中医師・村木のディープチャイナ漢方 Vol.1「寒いときには黒い食材」

みなさんこんにちは、中医師の村木亜ゆみです。

「中医学とか漢方? 難しそう」と思うでしょ?
でも、漢方とか薬膳とか、身体にいいイメージありますよね。
ではなぜ身体にいいのでしょう? そういう話をこれからしていきます。

今回は「寒いときには黒い食材」という話題です。

「薬膳」は、漢方の知識に基づいて食材を選び、レシピを組み立てること。

中国に住んでいた頃、ママさん友達が「薬膳習ってますのホホホ」というので、数日後、実践しているか聞いたら「全然。だって難しいんですもの」。うーむ。

薬膳は、食材に関する以下の3つの理解が基本となります。

  1. 食材には、身体を温めるか冷やすか、どちらかの性質がある(ただし「どちらでもない」場合も)。
  2. 食材の持つ「酸苦甘辛鹹」の5つの味がそれぞれ違う「はたらき」がある。
    ※ここでいう鹹は「かん」と読み、塩辛い味を表しますが、塩のしょっぱさではなく旨味やミネラルととらえるとわかりやすいでしょう。
  3. 食材は、どの五臓六腑によいとされるか決まっている。
    ※五臓六腑とは、漢方や中医学でいう人体の内臓のことです。

これをひとまず覚えれば薬膳料理はそんなに難しくありません。

これに青赤黄白黒の五色がどの「五臓」と関連するかがわかるとなおよいでしょう。

これは、漢方や中医学の基本である「陰陽五行説」に基づいています。「陰陽五行説」は「陰陽論」と「五行説」に分かれています。

陰陽の「陰」は「日陰」の「陰」、つまり寒い(冷たい)とか、下とか暗いとか夜といったもの。
「陽」は「太陽」の「陽」、つまり暖かい(熱い)とか、上とか明るいといったものがグループに入ります。

これが食材にも当てはまり、身体を温めるか冷やすかという区別になります。

五行説は「木火土金水」(もくかどごんすい)という5つのアイテムで世の中は出来上がっていて、それぞれに様々なものが当てはまる、という考えです。

五のつく言葉、いろいろありますよね。「五体満足」とか「五穀豊穣」とか「五臓六腑」とか。
みんな頭に「五」がついています。

そろそろ難しくなってくる頃なので、なるべく簡単に説明すると、「陰陽五行説」とは世の中にある様々なものは、この五行、それぞれのグループに分けたとき、いずれかに属するという考え方です。

たとえば、「冬」は五行の「水グループ」です。
このグループには「寒い」「黒」「腎」「膀胱」「髪」「鹹(塩辛い味)」などが含まれます。

腎、膀胱、寒い、冬、水といったら寒くて冷えてトイレが近いイメージわいてきませんか。

漢方はこんな風に「つながっている」ことを重視します。

近年、女性雑誌でも漢方について取り上げられることが多くなり、「アンチエイジングには五臓の“腎”を黒い食材で補おう!」といったタイトルを見たことがあるでしょう。

よくわからないけど、アンチエイジングには黒いもの食べればいいのか…と思いながら読んだと思います。

すでにお話ししたとおり、漢方では人体の内臓を「五臓六腑」と表しますが、「五臓」の中の“腎”は水分の代謝のほかに、人の成長や生殖、老化に関係する臓とされています。黒いものを食べると“腎”のエネルギーを補うと考えられています。

加齢によってエネルギーが減ってくるので、黒いもので補う、という考えです。

水グループに属する腎は寒いのが嫌いです。寒いときには「黒いもの」「温めるもの」を摂るとよいとされています。

黒いものといえば…「黒~」とつく食材はありますね。黒豆、黒ゴマ、黒きくらげ、黒酢、黒糖等々、それから黒い色の食材単体でもいいですよ。昆布、海苔、ヒジキなどの海藻類もそうです。

身体を温めるものには、ネギやショウガなどの香辛料のほかに、羊肉やシナモンがあります。
また、お茶もいずれ詳しく書きますが、紅茶は身体を温めるとされています。

ティータイムのお茶を黒豆茶や紅茶にするだけでもOK! なるべく簡単に、そして無理なく続けられることが薬膳のポイントです。

黒い食材で腎のエネルギーを補いながら、春の到来を待ちましょう。

次回をお楽しみに。

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