横浜・伊勢佐木町で福建の名物バーガー「光餅」3店で食べ比べ

私の好きなお菓子のひとつに、沖縄・石垣島名物の「こんぺん」があります。

砂糖が多めに入ったパン生地の中に、ピーナッツをたっぷり使った餡が入った甘いお菓子で、琉球王国時代から伝わる銘菓だそうです。比較的日持ちのするお菓子のようで、関東でも現地から輸送されたものが沖縄物産店などで入手可能です。

きっかけは沖縄銘菓

先日ふとしたことから、この「こんぺん」が漢字で「光餅」と書かれることを知り、「アレッ、もしかして中国語?」と思い調べてみたところ、やはり中国から伝わったもののようでした。実際、福建でも「光餅」を食べる習慣があるとのこと。現地の読み方は福建語で「光餅(グォンミャン)」と読むようです。

確かに石垣島の地理条件に鑑みれば、福建地域の影響を受けた食文化が形成されても何の不思議もありません。

中国の光餅も食べてみたい!と思い、早速検索したところ、私の住む横浜でも伊勢佐木町辺りを中心に光餅を提供する中華料理店が何店舗かありました。

どうやら、福建料理における「光餅」はお菓子ではなく、多くの場合、焼いたパンに味つけされた豚肉などの具材をはさんで食べる、イタリアのパニーノのようなもので、日本語では「福建(風)バーガー」と呼んでいるお店もあるようです。また、具材をはさむ前が「光餅」で、具材をはさんだものは「光餅夾」と呼ぶこともあるようでした。

というわけで、早速、伊勢佐木町に向かいました。

伊勢佐木町ってどんな町?

JR根岸線を関内駅で降り、南口から港側に向かうと、皆さんご存知の横浜中華街は目と鼻の先ですが、今回向かう伊勢佐木町へは正反対、北口から出て港から離れる方向に歩きます。

50年ほど前、「伊勢佐木町ブルース」という曲が100万枚を超える大ヒットとなり全国的に知られるようになったこの町は、当時から、そして今なお横浜でも屈指のショッピングエリアです。近年は周辺の福富町や若葉町といった地域も含め、アジア系の店舗が増え韓国やタイなどの物産店や飲食店を数多く見かけます。

もちろん、中華圏から来た料理人が腕を振るうチャイニーズ中華のお店も増えています。この辺りを少し散策するだけで、アジア各国を旅したような気分が味わえる、ちょっと面白いエリアです。

本場の光餅に初遭遇!

最初に訪れたのは「日本沙県食坊(にほんさけんしょくぼう)」というお店。

メニューを見ると、拌麺やワンタン、蒸しスープなどが並び、近年都内にも増えている「沙県小吃(シャーシェンシャオチー)」に少しコンセプトが似たお店ですが、世界最多6万3000店という店舗数を誇る「沙県小吃」とは対照的に、こちらは執筆時点(2021年9月)では、この場所にしかないお店のようです。

日本沙県食坊のメニューはこちら

「中国B級グルメレストラン」の名に偽りなく、気取った雰囲気のない、ひとりでもフラッと入れるお店です。

ここでは2種類、豚肉がメインの「福建風バーガー(光餅)」と「のり入り福建風バーガー(紫菜餅)」を味わうことができました。

福建風バーガーは、表面に胡麻がたっぷりのったパン生地に味つけられた豚肉がはさまれていて、サイズは少し小さめのハンバーガーくらい。豚肉は甘さと塩味と少しの酸味が絶妙なバランスで、パン生地はサクサクした感じが強く歯ごたえもあります。

のり入り福建風バーガーはお肉感控えめ、海苔や野菜と少量の豚肉を塩味で炒めた具材を光餅に(はさむのではなく)詰め込んだスタイル。具材はやや薄味ですがこちらのほうがスープや麺と一緒に食べるのであれば合うのかもしれません。

この後、何店か福建バーガーを求めて彷徨いますが、「のり入りバーガー」を扱っているのはこのお店だけでした。

違うお店は違う味?違う具材?

