まだ日本では珍しい江蘇省の極上料理づくしの食事会をレポートします

まだ日本では珍しい江蘇省の極上料理づくしの食事会をレポートします

いま日本にはさまざまな中国の地方料理の店がありますが、どちらかといえば、刺激の強い四川料理や湖南料理などがインパクトもあって注目されがちかもしれません。でも、実は日本人の口によく合い、刺激が少なく、口当たりもまろやかなご当地料理もあります。

その代表が江蘇料理といってもいいでしょう。

江蘇省ってどんなところ?

雲南の米線や気鍋鶏、蒸気石鍋魚など、次々に新しいガチ中華を日本に届けてきた食彩雲南グループの総料理長の張永富さんの故郷がまさに江蘇省です。そこで、オーナーの牟明輝さんが企画したのが、江蘇料理に特化した食事会でした。

江蘇料理の宴 メニュー

今回のレポートは、この会に参加したTDCのメンバー3名(泉山あにかさん、aokinappleさん、和田茜さん)の合作となります。

まず筑波大学の学生の泉山あにかさんの報告から。

8月27日に開催された「江蘇料理の宴」の様子をレポートします!!

この日は、なんと60人近いみなさんが集まって、とても盛り上がりました。「辛くないガチ中華」の世界をぜひお伝えしたいです!

会場は池袋の「ムーさんの蒸鍋館」。食彩雲南グループの料理長である張永富さんが、故郷である江蘇省の料理をふるまってくださいました!

まずはTDC代表の中村さんと牟さんから今日の会の趣旨の説明があり、次に料理長の張永富さんのあいさつ(でも、恥ずかしがり屋の張さんは、一言も言葉を発することなく、こそこそと厨房に消えていきました)。最後に、江蘇省の蘇州出身の和田さんからもお話をいただいて、「江蘇料理の宴」、いよいよスタートです!

張永富さんは江蘇省連雲港市生まれ。地元の調理師学校で学んだ後、2005年に来日。その後ムーさんと知り合い総料理長に就任。地元料理は江蘇料理の中でも「准揚菜」を得意としています。

その特徴は「甘すぎず、しょっぱすぎず、南と北のどちらの好みにも合う味付け。新鮮なご当地食材を厳選し、丁寧に仕上げる。品数が多く、季節ごとに旬の味が楽しめること」だそうです。

今回の宴会を開くにあたって、牟さんや張さんは、メニュー選びから何度も試食と作り直しを繰り返したそうです。日本人が好みそうなメニューが何かということも考慮し、16品が選ばれました。

ここからはメニューを紹介します!

【前菜】

1. 醤香牛腱(牛肉の醤油煮の冷菜)

醤香牛腱(牛肉の醤油煮の冷菜)

使われている醤油はシェフ自らが調合したものだそう。シンプルな醤油味とは違っておいしいと話していたら、牟さんが料理長の張さんに聞いてくださいました!

2. 塩水鴨(南京名物のアヒルの塩ゆで)

3. 水晶肴肉(塩漬け豚肉の煮凝り)

水晶肴肉(塩漬け豚肉の煮凝り)

4. 燙千絲(スープ入り干豆腐和え)

燙千絲(スープ入り干豆腐和え)

醤油ベースの味付けに干し豆腐が入っている様子がラーメンみたいです。食感がしっかりしていて満足感が高いけれど、豆腐で作られていてきっとカロリーは低いので、ダイエットにもよさそうだなと感じました。

【野菜料理】

5. 拌涼粉(緑豆春雨の和え物)

6. 上湯豆苗(豆苗の貝柱スープがけ)

7. 桂花糯米藕(金木犀の香りのもち米入り甘味たっぷりレンコン)

桂花糯米藕(金木犀の香りのもち米入り甘味たっぷりレンコン)

甘い金木製の香りが好きなのですが、料理に入っているのは見たことがないので驚きました。デザートになりそうなほど甘い味付けで、サクサクのレンコンともちもちの糯米の組み合わせが面白い一品です。

8. 虾肉蒸餃(海老蒸し餃子)

9. 糯米焼麦(もち米入り焼売)

糯米焼麦(もち米入り焼売)

