こんにちは、TDCライターの文香です。
11月2日に南方急行にて開催された第26回 在日中国厨師精英協会(在日中国人シェフエリート協会)交流会に参加してきました。
この会は、日本で活躍するガチ中華の関係者、例えば、ガチ中華店のオーナーやシェフ、調味料や貿易に関わる人たちの交流の場です。通常は関係者限りでの開催ですが、今回は牟明輝さん(ムーさん)からお誘いをいただき、そんなガチ中華を支える方々のディープな交流会にカメラマンの夏木さんと潜入してきました。
普段のお店のカウンターからは見えない「ガチ中華を動かす裏側」がギュッと詰まった刺激たっぷりの交流会、その一端をレポートします!
在日中国厨師精英協会交流会へ潜入
交流会は「第1部 料理交流活動」「第2部 懇親会」の2部構成で、教会の主要メンバーの挨拶から始まりました。ガチ中華界ではお馴染みの大御所がずらりと並び、取材する私まで思わず背筋が伸びてしまいました。

第1部「料理交流活動」
このパートではさまざまなシェフが得意料理を紹介します。今回は9月に大手町にオープンした「麻辣大先生」の料理長の潘顕其さんが講師を務め「四川の家庭風鶏肉の和物(家常拌鸡块)」と「伝統的な麻婆豆腐」の紹介がなされました。

料理交流活動は潘シェフが目の前で調理、調理方法やこだわりの解説をしながら進められました。中国の調味料を取り扱う三明物産の大友さんの通訳付きで中国語が分からない私でもしっかりと理解ができました。今回披露された2品を紹介します!
一品目は「四川の家庭風鶏肉の和物」

四川省で昔から家庭料理として親しまれてきたおかず。調理は驚くほどシンプルで、鶏肉を豪快に切り、ネギをぶつ切りにして、特製ダレと和えるだけ。解説込みで7分ほどで完成する手軽さに「これなら私でもできるかも」と思わずメモを取りました。

タレは塩味の中に麻辣と酸味がふわりと立つ構成で、花山椒の香りがアクセント。揚げピーナッツの食感も相まって家庭料理とは思えない奥深い一品でした。


二品目は「伝統的な麻婆豆腐」

麻婆豆腐は調味料選びから重要で、豆豉、豆板醤、山椒、唐辛子などを産地や熟成期間なども考慮して選ぶそう。特に”麻”婆豆腐の”麻”の決め手となる山椒が重要で、今回は潘シェフが当日朝に挽いた山椒が持ち込まれました。山椒を試食しましたが、鼻を近づけた際の香りの高さ、口に入れた際の香りや痺れの持続時間の長さに驚かされました。

麻婆豆腐といえば”豆腐”。豆腐は事前に塩を入れて煮込むことで弾力が生まれるそう。また手でほぐして入れることで、表面積が増えて味が染み込みやすくなるのだとか。豆腐は味がなく、味も入りにくいため、山椒、唐辛子等の存在感の強い調味料をしっかり使うのがポイントだそう。

完成した麻婆豆腐は痺れと辛さのバランスが絶妙で、白飯と合わせると箸が止まらなくなる美味しさでした。潘シェフによるとご飯と麻婆豆腐は「1対2」が黄金比だそう。次回作る際には気をつけてみようと思いました。
第2部「懇親会」
後半は美味しい料理とお酒を楽しみながら、わいわいと交流がなされました。中国人の業界関係者が大半ということもあり、あちらこちらで中国語と「カンペイ!」の声が飛び交い、まるで中国で宴会をしているよう。普段のガチ中華のイベントでは味わえない熱気とカオス感に終始圧倒されました。



今回のメニューで圧倒的な存在感だったのが「豚モモ肉の醤油煮」。
運ばれてきた際のインパクトに驚き、ナイフを入れるとホロホロに崩れて2度驚き。上海系の醤油と砂糖をベースにした甘辛い味付けで肉の脂とよくマッチしていました。
私の南方急行推しメニューである「海苔と豚肉の炒め物」も登場。このメニューは江蘇省連雲港出身の南方急行の総料理長の「リアルなおふくろの味」を再現したもので、海苔の旨みに豚肉の脂が加わった奥深い味わいはたまりません。羊フェスタからの参加で疲労感があったのですが、優しく包み込んでくれるような味わいで疲労が吹っ飛びました。こちらは南方急行のレギュラーメニューなので、訪れた際にはぜひ注文してみてください。

また今回はこの海苔が水餃子(海苔と鶏肉餃子)としても登場。鶏肉とのさっぱりとした味でありながら旨味はしっかり、海苔の滑らかな口当たりと鶏肉のほろほろ感のバランスがたまらない一品でした。
またホルモンとピーマン炒め、大根の豚マメ煮といった臓物のメニューも絶品でした。私は臓物料理が好きでよく食べていますが、今回の臓物系は臭みが全くなく「これは臓物なの!?」と驚かされました。ホルモンは肉厚で食感がぷにぷに、マメはレバーのような濃厚な味わいでした。
お土産
最後に中華調味料やソーセージなどのお土産もいただきました。料理交流活動や懇親会で登場した調味料もあり早速自炊で使ってみようと思いました。普段見ることのできない調理の過程や人々の交流を見ることができ大満足な交流会でした。

ガチ中華を支える人たち
今回の交流会で特に印象に残ったのが「お店の垣根を越えて、みんなで業界を盛り上げていこう!」という一体感です。これはガチ中華界隈に対して以前から感じていたことですが、今回はその熱を肌で感じました。

在日中国厨師精英協会交流会は日本語の分からない中国人シェフ同士が食材や調味料、調理法、経営ノウハウを交換する場として2017年に立ち上がりました。
因みに第一回の交流会は四川料理の巨匠である陳健一さんがゲストだったのだとか。精力的に活動を続け、今では多い時には100人も参加をするほどの大きなコミュニティとなっています。今のガチ中華の盛り上がりや勢いの背景にはこうした繋がり、助け合いがあるのではないかと思います。

TDC で活動する以前は、ガチ中華を“食べる側”としてしか知らず「お店同士はライバルでバチバチしているのでは・・」と思っていました。
しかし、実際に内側に触れてみると他店とのコラボイベントを積極的に行ったり、関係者同士で密に繋がる姿をみたりして、互いを尊重し助け合う“仲間意識”が強くあると感じるようになりました。

この空気感は、ガチ中華の先駆者たちの人柄に加えて、中国の国民性も関係しているのではないかと思います。
私自身、これまでに何度か中国本土を訪れ、友人やその家族、現地の人たちと交流してきましたが、彼らの「人情の厚さ」や「仲間の輪の広さ」は、日本ではなかなか見られないものだと感じています。
その国民性が業界全体の一体感や盛り上がりに繋がっているのではないかとも思います。今回の交流会で皆さんの情熱を直接感じたことで、これからガチ中華界隈はもっと面白く、もっと盛り上がっていくだろうという確信を強く抱きました。
(文章:文香、写真:夏木)
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南方急行

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