そして客家丼です。この具の黒さにびっくりしました!

なんでも、8年干した高菜をひき肉と煮込むとこのように黒くなるんだそうです。8年?!
その干した高菜を壺から見せてくださいました。

見た目も触った感じもまるで麻のようです。平林さんはこの高菜を実家の農家から送ってもらうか、帰省した時に運んでくるそうです。客家丼も現地で食べられているのかと聞くと、これは平林さんの母考案の料理だそう!なかなか食べられない貴重な代物です。
醤油ベースでよく煮込まれた高菜とひき肉はご飯にもたれが染みて、ご飯一緒に食べるのにとても良い味つけでした。お腹がすいてこれだけ注文していたら、かきこんでいたことでしょう。
デザートには愛玉(オーギョーチ)と杏仁プリンをいただきました。

2人分注文しましたが、量もあったので4人で分けることができました。愛玉は台湾の夜市屋台でよく売られています。シロップに入っていてのど越し良く、さっぱりして食後にぴったりです。
今回、時間が経つのはあっという間だったのですが、家庭的な雰囲気の店内で、食べる部分だけ切り取ると、ゆっくり食べることができました。
実は追加取材をした日、ちまきと大根餅を食べてきました。
ちまきも客家式で、中に角煮、干しエビ、干ししいたけ、切り干し大根が入っています。
もち米も具材もしっかり醤油と出汁の味がきいていて、一口目から笑顔になります。ちまきは大きくないので、小さい干しエビでも食感に存在感があるのもいいですね。

今回、店長の平林さんに質問すると、本当に親切に色々なことを教えてくださり、その笑顔もとても印象的でした! ありがとうございます。

客家料理をメインに出す台湾料理店は本当に貴重なので、ずっと続いていてほしいです。この家庭的な雰囲気の中で、ぜひ皆さんも台湾料理を食べに行ってほしいと思います。
(aokinapple)
店舗情報
台湾客家料理 新竹

台東区台東3-14-9
Writer
記事を書いてくれた人
