昨年3月下旬に本サイトを立ち上げてから早10カ月。最近、池袋の友誼食府を訪ねると、フードコートもそうですが、隣接するスーパーの友誼商店で食材を買い求める日本の人たちが増えているのを実感します。
自宅で手の込んだ本場の料理をつくりたいというニーズの高まりもあり、せっかくなら海外で売られているのと同じ調味料や珍しい食材を安く買いたいと思う方が増えているのに違いありません。
いま都内各地に出店している中華食材店には、実にさまざまなものが売られています。次々に新しい商品が入荷されており、そのすべてを把握することは容易ではありません。今回はとっつきやすいところからということで、ソフトドリンクを紹介したいと思います。
その多くは中国や台湾の飲料メーカーの製品です。
以下、「伝統飲料」「ニュータイプ飲料」「台湾飲料」の3つに分けてみます。
まず「伝統飲料」です。
中国で昔から飲まれている清涼飲料は、生薬エキスなどを使った身体に良さげなドリンクが多いです。
中国では身体の熱を冷まし炎症を抑える薬用茶を「涼茶」といい、南方で古くから飲まれていました。王老吉は1828年創業という老舗の、中国で最も有名なブランドです。仙草や甘草などの薬草成分入りですが、かなり甘いです。
未成熟の梅の実を燻蒸し、サンザシなどの生薬を入れた甘酸っぱい薬膳ドリンク。夏バテに利きます。
中国南方に浮かぶ海南島産のココナツミルクジュース。ほんのり甘く、火鍋のような麻辣料理を食べるときに口直しに飲むといいかも。
缶と紙パック入りがあり、どちらも裏面に真っ白なチャイナドレスを着た中国の女優の徐冬冬さんがいます。百度で調べると、彼女は1990年ハルビン生まれ。ちょっと意味深なコピー(「我从小喝大」)が書かれた不思議なパッケージですが、百度にはこの点については触れていませんでした。
次に「ニュータイプ飲料」です。
最近の中国では健康を意識した新感覚ドリンクが続々登場しています。
これはアイスティーです。日本人の感覚ではかなり甘い感じがします。
雪梨と呼ばれる中国の梨をジュースにしたもので、ほんのり甘く薬膳的な効果があり、喉にいいそうです。
新進飲料メーカー「元気森林」が発売した低糖スパークリングウォーター。天然由来の甘味料エリスリトールを使ったスッキリ味で、中国では人気爆発中だそうです。
ピーチ、パイナップル、ブドウ、オレンジ、乳酸菌、キウイ、ドラゴンフルーツ、柑橘系のカラマンシー(四季橘)など、さまざまなフレイバーがあります。
このドリンクがヒットした背景には、健康志向を意識した商品特性がありました。
まず、エリスリトールは冷感作用があり、虫歯の原因になる酸を作らないこと、血糖値が上昇しないことなどをセールスポイントとして打ち出しています。
実は、中国人の糖分の摂取量は世界で最下位レベルです(日本人より低いです)。それなのに、これまで中国の清涼飲料は甘すぎるところがありました。食生活が豊かになったいま、ドリンクに甘さを求める必要がなくなっているのでしょう。
健康志向の強い若者をターゲットにブランドイメージを創出したこともあります。パッケージデザインは、ご覧のように、安心、安全、高品質をイメージさせる「日式」(日本風)デザインを採用したことで、中国のZ世代に評価されたそうです。
もちろん、中国の先進的な広告戦略もあります。SNSでインフルエンサーをフル活用した効果的なマーケティングが功を奏したそうです。
その結果、日本の主な中華食材店に「元気森林」シリーズは置かれるようになっています。
同じく「元気森林」のウーロン茶のシリーズで、イチゴやモモなどの各種フルーツのフレイバーがあります。
最後に「台湾ドリンク」です。
南国台湾には地元で長く愛されているオリジナルドリンクがたくさんあります。まず伝統飲料から。
これは昔からある梅ジュースで、「酸梅湯」と同じです。
「茶」とありますが、冬瓜の甘いジュースです。台湾だけでなく、中国南方やベトナムでも飲まれています。身体の熱を冷ます独特の風味のドリンクです。
こちらは台湾産のココナツミルクジュースで、甘さ控えめ。タピオカとまぜてスイーツにもよく使われます。
1965年発売のアップルサイダーで、台湾ではロングセラーの人気を誇っています。甘さは控えめで、飲みやすいです。
1950年発売とアップルサイダーよりも老舗の飲料メーカー「黒松(ヘイソン)」がつくる台湾版コカ・コーラ。ハーブ入りで独特なハッカ臭が特徴です。
台湾産のパパイヤとミルクを合わせた、ほんのり甘いドリンクです。旅先で出会った台湾の人たちを思い起こさせる優しい味がします。
真ん中の緑の缶は黒松のグアバジュースです。
ちなみにこれは台湾の清涼印象メーカー黒松の公式サイトです。
これらのディープでライトなソフトドリンクは、すべて都内の中華食材店で購入できます。
お気に入りの味は見つかるでしょうか。
(東京ディープチャイナ研究会)