日暮里の日本で唯一温州料理店「瓯味」の名物は紹興酒に合う海鮮メニュー

中国浙江省の最南端の海沿いに位置する温州は、東シナ海の多彩な海鮮料理で有名です。

一般に温州人は、もともと商売人気質の中国人の中でもとりわけ起業家精神の強い人たちと言われていて、海外各地にネットワークがあり、イタリアに多く住んでいます。でも、日本には温州出身の人は少ないため、ある時期まで専門の料理店はありませんでした。

こうしたなか「うちは日本でオンリーワンの温州料理店」と話すのが、2005年に来日した温州人の夏新さんです。

夏さんはご主人の黄さんと一緒にまず池袋に小さな温州料理の店を始めました。2007年頃のことです。その後、そこは店じまいし、2014年に東池袋に「温州坊」という店を始めます。そして、2021年11月、日暮里駅前に2号店となる「瓯味(おうみ)」をオープンしました。

いまの「ガチ中華」の主流がトウガラシや花椒を大量に使った麻辣料理であるのに対し、温州料理はこれらをほとんど使わず、さまざまな海鮮素材を使った蒸し煮料理が多いです。麻辣は苦手という人はけっこういるもので、そういう方にぜひおすすめしたいのが温州料理です。

これは温州風の魚(黄魚=イシモチ)の蒸し煮「清蒸黄魚」です。「清蒸」なので、蒸し汁は日本の醤油煮のようなしょっぱさではなく、風味と独特のコクのある優しいもので、紹興酒が合います。白酒を飲んで、羊肉串を齧るというような中国北方の豪快な食べ方ではなく、魚の身を箸で静かにつつきながら、しみじみいただく感じです。

温州には煮物料理が多く、厨房を覗くと、さまざまな煮物がつくってあります。これは「梅菜肉丸」という梅菜入りの肉団子です。

この隣は豚肉の干豆腐巻きです。これも紹興酒に合います。

この店のメニューには、温州風の麺料理もあります。これは温州風魚のつみれ麺で、福建のように団子にするのではなく、つみれがこのようにちぢれているのが特徴だそうです。

麺は中華麵とこの地方の米粉から選べますが、ぜひ米粉を試してみたいです。見た目は雲南の米線のようですが、温州では米粉(ビーフン)と呼ぶそうです。スープには麻辣系調味料はいっさい入っていませんが、酸味と特に胡椒がよく利いていて新鮮でした。

店内には、温州の海鮮料理の写真がいっぱい貼ってあります。

もう少し近くで見てみましょう。おいしそうですね。これらの海鮮は店のメニューには載っていません。海鮮の種類によっては事前予約要ですが、そのうちいくつかは予約なしでも注文できます。

まず試してみたいのが、マテ貝のネギソース蒸し「葱油蛏子」です。少し酸味の利いたこのソースがいいです。温州産の酢を使うため、上品な味わいです。

イシモチの醤油蒸しの「葱油黄鱼」。これは醤油を使っていますが、日本の醤油に比べまろやかです。

マナガツオの醤油煮「葱油鲳鱼」。

ハタの蒸し煮で「清蒸红石斑鱼」。

イカとセロリのさっぱり炒め「乌贼芹菜」。

ワタリガニを生姜で炒めた「爆炒梭子蟹」。

上海でよく食べる丸餅や野菜と一緒にワタリガニを炒めた「梭子蟹炒年糕」。

ワタリガニの身を温州酢や紹興酒などでマリネした冷菜の「江蟹生」。これも紹興酒に合います。

温州風の魚のつみれ入りスープ「鱼丸汤」。酸味と胡椒が利いています。

温州では客家料理である梅菜と豚バラ肉の醤油煮「梅菜扣肉」をよく食べるそうです。

主食は温州風ホルモン入りライスヌードル「猪脏粉」。

温州人が朝食としてよく食べる「糯米饭」は、スープで炊いたもち米の上に豚肉ミンチやシイタケの揚げ物、油かすをかけたものです。

これらの海鮮料理をいろいろ食べたいなら、大勢で行かないといけませんね。でも、またこういう店では、まだ客の少ない、早い時間から紹興酒を飲みながら、夏さんご夫婦とおしゃべりしつつ過ごすというのも悪くありません。ご夫婦にはふたり娘がいて、まだご結婚はされていませんが、都内で就職しているそうです。

何度かこの店を訪ねたのですが、あるとき、明るいうちかからひとりでいい気分になって紹興酒を飲んでいたら、いきなりひとりの若い女性が入店してきたことがありました。日本人でした。なぜこのような渋いガチ中華の店を彼女が知っているのだろう。話を聞くと、彼女は阿生さんのファンだそう。ツィッターを見てこの店を知ったとか。阿生さんの影響力はすごいなと思いました。

ちなみに瓯味日暮里店は客席数20名程度の小さな店で、温州坊池袋店は40名くらい入るそうです。いつか仲間を集めて温州の海鮮料理の食事会でもしてみたいものです。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

瓯味日暮里店

荒川区東日暮里5-51-2

03-6681-3832

温州坊池袋店

豊島区東池袋3-11-4 露木ビルB1F

03-3988-3838

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