【上海発】自由で斬新! 水蜜桃や花椒フレーバーまである最新アイス事情

真夏の上海の街歩きに欠かせないものといえば、クラフトアイス。

クラフトアイス(手工冰淇淋)とは、そのお店独自のフレーバーと製法で作られる、大量生産ではないアイスクリーム(シャーベット、ジェラート)のことです。一般的にはフルーツやチョコレートなどを使ったものが多いのですが、上海では中国らしい素材を使ったアイスが多数見つかります。

ユニークなアイス
ユニークなアイスを揃える個人家営のアイス屋さんが増加中。

ブームが始まったのは2017年前後。

クラフトビール、クラフトカクテルなどが話題になり始め、国潮(中国らしさを売りにした国産品)の走りが出始めた時期だったと思います。

 私が「上海クラフトアイス」のおもしろさを知ったきっかけは、当時製作していた2018年版の『るるぶ上海』にて、オープンしたばかりだった「BONUS」を取材したこと。誌面では、酒酿(中国の酒粕)と咸蛋(アヒルの卵の塩漬け)のアイスを紹介しています。

その流れは今も続いていて、2022年夏もさらにユニークなフレーバーのものが登場中。

しかも、お店のショーケースに並んでいるものの多くが今年限定。アイス屋さんの店先を見れば、今年の上海のスイーツ界隈の流行りが把握できると言ってもよいと思います。

ということで今回は、数あるアイス屋さんのなかから私がよく行くエリアにあり、上海らしいクラフトアイスを出しているお店5店舗をピックアップ。食べ歩いてみました。

まずご紹介するのは、先ほども触れた上海クラフトアイスの先駆け的ショップ「BONUS」。

人気も健在で、ロックダウンの解除後すぐに猛暑が到来したこともあり連日賑わっています。

「BONUS」
「BONUS」。何回かの移転を経て烏魯木斉中路に定着。近所の人に愛されているアイス屋さん。

今年のお勧めは「楊梅(ヤンメイ/ヤマモモ)」(35元)と「茉莉花(モーリーホア/ジャスミン)」(25元)とのことなで、この二つの組み合わせのダブルで頼んでみました。

楊梅(上)は、初夏の上海の風物詩的果物。野生っぽい淡白な甘酸っぱさ(ラズベリーやカシスほど濃くない)をそのままシャーベットにした感じで、少しだけ塩が効いていました。ジャスミン(下)は、さわやか系かと思ったらミルク感たっぷり。牧場で売られているようなミルクのアイスにほんのりジャスミンの香りを足したような、やさしい風味でした。

「楊梅(ヤンメイ/ヤマモモ)」「茉莉花(モーリーホア/ジャスミン)」
上が楊梅で下がジャスミン

昨年、オーツミルクを使った「地球」アイスで大ブレイクした「Gelato Dal Cuore」は、上海のアイス好きの間では知らない人がいないお店。夜10時半まで営業しているので、食事やお酒のついでに立ち寄る人も多い人気店です。

「Gelato Dal Cuore」
「Gelato Dal Cuore」。陜西北路の本店のほか、デパ地下などにも出店している。

チョコミント、ピスタチオなどにも惹かれつつ、今回選んだのは「花椒鳳梨(ホアジャオフォンリー/花椒パイン)」「荔枝玫瑰(リージーメイグイ/ライチローズ)」(ダブル小カップ38元)。

花椒アイスは四川料理店でもデザートとしてちらほら人気。でも、こちらのアイスはほぼパイナップルの味で、もう少し花椒味が感じられてもいいかも、と思いました。ライチとローズのアイスはイメージどおり華やかな風味。日本でも流行りそうな味です。

こちらのお店、ほかにも「葱油拌面(ツォンヨウバンミェン/葱油和え麺)」なんていうアイスもあるのですが、この日は残念ながら売り切れでした。

「荔枝玫瑰」/「花椒鳳梨」
左が「荔枝玫瑰」で右が「花椒鳳梨」

話題の「飛天茅台(茅台酒アイス)」(49元)があるのは「FONTAINE」。

ベースはチョコレートです。茅台酒とチョコ、ものすごく合う!  名前を知らずに食べたら、高級な洋酒のアイスだと思うかも。アイスのアルコール度数は2%だそうで、子供への販売はしないとのことでした。

