飲食業界で餃子ブームが盛り上がってから久しいですが、日本では餃子といえば“焼き”が主流。でも、それだけで満足していてはちょっと残念です。
なぜなら、黒木真二さんが教えてくれたとおり、本場中国では水餃子や蒸し餃子が主流だからです。
そこで、中国の餃子どころというべき東北地方の大連(遼寧省)の餃子の話をしたいと思います。
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黄海に面した港町の大連では海鮮蒸し餃子が有名です。
餃子の具に魚や貝、ナマコなどを入れた蒸し餃子です。具材のおいしさを味わうには、蒸し餃子がいちばん。水餃子にすると、海鮮のエキスがお湯に出てしまうので、それらを逃がさず皮に包み込む蒸し餃子でなければなりません。
これが大連市内にある餃子専門店「船歌魚水餃」で食べた海鮮蒸し餃子です。
手前の黄色いのが、中国で黄魚(ホアンユィ)と呼ばれるイシモチの身が入った餃子で、真っ黒なのはイカ墨餃子です。
イカ墨餃子の中身を開けてみると、イカと豚肉を合わせた具が入っています。皮が黒いのはイカの墨が皮に練り込まれているからです。見た目のインパクトはなかなかですが、意外にさっぱりとしています。中国餃子特有のふっくら厚みのある皮の歯ごたえも口の中で具となじんでいい感じです。イカ墨スパゲティのように口の中が真っ黒になるというようなこともありません。
海鮮餃子の店では、餃子以外の魚料理も食べられ、好みの魚をその場で選んで一品料理として調理してもらえます。手前左の「大黄花」と書いているのが黄魚です。貝類も豊富です。
店の中に値段入りで餃子の種類を書いたプレートが吊るされています。左から「墨鱼水饺(イカ墨)」「黄花鱼水饺(イシモチ)」「大蛤水饺(ハマグリ)」「三鲜水饺(三種類の具入り。一般的には、ニラと炒りタマゴとエビ入り)」「鲅鱼水饺(サワラ)」です。値段は500グラムですから、かなりの量があるのに安いです。
この店では他にも、アワビやサザエなどの高級海鮮類を具にした餃子もあります。
これら海鮮蒸し餃子は、油ギトギトの肉入り焼き餃子とはまったく別物の、ヘルシーかつ上品な味わいです。ただ、餃子には肉汁パワーがほしいと思う人もいるでしょうから、意見は分かれるかもしれません。
知っていただきたいのは、中国では餃子の中に何を入れようが自由だということです。
店の中では、こうやっておばさんたちがイカの墨を皮に練り込んで、具を包んでいました。
このような海鮮蒸し餃子を食べられる店が東京にもあります。
鶯谷にある餃子専門店「鴻福餃子酒場」です。
これが同店自慢の海鮮蒸し餃子です。
皮の色によって具材が違います。
まず緑色の皮は、エビやイカ入りの海鮮餃子です。
黄色は、ホタテの貝柱とタマゴ入り。
ピンクはカニとタマゴ入り。
黒は豚肉とちょっぴりゼイタクなフカヒレ入りです。
そして、これが三鮮餃子と呼ばれるニラと炒りタマゴとエビ入りで、特にふっくらしたエビとタマゴがマッチしています。
この店にはもちろん肉入り餃子もあります。黒豚とキノコ入りです。東北名物の酸菜(発酵した白菜漬け)入りの餃子もあります。
これらの多種多様な餃子は、店内にある専用の餃子工房で手づくりされています。
鴻福餃子酒場のオーナーの呉昌明さんは遼寧省瀋陽出身で、都内に2軒の餃子専門店を経営しています。
呉さんによると、同店ではこれほど多彩な海鮮蒸し餃子を用意しているのですが、ほとんどの日本人客がそれらの存在を知らず、焼き餃子しか注文しないので、現在メニューには記載しておらず、在日中国人向けの通販でのみ扱っているそうです。なんと残念なことでしょう。
ですから、同店を訪ねた際は「メニューには載っていない海鮮蒸し餃子が食べたい」と店の人に話してください。餃子の美味なる世界が広がること請け合いです。
(東京ディープチャイナ研究会)
店舗情報
鴻福餃子酒場
東京都台東区根岸3-7-18
050-5590-9574
https://gftz600.gorp.jp/