10. 清蒸魚(蒸し魚)

清蒸魚(蒸し魚)

この日一番メインのメニューです。大きな魚がどーんと来て迫力があります。種類はハタ。白身魚なので淡白なのかと思いきや、しっかり脂がのっていて全然パサつかず、とてもしっとりしています。

11. 燴什錦(揚げた豚の皮と魚団子入り江蘇風おでん)

燴什錦(揚げた豚の皮と魚団子入り江蘇風おでん)

一口食べて、日本のおでんにとっても味が似ていてびっくり! 魚の出汁が利いていてホッとする味です。ちなみに卵などの具材がひし形なのは、その方が火の通りがいいから。

12. 糖酷小排(豚スペアリブの黒酢甘辛煮)

糖酷小排(豚スペアリブの黒酢甘辛煮)

13. 棗香紅焼肉(ナツメと豚肉醬油煮)

棗香紅焼肉(ナツメと豚肉醬油煮)

14. 紅焼蹄筋(豚のアキレス醤油炒め)

紅焼蹄筋(豚のアキレス醤油炒め)

15. 獅子頭(揚州名物の肉団子スープ蒸し)

獅子頭(揚州名物の肉団子スープ蒸し)

私の一番お気に入りはこれ! こんなにふわっふわな肉団子は食べたことがないです! 

しっかり味の付いた旨味の強いスープと、歯を使わなくていいくらい柔らかい肉団子は相性抜群です!

ミンチの状態の肉を買ってくるのではなく、お店で肉をたたきミンチにしているそうです。

16. 揚州炒飯(甘い味付けの肉入り炒飯)

この日は紹興酒が飲み放題でした。

紹興酒が飲み放題

越王台紹興花彫酒、越王台陳年五年花彫酒、越王台陳年十年花彫酒の3種類が用意されていました。私のテーブルの一番人気は、やはり10年のもの。

私はあまり強いお酒の味が得意ではないのですが、10年のものが一番まろやかで飲みやすかったです! 熟成年数が長いほど甘く、コクが出てきます。

中国では紹興酒より白酒の方が広く飲まれているようですが、紹興酒には各地にご当地紹興酒があり、そちらもおいしいそうです!

ちなみに青島ビールさんからもご協賛をいただき、各テーブルにボトルが置かれていました。実は私は初めて青島ビールを飲んだのですが、苦過ぎず料理にも合うビールだなと感じました!

追加でジュースもいただきました。「酸梅汁」という梅のジュースです。名前とは違いそれほど酸っぱくなく甘いジュースでした!

今回の参加者は、牟さんや和田さんのお誘いでいらっしゃった中国のお友達や、TDCのフェイスブックなどのSNSを見て興味を持ってくださった方などが集まりました。全体の3分の1ほどが中国人の方で、テーブルによっては日本人と中国人が混ざりながら料理の話に花を咲かせたようです。

次はaokinappleさんのSNSの投稿から。

「江蘇省の料理は広東料理よりも甘い印象で、見た目がこんなに濃い色の料理ばかりを食べたことがありませんでした。

江蘇省の料理は見た目が濃い色

そう言いつつ、江蘇風おでんスープは日本のおでんに似た味わいで、肉団子蒸しスープは日本で飲んだことある鶏ガラスープの味に似ていて、何か共通点も感じます。

今回は肉料理の種類が多く、いろんな食感の肉料理も堪能しました!

特に印象に残ったのは、
「獅子頭」(肉団子スープ蒸し)の肉のふわふわな柔らかさ。

ほかにも、
「拌凉粉」の形状がうどんタイプでゴマだれ風。柔らかくてちゅるちゅる食べちゃう。

形状がうどんタイプの拌凉粉

「清蒸魚」(ハタの蒸し魚)はソフトな白身でふんわり食感。こういう料理は1人では注文できないので貴重です。

そういえば弾力のある食感ではなく、どれも柔らかい食感の料理が多かったので、それも特徴なのかな?

「枣香红烧肉」(ナツメと豚肉醤油煮)は、女性にとってこういう料理に入ってる棗の人気は高いと思う。

そして、〆めの「揚州炒飯」も予想通り甘かった(笑)ので、同じチャーハンでも地域によってここまで味付けが違うんだと感じた会でした…!