調べたところ、最初に訪れた「日本沙県食坊」から徒歩圏内にもう2軒、光餅が食べられるお店があることがわかりましたので、日を改めて足を運んでみました。

2軒とも豚肉を挟んだタイプの光餅ですが、味つけはそれぞれ独特でした。

福富町にある「金満楼」の光餅は、厚みのある豚肉にピリッとした辛さが利いていて、ビールに合いそうな味。残念ながら、お店を訪れた時点では神奈川県も緊急事態宣言下のため、酒類の提供はなくビールは注文できません。

ということで、ふたつ注文した光餅のうち、ひとつは持ち帰ることにしました。「早めに食べてね~」とのコメント付きで快く打包帯走(テイクアウト)に応じていただけました。

持って帰ってビールをプシュッと開けて、光餅をガブリといったところで気がつきました。食感が店で食べたそれとは別物なのです。

お店で食べた時点では光餅はサクサク、なんならパサパサした感じすらあったのですが、時間が経つと間にはさまれた熱々の具材の蒸気を光餅が吸収して、しっとりとしたオトナの? 味わいに。

もしかしたら「早めに食べてね~」は「サクサク食感は時間とともに無くなるわよ~」というメッセージだった?  などと考えつつも、このしっとりとした感じも悪くない…。そんなことを思いながらビールと一緒に美味しくいただきました。

次にお邪魔したお店は、地下鉄の伊勢佐木長者町駅から徒歩3分の「聚香園」。

こちらの光餅は、とにかく具材があふれんばかりに(というか少しあふれているくらいに)挟まっていて、持った瞬間、「重っ!」という感じ。

そして味はというと、食べた瞬間、「濃厚っ!」。何より美味しい!

実はこのお店の光餅は税込み1個350円で、前の2軒より50円高いのですが、十分にその価値はある味と具材のボリュームでした。

最後にちょっとだけ歴史のお時間

「光餅」の出自について、少し調べてみました。

時は16世紀、当時の中国の王朝は「明」、中国の沿岸部では「倭寇」と呼ばれる武装商人が勢力を強めていました。武装商人といっても、実際には襲撃・海賊行為なども行っていました。

また「倭」という漢字が使われてはいますが、14世紀に活動した前期倭寇とは異なり、この時期の倭寇(後期倭寇)の構成員には日本人より、むしろ中国人のほうが多く含まれていたようです(諸説あり)。

明王は歴戦の勇将である戚継光にこの倭寇討伐を命じます。この際、天候が悪く炊事ができないときでも兵士たちが食するものがなくならないようにと、将軍 戚継光公の命により保存食として考案されたのが、将軍の名前から一文字取って名付けられたこの「光餅」、と伝えられています。ちなみに倭寇討伐は無事成功に終わっています。

現在ではアレンジされ、いろいろな具材を挟んでファーストフード感覚で気軽に食べられている光餅ですが、中国・福建では高級ホテルなどで開かれるフォーマルな食事つきの会合などでも提供されることもあるそうです。

今まであまり意識したことのなかった福建バーガー(光餅)。実は提供しているお店が身近でも結構あることを知り、少し驚きました。

今回、私が伊勢佐木町で見つけることができたのは、具材が「味付け豚肉」と「のり入り」の二種類だけでしたが、他にもこんな具材の光餅夾が日本でも食べられるよ~というのがありましたら、ぜひ教えてください! 東京ディープチャイナのFacebookページに投稿いただけたらうれしいです。機会を見つけて食べに行きたいと思います。

あるいは光餅だけ買ってきて、はさむ具材は自分たちでいろいろと作って楽しむのも面白いかも。そんな思いをめぐらせている今日この頃です。

店舗情報

日本沙県食坊

横浜市中区伊勢佐木町3-107 ストーク田名瀬ビル1F
045-308-8222
https://saken-shokubo.jp/

金満楼

神奈川県横浜市中区福富町東通38-5 東38番館1F
045-315-3588

聚香園

神奈川県横浜市中区曙町1-4
045-262-9935

Writer
記事を書いてくれた人

青木 邦彦

プロフィール

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