北京風居酒屋をイメージした御徒町JRガード下の個性的な「ガチ中華」の名店、「老酒舗」の魅力的なメニュー解説、その後編です。
前編では、居酒屋のつまみ系にあたる小皿料理を中心に「涼菜(冷菜)」や「小吃(軽食や点心、水餃子など)」、気候の寒い中国北方で主に食べられている「炖菜(煮込み・鍋)」のメニューを紹介しました。
ファン必読!御徒町「老酒舗」の酒飲みメニューを徹底解説【前編】
「味坊」ファンの間でも、特に酒飲みの人たちに愛好されているのが、御徒町の北京風居酒屋「老酒舗(ろうしゅほ)」です。この店の特徴は、とにかく小皿料理のメニューの種類が多いこと。そこで、数あるメニューをなるべくたくさん写真付きで紹介しようというこの企画。その前編です。
今回はしっかり食事にもなる、中華の定番「炒菜(炒め物)」や「炸菜(揚げ物)」、しめの「麺」や「甜点(デザート)」、そしてお酒の話をしましょう。
ではまず「炒菜(炒め物)」から。
炒菜(炒め物)
羊筋炒土豆(ラムスジとジャガイモ炒め)
羊料理の「味坊」グループらしく、炒め物にも羊がよく使われます。これは新鮮な羊の筋肉とジャガイモを中華ミソ風味で炒めたものです。筋肉のコリコリとジャガイモのホクホクという異なる食感の合わせ技が新食感です。
ラムレバーのトウガラシ炒め
いったん揚げたラムレバーをタマネギやピーマンなどと炒めたものです。豚や鶏肉のレバーとも異なる羊肉のラムが口の中で溶けていきます。
猪肉炒酸青菜(豚肉と発酵小松菜炒め)
細切りした豚肉を発酵させた小松菜などとピリ辛に炒めた料理です。あとで説明する白酒など強めの酒に合うつまみです。
魚香肉絲(豚肉細切りの甘酢炒め)
読みは「ユィシャンロウスー」で、もともと四川料理。細切りした豚肉やニンジン、タマネギ、キクラゲなどを発酵トウガラシの泡椒やトウバンジャンで炒めたもの。甘酸っぱい辛さが特徴です。お酒もそうですが、ご飯にも合うので、よくガチ中華の店でランチメニューになっています。
尖椒煎鶏蛋(青トウガラシ入りタマゴ焼き)
この店のタマゴ焼きには、青唐辛子がちょっぴり入っていて、ふんわりまろやかなタマゴの焼き味に、それほど強くはありませんが、ガツンとした青トウガラシが加わります。このガツンが酒飲みにはたまりません。
以下、写真はありませんが、前回紹介した酸菜白肉鍋(発酵白菜土鍋煮)の炒め物である「発酵白菜と豚肉炒め」(これはこの店の人気メニューのひとつ)や「牛肉と発酵大根炒め」「大豆と青菜漬け物炒め」などがあります。それぞれ肉と野菜の素材の組み合わせが絶妙です。
また、「松仁玉米(松の実とトウモロコシ炒め)」のような、東北料理としては定番のメニューもあります。この地方ではトウモロコシをよく食べるんです。
次は「炸菜(揚げ物)」です。ビールに合いますね。
炸菜(揚げ物)
签羊肉(マトンの串揚げ)
羊の串焼きは、老酒舗のすぐ近くにある羊料理に特化した味坊グループの「羊香味坊」では食べられますが、この店にはなくて、この羊肉の串揚げになります。
中華風ジャガイモコロッケ
ひと口サイズのジャガイモを揚げたものです。
羊肉土豆餅(ラム肉コロッケ)
羊肉入りのジャガイモコロッケ。
ラム肉揚げ餃子
羊肉入りの揚げ餃子。
実はこのふたつは、前回も書きましたが、秋葉原の香福味坊が最近オープンしたばかりで、どうしてもそちらに点心類を供給しないといけないため、老酒舗まで回ってこないことがあるそうです。
また「香酥羊排(羊スペアリブ揚げ)」や「油淋猪排(中華風カツレツ)」もあります。カツレツを中華風にするとこんな感じになるというのがわかります。
さて、しめの料理といえば「麺」。
麺
自家製油泼裤带麺(ピリ辛油掛けビャンビャン麺)
いまや都内各地で食べられるようになった、幅広小麦油かけ麺の老酒舗風ビャンビャン麺。