揚州炒飯

料理の質問にも丁寧に答えてくださった牟さん、調理してくださった張厨师、おいしい料理ありがとうございました」

最後は、江蘇省出身の和田茜さんの報告を聞きましょう。

今回の宴の食事は、江蘇出身の私にとってどれも格別に美味しく感じられました。「食彩雲南グループ」総料理長・張永富さんが得意とする「淮揚菜」が中心でした。

淮揚料理とは、淮安の「淮幇菜」、揚州の「揚幇菜」、南京と鎮江の「京幇菜」、蘇州およびその周辺の「蘇幇菜」、さらに杭州の「杭幇菜」や安徽の「徽幇菜」などが融合・発展して形成された料理体系です。

その大きな特徴は、「地元の食材、季節の食材を用い、素朴な料理を精緻に仕上げる」点にあります。万人に好まれる味でありながら、一般的な食材を使って高級感のある料理に仕上げる、素朴でありながらも上品な料理なのです。

当日、特に印象に残った料理をご紹介します。

まず一番のお気に入りは、やはり獅子頭(肉団子)です。

獅子頭(肉団子)

文字通り獅子の頭のように大きな肉団子で、その命とも言えるのがスープ。高湯という旨味の効いただしでじっくり煮込まれたこの肉団子は、口に入れた瞬間にとろけ、舌先で軽く押すだけで崩れます。脂の旨味をしっかり感じられるのに、脂っこさによる不快感はまったくありません。獅子頭は淮揚料理の中でも特に高く評価されており、料理界や美食家たちからもその地位が認められているそうです。

次に気に入ったのは、烩什錦(五目煮込み)です。

烩什錦(五目煮込み)

揚げた豚の皮、魚肉団子、湯葉、たけのこ、野菜、そして塩漬け豚肉を鳥スープでじっくり煮込んだ料理です。個々の食材はそれほど味が強くないのに、煮込むことで絶妙な味わいに仕上がるのは、塩漬け肉と鳥スープの力でしょう。私が子どもの頃は、正月にしか食べられない特別な料理で、とても懐かしい一品です。

三番目は烫干丝(スープ入り干豆腐和え)。

烫干丝(スープ入り干豆腐和え)

スープ入りの干し豆腐は初体験でしたが、すっかり気に入りました。いつもの混ぜるスタイルも好きですが、スープが染み込んだ干し豆腐はパサつかず、まるでラーメンのように一人占めしたくなる美味しさでした。

前菜の塩水鴨も印象的でした。皮は白く、肉は柔らかく、脂っこさがなく香ばしい味わい。日本ではこれほど本格的な塩水鴨を食べたのは初めてです。

塩水鴨

塩水鴨は南京の名物で、南京は「金陵」とも呼ばれるため、「金陵塩水鴨」とも称されます。鴨肉に塩水をしっかり染み込ませる工程を経ることで、肉が固くならず、柔らかさを保っているのです。

今回の宴の実現に向けて、張料理長は多大な努力をされました。何度も試食会を重ね、さまざまな意見を取り入れながら、職人としてのこだわりと食べ手の感想とのギャップを丁寧に調整し、最高の宴に仕上げてくださいました。

例えば、上湯豆苗(豆苗の貝柱スープかけ)。

上湯豆苗(豆苗の貝柱スープかけ)

豆苗炒めはよく食べますが、スープをかけるスタイルは珍しいです。現地ではエビ、ニンジン、とうもろこしに加え、角切りのピータンも入れるそうですが、ピータンが苦手な方がいると伝えたところ、当日はピータン抜きのバージョンを提供してくださり、色鮮やかでさっぱりとした味わいが好評でした。

張料理長が次回、どんな地元料理を披露してくださるのか、今からとても楽しみにしています。

江蘇料理に特化した食事会

(泉山あにか、aokinapple、和田茜)

店舗情報

ムーさんの蒸鍋館

豊島区西池袋1-28-1 第二西池ビル6F

03-6687-2011
090-6537-7233

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記事を書いてくれた人

泉山あにか

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ライターaokinappleさん
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和田茜
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