大阪日本橋で見つけたディープでガチな丹東のサバ餃子

ここ数年、東京で見られるディープチャイナ的な現象は、大阪でも起きているのでしょうか。

京都在住のアジアグルメライターの浜井幸子さんは、関西のディープチャイナの様子を日々報告してくれていて、同じようなことが起きていることはだんだんわかってきました。東京と共通していることや違うところはあるのか、興味津々です。

年始に大阪に立ち寄る機会があったので、難波から日本橋界隈をうろうろしてきました。浜井さんから大阪ディープチャイナはそのあたりに集中していると聞いていたからです。

ほんの数時間の散策でしたが、以下現地で気がついたことを報告します。

なんば駅を降りてなんば花月のあるあたりの商店街を歩いていると、都内ですでに5店舗展開している四川本格火鍋の「譚鴨血」がオープンしていました。

東京ディープチャイナの特徴のひとつに中国の外食チェーンが出店していることが挙げられますが、大阪でも出店が始まっていることがわかります。

商店街をいくつか歩いたのですが、蘭州牛肉麺の店が何軒もあって驚きました。大阪でも人気なのでしょうか。

日本橋に近づくと、雲南米線の店や冰城アジア食品館と中国物産海羽という中華食材店が並んでありました。

海羽は新大久保にもあるハルビン人オーナーの系列店だと思います。面白かったのは、これらの店には、東京ではあまり見かけないベトナム製のウォトカ(といっても材料は米でしょう)や各種酒類、魚醤のニョクマムや蝦醤のような調味料が売っていました。

浜井さんによると「日本橋は中華、新世界はベトナム世界らしいですよ。日本橋から南に向かった新世界に行くと、本格的なバインミーが食べられるそうです(大阪でベトナムレストランを経営する友人情報)」とのこと。

この10年、日本で最も増えたのがベトナムの人たちです。高田馬場にはベトナム食材を扱う店がありますが、面白い発見でした。

道頓堀を渡った先に、東京でもおなじみの友誼商店がありました。2年前にオープンしたそうです。

池袋の友誼商店に比べるとささやかですが、店の奥に小さな飲食スペースがありました。新大久保の海羽と同じ感じです。煎餅果子や烤冷麺、焼き小籠包、豆乳など、定番の小吃が楽しめます。

最近売り出し中のソフトドリンク「元気森林」や日本と違って甘くないコーンなど、東京でもよく見かける商品も多かったですが、野菜コーナーにサンザシ(これは中国北方でよく飴がけして串刺しにされてるおやつの実です)が置かれていたり、食肉コーナーでは、なんと北海道産のロバ肉が売られていたり、おそらく店長は中国北方出身の人なのではと思いました。

河北省ではロバ肉を食べますし、北京ではロバ肉料理店をよく見かけます。これは北京のロバ肉料理店で食べたロババーガーです。

同じ系列の食材店でも、店長によって商品ラインナップが違うところが面白いです。実は友誼商店福岡店の店長は台湾の人なので、台湾や韓国の食材が多いと聞きます。

そうそう大阪の友誼商店では、東京ではめったにお目にかかれないハルビンビールが置かれていました。それも輸入用のスタンダードのみならず、アイスビールまで。

土地勘がないものですから見落としも多いと思いますが、道頓堀の北側に沿って東西にびる宗右衛門町にディープチャイナの店が多かったです。ふらふら歩いているだけで、13軒見つかりました。実際はもっとあることでしょう。

湖南料理が2軒もあったのは驚きでした。四川や東北、いま都内でも急増中の串焼きバーなどが多いのは東京と変わりません。ここ数年でオープンした店も多そうです。とはいえ、昼間は閉まっている店も多く、コロナの影響はかなり大きそうです。

湖南料理「湘味食府」
東北料理「大東北私房菜」
串焼きバー「聚點児」

難波から日本橋にかけては、コロナ前はインバウンドの町でした。数年前まで外国客であふれていた黒門市場も近いし、やたらと免税ドラッグストアがありました(ただしほぼ閉店中)。表通りから住宅地にちょっと入ると、ミニホテルやゲストハウスも多いです。

何軒かの店主と話をしましたが、黒龍江省や福建省の出身者の店が多いと聞きました。これも東京とよく似ています。この界隈にディープチャイナの店が多いのは、インバウンド客も多く利用していたからであることは確かのようです。ですから、いまは客足が途絶えて苦労していることでしょう。

最後に、日本橋で見つけたディープなお店を紹介しましょう。

表通りから少しはずれた住宅街を歩いていると、「丹東特色大水餃」という垂れ幕がありました。

丹東というのは中国遼寧省の北朝鮮国境の町です。メディアがしばしば伝える中朝貿易の陸路の最大の拠点でもあります。

店に入ると、まさに丹東のような中国の地方都市によくある鄙びた食堂と変わらない風情で、懐かしさが急にこみあげてきました。

しかも、サバ餃子が看板メニューの店だったのです。魚のサバです。

丹東に近い港町大連は海鮮餃子が名物で、黄海でとれる黄魚(日本でいうイシモチ)やイカ、サザエなどの餃子が食べられます。

もっとも、サバ餃子は美食とはほど遠い、最も庶民的なメニューといえます。中国でもサバ餃子を食べるのは、北方の海に近い大連近辺の人たちくらいではないでしょうか。

都内の餃子屋でもまだお目にかかったことのないサバ餃子をいただきました。肉の餃子と違い、油っぽさはなく、さっぱりしています。

店主の陳さんは4年前に来日した丹東出身の人ですが、注文すると、皮から手づくりでつくってくれました。

こんな店があるんですね! 大阪ディープチャイナの奥深さを垣間見ることができました。

※2022年5月上旬、この店を訪ねたところ、閉店していました。残念です。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

家の味

大阪市中央区島之内2-15-27

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