東京では珍しい福建料理専門店「福清菜館」は池袋西口にある

中国福建省は東シナ海を隔てた台湾の西側に位置し、通年温暖な気候で、東側を海に面し、三方は険しい山地に囲まれています。

そういう風土から生まれた福建料理は、海鮮を多く使い、繊細かつ淡白な味つけが特徴で、滋味あふれる健康食がたくさんあります。ただし、四川料理などの刺激の強い料理に比べるとインパクトが感じられないせいか、東京では表向き福建料理をうたう中華料理店は多いとはいえません。

それでも、最近の「ガチ中華」ブームで、福建出身の、特に若い世代のオーナーたちの中に、他店との差別化を意識して福建料理をうたう店を開業する人たちが現れるようになっています。

東京ディープチャイナ研究会


池袋西口にある「福清菜館」もそうで、福建出身の任雄さん(弟)、任紅さん(姉)という姉弟がオーナーを務めています。ちなみに任雄さんは早稲田大学大学院で学んでいます。この店は2012年9月にオープンしています。

実はあの人気の中華フードコート「沸騰小吃城」もこの姉弟の経営です。もしかしたら、このフードコートには他店と違い、福建料理のメニューが多いことにお気づきの方もいたかもしれませんが、そういうわけなのです。

では、福清菜館で食べられる福建料理を紹介しましょう。

まず福建風酢豚の「茘枝肉(リージーロウ)」。

酢豚は一般に広東料理として知られていますが、これは福建風の酢豚で上品な味わいです。角煮に使う脂身と赤身が層になった五花肉に格子状の切れ目を入れ、片栗粉の衣をつけて丸めたかたちがライチ(茘枝)の実のようで、これを高温の油で揚げたことから名づけられました。最後に砂糖と香酢をからめて炒めるので、香しい匂いとともに、ほんのりした甘さが口に残ります。

福建料理はスープに定評があります。最も一般的な五目うま煮とろみスープの「雑燴湯(ザーホイタン)」は、鶏肉や魚介のつみれ、野菜などをたくさん入れて煮込んで、とろみをつけたスープです。

海鮮ダシを使ったあっさりした味つけで、海や山の幸に恵まれた福建を代表する一品です。広東料理のスープより塩気と胡椒が利いています。

実は、この店の名称の「福清」は福建省の省都である福州市の南方に位置する地方のことで、日本にはこの福清出身者が多いといわれています。福清菜館で食べられるのは、福建料理の中の地方料理である福清料理です。

福清風魚のつみれ団子入スープの「魚丸(ユィワン)」の特徴は、つみれの中に味をつけた豚のひき肉や野菜を刻んで入れてあることです。

ダシの利いた淡いスープはほの甘く、団子を割ると肉汁がこぼれ、味変が起こります。つみれ団子なので、モチモチ感はありませんが、やわらかく口の中で溶けていきます。

福清風サツマイモ団子の「龍高番薯丸(ロンガオファンシューワン)」も独特の味わいがあります。

福清ではよくサツマイモの粉で団子をつくるそうで、中に魚丸と同じような豚肉や野菜を入れます。団子は薄い緑色をして、モチモチ感と歯応えがあり、蒸してセイロにのせて食べてもいいし、春雨や青菜、ニンジンの細切りなどの野菜入りスープに入れてもおいしいです。

「燜麺(メンミエン)」は福清のとろみ汁麺です。

この店の燜麺にはワタリガニが一匹丸々入っていて、海鮮白湯スープとライスヌードルがマッチしています。実はこの麺料理は、長崎チャンポンのルーツといわれます。

福清には特色ある小吃があります。

煮豚入り小吃の「光餅夾(グアンビンジア)」です。

バンズは硬めでゴワゴワしていますが、甘く味つけされた煮豚や干し豆腐などの具が入っていて、「福建風バーガー」ともいわれます。明の将軍威継光が兵士のために創案したと伝えられ、福清では祖先を祀る清明節(4月5日前後)で供されてきたそうです。

カキ入り具だくさんの揚げパン「海蠣餅(ハイリービン)」は、地元の子供たちのおやつとして人気があるそうです。

見た目は日本の甘食のようですが、写真のように中を割ると、でんぷん粉の生地に刻んだカキやネギ、高菜、ニンジン、キャベツなどが入っています。これをお玉に入れて油で揚げてつくります。

埼玉県の西川口には、福建出身者が多く暮らしており、福建料理店がいくつかあります。西川口駅前に一般社団法人日中福清工商会があることから、この町に福清地方の出身者が多いことがわかります。これは昔でいう華僑会館のような存在で、しかも福州の一地方の組織であることは驚きです。

一般社団法人日中福清工商会はビル6F

 

ところで、福建人の飲食商売の特徴を示す面白い話があります。福清菜館はどちらかというと裏通りに面しているのですが、その反対側のトキワ通りに面した場所に町中華風の「餃子の達人」という店があります。

実はこの店は中で福清菜館とつながっていて、同じ厨房で料理をつくっています。先ほど述べたように、福建人は日本に多く暮らしていいますが、四川料理のようなインパクトの強い店に押されがちで、福建料理をうたう店は少ないです。

そこで、彼らは日本人向けと中国人向けに同じ店をふたつに分けて、表裏と看板も変えて(どっちの店がオモテとかウラとかないですが)営業しているのです。海外に華僑として多くの人たちを送り出してきた福建人ならではの商売の知恵といえるかもしれません。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

福清菜館 

豊島区西池袋1-43-9

03-4530-9161

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