これだけ知っていればもう怖くない!白酒の賢いたしなみ方

料理の豊饒さに比べ、中国の酒はいまひとつ? おいしい酒ってあるの? かと思えば、中国の酒宴でアルコール度数が50度以上もある白酒(バイジウ)の一気飲みでつぶされてしまった……。そんな話をずいぶん聞かされたものです。

最近の中国の若い人は白酒を飲まなくなったといわれて久しいです。もともと長江以南の沿海地域(上海や浙江省、福建省、広東省など)の人たちは、白酒はまず飲みません。

さらにいうと、唐詩に出てくる中国を代表する詩聖の杜甫や李白が飲んでいたのは、白酒ではありません。当時はまだ白酒は歴史に登場していないからです。彼らを酩酊と詩境に送り込んでいたのは、黄酒(ホワンジウ)というモチ米などからつくる醸造酒でした。アルコール度数は15~18度ほどで、紹興酒は黄酒の一銘柄です。

てなぐあいに、白酒にはなかなかいい評判が聞こえてきません。

だからといって、中華を食べるなら紹興酒と決めつけるのもどうかと思います。なぜなら紹興酒は甘い味つけの上海料理やさっぱりした台湾料理などには合いますが、四川料理や東北料理には合いません。

最近流行の刺激が強く、濃い味つけの料理や火鍋に合うのは、むしろ白酒です。中高年以上で、特に中国の北方出身の人たちは「白酒でなければ飲んだ気がしない」と話しています。

ここ数年、都内のチャイニーズ中華が次々と提供する、これまで日本になかった中国各地の地方料理は、白酒向きといえるかもしれません。要は、飲み方の問題ではないでしょうか。

今回の話は、万人向けの企画ではなく、酒飲みの気持ちがちょっとわかるかも……という方や、強い酒を飲むことにひそかな喜びを感じてしまう、真正の酒好き向けの内容だと思ってください。

まず基本的な認識から。中国では酒を以下の5種類に分けています。

  • 白酒……高粱(コーリャン)などからつくる蒸留酒。アルコール度数が高く、無色透明。
  • 黄酒……モチ米やウルチ米などからつくる醸造酒。澄んだ濃い黄色、あるいは茶色。
  • ビール(啤酒)……ちなみに中国初のビールは1900年製造のハルビンビール。
  • 葡萄酒、果酒……ブドウや果実でつくる醸造酒。ちなみに、中国では漢代にシルクロードを通じてワインが伝わっていました。
  • 配製酒(ペイヂージウ)……香料や薬剤を加えるリキュール酒。「玫瑰露酒(ハマナスの香りがする高粱酒)」や「中国勁酒」などが知られます。

歴史的にみると、中国で古代から飲まれていたのは黄酒で、白酒がつくられるようになったのは元代以降といわれます。中国では、最も酒に強い民族はモンゴル族だと信じられていますが、彼らが中国全土を支配したこの時期に持ち込まれたのではないでしょうか。

この写真は、中国とロシア、モンゴルの3つの国境に近い内モンゴル自治区の満洲里のインポートショップで見つけたモンゴル産のウォトカです。「VODOKA」と書いてありますが、チンギス・ハンの顔が描かれています。

確かに、中国で最古の白酒といわれる「五粮液(ウーリャンイエ)」(四川省宜賓)でさえ、600年前がルーツだそうです。中国で最も有名な「茅台酒(まおたいしゅ)」(貴州省仁懐市茅台鎮)もわりと新しい銘柄といえます。

現在このふたつのブランドは、中国の国酒として広く認知されたことから、高級白酒として、主に贈答品やお祝いの席の乾杯酒用に飲まれることが多いです。

中華食材店などで販売される価格も、1本4~5万円もするものが多いので、なかなか口にするチャンスはなさそうです(「茅台王子酒」という1本4000円くらいの手ごろな値段のものもあるのですが、他に比べて5分の1、10分の1と安すぎるので、どうなんでしょう)。

さて、このメニューは都内のある東北料理店のドリンクページの一部で、中国酒のリストです。東北料理は東京で最も店の数が多いのと、先ほど述べたように、白酒のような強い酒を好む人たちが多いので、メニューにもけっこう白酒が入っています(※は白酒)。

  • 老龍口※
  • 二鍋頭※
  • 江小白※
  • 中国勁酒
  • 五粮醇※
  • 泸州老窖头曲(瀘州老窖頭曲)※
  • 孔府家酒※
  • 紹興酒5年/8年/15年/18年