「飛天茅台」
「飛天茅台」

「FONTAINE」には、ほかにも「柚子獺祭」「山崎ウイスキー」など、アルコール系クラフトアイスがずらり。

店内はバーになっていて、普通にお酒も飲めるようになっています。

「FONTAINE」
「FONTAINE」。アイスは窓口でオーダー。店内はバーになっている。

 「粽子叶(ゾンズイエ/ちまきを巻く笹)」のアイスがあると聞いて気になっていたのが「Dip In Gelato」。

が、お店の人曰くメニューは3か月ごとに一新するのだそうで、ちまきアイスは端午節限定だったとのこと。

「Dip In Gelato」
「Dip In Gelato」。ロックダウンが長引いたエリアに位置。お店の前にまだ鉄柵が残っている。

ということで、今回は上海市内の桃の産地・南匯産の桃を使った「水密桃(シュイミータオ)」と、変わり種「鳳梨青檸仙人掌(フォンリーチンニンシェンレンジャン/パイン、ライム、カクタス)」(ダブル小カップ35元)をチョイス。

フルーツ系でありながら、素材の甘さのみでかなり大人の味。仙人掌、初めて味わいましたが、やや青臭いレモングラスのような風味でした。さっぱりしていて真夏の街歩き時にぴったり。

「鳳梨青檸仙人掌」/「水蜜桃」(右)
「鳳梨青檸仙人掌」(左)と「水蜜桃」(右)

最後は私の個人的な一押し店「MIMILATO」。

人通りの少ない一角に佇む地味なお店なのですが、枝豆、カボチャ、陳皮と小豆など、ほっこり系フレーバーの手作り感たっぷりアイスが絶品なのです。

「MIMILATO」は隠れた名店
「MIMILATO」は隠れた名店

中でも私の一押しは「青稞酒(チンクージウ/裸麦酒)」。チベットや雲南省でよく飲まれているあのお酒のアイスです。お酒なのにミルク感たっぷりですごくやさしい味わい。アクセントに裸麦の粒が入っています。

もう一つは「明前茶(ミンチェンチャー/龍井茶の新茶)」。清明節前に摘まれる茶葉のアイスです。これ、私としてはすべての抹茶、緑茶系アイスの中でNo. 1。アイスなのに、本当に新茶を飲んだかのような香ばしい風味と苦味が鼻に抜けて、しつこさ、人工的な甘さがゼロ。作った人を尊敬したくなるほどのおいしさです。

今回、この二つをダブル(小カップ35元)で頼んだところ、「最初に青稞酒を食べきってから明前茶を食べると、もっとお茶の味が濃厚になりますよ」と店員さん。

確かに、すごく濃厚でした。

「明前茶」/「青稞酒」
左が「明前茶」で右が「青稞酒」。私の今年のベストワンはこの組み合わせ。

以上、2022年夏現在のお勧めをご紹介しましたが、上海市内にはまだまだ私が気づいていない名店が無限にあると思います。

また、メニューはもちろんお店自体も期間限定のことが。

最初にご紹介した「BONUS」は、今は固定の店舗がありますが、昔は秋冬に上海蟹を販売していたお店を春夏だけ間借りして営業していたお店でした。

ですので、「あのお店のあのアイスを食べる!」などの目的は決めずに、散歩中に偶然見つけたお店で、その時期だけ出ているアイスを食べるのが「上海クラフトアイス」の楽しみ方だと思っています。

店舗情報

BONUS上海市烏魯木斉中路243号-3室
11:00-21:30
Gelato Dal Cuore上海市陜西北路600号-9室
10:00-22:30
FONTAINE上海市武康路98号
10:00-22:00
Dip In Gelato上海市富民路205号
12:30-22:00
MIMILATO上海市長楽路1251号
12:00-21:00

Writer
記事を書いてくれた人

萩原晶子

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