麻辣牛肉麺(麻辣牛肉入り自家製拉麺)
台湾でもよくある、牛肉入りもっちり小麦麺の麻辣風味。心地よい辛さとシビれるスープが食欲をあおります。
炒嗎麺(漬け物炒めの混ぜそば)
炒めそばとあるものの、酸味の利いたスープも入っている混ぜそばです。油っこい料理をたくさん食べた後は、この酸味が美味しく感じます。
あと小麦麺の代わりに米粉入りの「麻辣牛肉米粉」や「老酒舗焼きそば」もあります。
老酒舗ではデザートもなかなか楽しめます。
甜点(デザート)
老舗麻球(ゴマ団子)
なかなか大ぶりな3個入りゴマ団子。
椰子年糕(広東式ココナッツ餅)
ねっとり甘くてココナッツミルクの風味が香る餅菓子です。
月餅
味坊さんのオリジナル月餅は種類もいろいろ。珍しいところで、ラム肉とナッツをあんにした「羊味果仁」という月餅もあります。
さて、料理の話ばかりしましたが、ここは居酒屋です。最後にお酒の話をしましょう。
お酒
これがお酒の定番メニューです。
まず1時間飲み放題で1100円というお手頃価格で人気の「甕出し紹興酒」。何杯でもお代わりできます。
そして、北京風居酒屋である以上、中国の代表的な蒸留酒である「白酒」は欠かせません。
白酒(バイジゥ)
中華で飲むお酒と言えば紹興酒と思いがちですが、実は中国で最も広く飲まれているのは「白酒(バイジゥ)」です。特に中国北方の人たちがよく飲みます。
高粱(コーリャン)やトウモロコシ、キビ、米、麦などの多彩な原料から造られ、色が透明なので白酒と呼ばれます。一般にアルコール度数は30~60度と高いのですが、長期熟成させるため、口当たりはまろやかで、ガチ中華に合うのです。
なぜガチ中華には白酒が合うのか? 中華料理に多い油分を白酒の強い香りとアルコールが洗い流し、後味をさっぱりさせてくれること。ガチ中華を代表する四川料理や東北料理などは味が濃く、香辛料を多く使うため、白酒でないと料理に押されてしまうからです。
つまり、老酒舗で試してみるべきは白酒だったりするのです(強い酒なので、酒飲みの方にしかすすめませんけれど)。
この店のメニューにある白酒を紹介しましょう。
孔府家酒(こうふかしゅ) アルコール39度
孔子の誕生の地、山東省曲阜で製造された白酒で、明、清時代には宮廷への貢ぎ物として献上されていたそうです。茶壺入りがいいですね。
老龍口(ラオロンコウ) 42度
老龍口は清代の1662年(康熙元年)創業で、オーナーの梁さんの出身地である中国東北地方を代表する白酒です。
ここから先は写真がありませんが、簡単に紹介します。
紅高粱(ガオリャンジゥ) 40度
大衆版カップ白酒です。
瀘州老窖(ろしゅうろうこう) 52度
四川省が誇る白酒で、甘く爽やかな味わいと芳醇な香りが口に広がります。
牛欄山二鍋斗(頭)(ぎゅうらんざん あーるごーどしゅ) 56度
北京市内の牛欄山地区で製造される大衆白酒。アルコール度数は高いですが、ほんのり甘く、澄み切った味です。
紅星二鍋斗(頭)(ホンシンアールグォトウ) 50度
昔から中国で普及している大衆酒で、他の銘柄のような香りや味つけはなく、まっすぐな白酒。カジュアルなボトル入り。
そして、多くの方はご存知かと思いますが、老酒舗では、中華に合う選りすぐりのワインやスパークリングワインを用意しています。
またオリジナルの「羊香トマトハイ」は、トマトジュースハイにクミンが振りかけられています。トマトの甘みにシャープなアクセントを加えていて、羊料理にも合います。
どうですか。みなさん、自分の食べてみたいつまみはありましたか。
今度の週末は老酒舗に行って、料理もお酒もいろいろ試してみませんか。
(東京ディ―プチャイナ研究会)
店舗情報
老酒舗
台東区上野5-10-12
03-6284-2694
https://www.ajibo.jp/okachimachi2.html