「中華料理といえば青島ビール」である理由を解説します

中華料理といえば青島(チンタオ)ビールです。

なぜそういえるのでしょうか。

青島ビールは、中国山東省青島市(黄海に突き出す山東半島の南西側に位置する海浜都市です)に本社を構える「青岛啤酒股份有限公司」のトップブランドビールです。

1903年にドイツの醸造技術により青島に生まれ、世界85の国に愛飲され続けている中国で最も有名なビールブランドといえます。2008年には北京オリンピック公式スポンサーを務めました。

現在では、中国国内に65の工場を有し、青島ビールシリーズの輸出量は中国第1位。海外の数々のビールコンテストで金賞を受賞しています。

青島ビールといえば、ラガービールの「青島ビール(Tsingtao Beer)」が有名です。アルコール度数4.7%で、大瓶・小瓶・缶があります。

青島ビール|ラガービール大瓶・小瓶・缶

ラガービールとは、下面発酵酵母(発酵を終えると底に沈んでいく種類の酵母)を使い、6〜15℃の低温で7〜10日ほど熟成させて出荷するビールで、色は淡い金色。日本の大手ビール会社で販売されている主要ビールを含め、現在世界で生産されるビールの大部分を占める醸造法によるビールです。

日本向けに出荷されている青島ビールは、世界の名水のひとつとして知られる、青島市街地の東の郊外にある崂山(ろうざん)の湧き水を使用し、青島市にある第一工場で醸造されています。そのため、中国国内ではなかなか飲めない貴重なビールです。マイルドな口当たりとスムーズな喉ごし、清々しい香りで中華料理全般によく合います。

日本で飲める青島ビールは、実はほかにもいろいろあります。

透明なボトルの「青島ビール プレミアム(Tsingtao Beer Premium)」です。通常より発酵に時間をかけて限定醸造された中国初のプレミアムビールです。じっくり熟成させ、深みを追求した国賓にも提供される製品です。

黒ビールもあります。「青島ビール スタウト(Tsingtao Beer Stout)」です。ロースト麦芽のスモーキーさとホップの苦みが特有のコクを生み、絶妙なバランスに仕上がっています。

一般に中国のビールは日本のビールに比べ、アルコール度数が低く、飲みやすいけれど、パンチがないという印象を持つ人もいるかもしれませんが、強い苦みを特徴としている「青島IPA(Tsingtao IPA)」もあります。オリジナルの青島ビールに比べ苦味は4倍、麦汁濃度は2倍。奥行のある味わいと華やかなホップの香りが楽しめます。

そのため、料理との相性でいうと、香辛料と調味料をしっかりと効かせた濃い味つけの中華料理がおすすめです。中華の風味を出すのに欠かせない八角の香り漂う中華風角煮「東坡肉(トンポーロー)」や甜麺醤と豆板醤の甘辛さが際立つ「回鍋肉(ホイコーロー)」、オイスターソースのうまみが凝縮した「青椒肉絲(チンジャオロース)」などにはよく合います。

世界的なクラフトビールブームのニーズに対応した製品もあります。青島ウィート(小麦)を原料としたホワイトエールの「青島ウィート(Tsingtao Wheat)」です。

この製品の登場は青島ビールに新風を吹き込みました。ジャーマンスタイルのヴァイツェンをお手本とし、酵母の香りとうまみを活かすために無濾過製法を用いています。苦味は控えめで、バナナやバニラのような甘くフルーティーな香りと、少しだけ感じる酸味が特徴です。

料理との相性は、塩味ベースのさっぱりとした野菜や魚介の炒め物や、ゴマの香ばしい風味が食欲をかき立てる「棒棒鶏(バンバンジー)」、黒酢のアクセントを加えたジューシーな「小籠包(ショウロンポウ)」などによく合います。またマンゴープリンや杏仁豆腐などのデザートと一緒に飲んでも楽しめます。

さて、青島ビールのことをもっと知りたい方に、中国の青島ビール本社の敷地内にある「青島啤酒博物館」を紹介したいと思います。

この博物館は、創業100周年を記念して建てられた、青島ビールの歴史や製造工程などを展示する施設です。

館内には、製造工程を解説する現在の仕込みタンクや、創業初期の樽詰めの発酵タンクなどの実物大の展示があります。

また当時ドイツが製造したビールボトルや20世紀初頭の広告画など、興味深い展示も多数あります。

現在ラベルに使われているトレードマークは、青島を代表する建築物の「回瀾閣」をモチーフにしたものです。回瀾閣は青島市南部に位置し、湾に突き出た桟橋の先端に建つ楼閣です。1891年(清の光緒17年)に清国海軍が使用するために建造されたもので、八角形の形状が特徴です。現在も青島を代表する観光スポットのひとつです。

日本のビール工場見学と同様に、試飲も楽しめます。入場券はビールの種類などによって料金設定されています。プレミアムやスタウトなど、飲み比べができます。

見学の途中と見学を終えた後の2ヵ所に試飲スペースが設定されていて、後者のホールには青島ビール関連グッズが販売されています。

毎年8月、青島では「青島国際ビール祭(青岛国际啤酒节)」が開催されます。1991年から始まったイベントで会場は多くの人でにぎわいます。この季節、青島の海岸には海水浴客があふれます。まさにビールとビーチの季節です。

最後に、簡単に青島ビールの歴史について触れておきましょう。

青島ビールは、20世紀初頭、ドイツが租借地として獲得した青島で都市整備を進めるなか、1903年8月15日(清の光緒29年)にイギリスとドイツの合資会社であり、香港に拠点をおいていたアングロ・ジャーマン醸造株式会社(Anglo-German Brewery Co.Ltd.,)が設立しました。

当時の名称は「日耳曼啤酒公司青島股份公司(ゲルマンビール会社 青島株式会社)」でした。ドイツの醸造技術を導入して、名水として知られた嶗山(ろうざん)の水を使用し、ビールの醸造を始めました。

中華人民共和国の成立とともに、国営企業となりましたが、鄧小平による1990年代の改革開放以降、現在の社名となり、1993年には香港証券取引所や上海証券取引所に上場を果たしています。

こうした歴史については、青島啤酒博物館で詳しく解説されています。

ビールの本場、ドイツの醸造技術によって生まれた歴史ある青島ビールが、中国を代表するビールといわれるのはこういう理由なのです。

現在日本で飲める青島ビールのラインナップについては(輸入商社の池光エンタープライズのサイト)こちら↓

(東京ディープチャイナ研究会)

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