それぞれを簡単に紹介しましょう。

まず「二鍋頭(アールグオトウ)」。これは昔から中国に普及しているアルコール度数56度の大衆酒なので、ご存知の方も多いと思います。他の銘柄のような香りや味つけはなく、まっすぐな白酒なので、料理と一緒に飲まないと、人によっては胃が焼けそうになります。最近は多品種化が進んでいて、度数少し控えめで、ボトルのデザインも異なるバージョンがあります。

次に「五粮醇(ウーリャンチュン)」ですが、高級白酒の「五粮液」の姉妹品で、同じ原料、製造方法を用いています。五粮液よりアルコール度数を抑え、まろやかな甘口の白酒です。

「瀘州老窖頭曲(ルージョウラオジャオトウチュー)」は、四川省瀘州の400年の歴史を持つ白酒です。「老窖」というのは、歴史のある古い穴蔵で醸造されるという意味。酒の色や味、香りなどから「頭曲」「特曲」「二曲」に分類されます。

最近、都内の東北料理店などでよく見かけるようになったのが、アルコール度数が40 度前後で比較的飲みやすく、手ごろな値段で楽しめる、山東省曲阜の「孔府家酒(コンフジアジウ)」や遼寧省瀋陽の「老龍口(ラオロンコウ)」です。

山東省曲阜は孔子の誕生の地として知られ、明、清時代には宮廷への貢ぎ物として献上されていた老舗の白酒です。一般に普及している度数は39度で、ボトルではなく、壺入りであることも特徴です。

老龍口は清代の1662年(康熙元年)創業の東北地方を代表する白酒です。度数は42度から65度まで分かれていますが、普及品は42度のものです。

瀋陽市内には老龍口酒博物館があり、同酒の製造過程や中国の白酒文化の歴史を展示しています。博物館の外には創業当時の古井戸も残っています。

館内には昔の酒館を再現した場所があり、度数の違う酒を試飲させてくれます。

最後は「江小白((ジャンシャオバイ)」。2012年に重慶で創業された酒造メーカーで、若者向けのニュータイプなカジュアル白酒を発売しています。手ごろな値段にコンパクトサイズのボトル、そして何よりポップなパッケージが売りで、明らかに茅台酒などの高級白酒へのアンチの姿勢が感じられます。江小白が提唱するのはシンプルライフだそうです。

中国の若い世代の日々のライフシーンを切り撮った写真に、それぞれ異なるショートメッセージが書かれているのも特徴です。輸出先別にメッセージは翻訳されていて、香港ビクトリア湾を舞台に「人生でいちばん重要な時はいま」といったイミ深なフレーズも、日本語で書かれれています。

最近では、ピーチと白ブドウのフレイバー入りが都内の中華食材店に出回るようになりました。ためしにピーチを買って、オンザロックで飲んだのですが、とても飲みやすいです。アルコール度数は23度と日本の焼酎並みなので、ソーダ割にすれば女性も大丈夫でしょう。

実際、都内に多店舗展開している中華居酒屋「餃子酒場」では、江小白のジンジャーエールやソーダ割りを「白ボール」と称して提供しています。

ところが、中国の中高年以上の男性の中には、それが気にくわない人も多いようで、「あんなものは白酒じゃない」と言う声も聞かれます。気持ちはわからないではありませんが、別の飲み物だと思えばいいのではないでしょうか。

最後に、東北料理店のメニューには載っていませんでしたが、台湾産の白酒(当地では高粱酒と呼ぶのが一般的かもしれません)のことも触れておきましょう。

それは「金門高粱酒」というアルコール度数58度の蒸留酒で、台湾海峡を挟んで中国の厦門までわずか数キロという位置にある金門島で製造されています。

日本では台湾料理といえば紹興酒が定番なので、都内の台湾料理店ではあまり見かけませんが、台湾では戦後国民党が持ち込んだ中国北方をはじめとした地方料理も多く、この強い酒を好む人も多いようです。台湾のコンビニでは定番商品ですし、都内の中華食材店にも置かれています。

これまで都内で味わえる主な白酒について簡単に解説してきましたが、中国では酒はあくまで食事と一緒に飲むものです。油っこかったり、刺激が強い料理であれば、食事の合間に白酒を軽く口に含むように飲むと、その味わいがきっと理解できると思います。

要は、一気飲みなどしないで、食事と一緒に静かに流し込めば、悪酔いすることはありません。それが賢いたしなみ方といえるでしょう。 以下は、中国の白酒の輸入販売会社のサイトです。今回触れていない白酒もたくさん扱っています。

東京ディープチャイナ研究会

店舗情報

餃子酒場高田馬場店

新宿区高田馬場3-2-13
ドムスサニヤナガワビル B1F
03-6279-3185

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