10月下旬、東京ディープチャイナ研究会のFacebookに、京都在住のアジアグルメライターの浜井幸子さんからこんな投稿が寄せられました。
「今晩は最近買った『あたらしい家中華』に出ていた葱油芋艿を作ってみた。豆板醤や唐辛子をよく使う料理に慣れた私には、「こんな中華は一回も食べたことないわ」と言う全くあたらしい中華だった。調味料は葱油と塩だけ。蒸した里芋のねっとり感と葱油が溶け合って、めっちゃ美味しい〜」
浜井さんがここで紹介している『あたらしい家中華』という新刊は、noteのマガジン1万部を発行している人気の中華料理愛好家・酒徒さんの待望のレシピ本です。同書では、あえて「ガチ中華」という言い方はしていませんが、中国滞在経験が豊富な酒徒さんがこれまで食べてきた数多くの現地中華のうち、家で再現したくなる魅力的な78レシピを紹介しています。
「手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華」(マガジンハウス)https://magazineworld.jp/books/paper/3251/
以下、浜井さんに同書を紹介してもらいました。
『あたらしい家中華』を買って、葱油芋艿(里芋の葱油炒め)(←本書P.38)を作ったことは、先日、Facebookに投稿したばかり。酒徒さんの説明通り、とろりとした葱油がねっとりした里芋にからみつき、とんでもない美味に化けた。
めっちゃおいしいじゃないか~と翌日も作ってみた。食材は里芋と葱、調味料は塩だけだから、2回目は本を見なくても余裕で作れた。
私は酒徒さんの中国飯ブログ「吃尽天下@上海」、ハオチー80Cというプロ御用達中華料理サイトに載っている「中国全省巡り」の読者だ。
吃尽天下 (livedoor.jp)
http://blog.livedoor.jp/chijintianxia/
酒徒 | 80C[ハオチー]
https://80c.jp/tag/%E9%85%92%E5%BE%92
酒徒さんの文章は、むちゃくちゃハイテンションで熱い。読者をぐいぐいと中国のレストランや屋台へと連れて行ってくれる。
例えば「真っ白な麺が肉味噌の黒に染まってぬらぬらと輝くころには、麺の熱で温まった肉味噌がぶわんぶわんと香り立ってくる」。
読んでいると、酒徒さんの横で実際に自分が食べているような気がしてきて、気が付くと、酒徒さんの炸裂する中華料理愛があふれでた文章にはまってしまっている。
同じように中華料理に魅せられた一人として、私と酒徒さんの一番大きな違いは何か?
その答えが「あたらしい家中華」にあった。私が屋台飯や麺ばかりで炒菜と呼ばれる炒め物をあまり食べていないという点ではなく、酒徒さんは「お家でその味を作りたい」人だった。
私はどんなにおいしい料理でも「また行って、食べよう」と思う。それが家庭料理の場合でも「また、作ってもらおう」なので、自分で作ろうという再現欲は薄い。酒徒さんは、とにかくお家で作りたい人なのだ。
酒徒さんの半端ない観察力は中国で出会った感動の味をどうやって作るのか、その秘密をなんとしてもつかまねば! という気合から生まれたものだった。
中国全省を歩きまわり、店中華から家中華まで食べまくった酒徒さんが選んだ料理がつまった『あたらしい家中華』には、再現欲の薄い私でも作りたくなる数少ない家中華が載っていた。
「蓮藕排骨湯(れんこんと豚スペアリブのスープ」(←本書P.118)だ。これは豚スペアリブからとったスープで蓮根を煮るだけの超超簡単料理。味付けはしょうがと塩のみ。留学中に四川人の友達に教えてもらい、おいいそうな蓮根を買うと作らずにはいられない我が家の定番料理だ。
簡単な食材と調味料であっという間に出来て、とびきりおいしい。そして店中華にはない素朴さでいっぱいの家中華の世界を教えてくれた酒徒さん、謝謝!
(浜井幸子)