高田馬場の激辛湖南料理「湘遇TOKYO」は話題の隠れ家風「マジ中華」

東京ディープチャイナ研究会では、親しい中国系オーナーのみなさんと一緒に新しくオープンした注目の店を訪ね歩いています。

平たく言えば、本場の中華を広める活動をしている私たちに、彼らが協力してくれているのですが、オーナーたちにとっても市場調査の意味合いがあります。

いま東京でどんな中華料理が流行しているのか。客層はどんな人たちなのか。オーナーたちも各地を訪ね歩いて実食し、自分の店にその料理を出せるかなど、検討するためなのです。彼らはとても研究熱心です。

先日、あるオーナーと訪ねたのは、高田馬場に2020年12月にオープンした湖南料理店「湘遇Tokyo」でした。

高田馬場のチャイニーズ中華の多くは早稲田通り沿いにあるのですが、この店は表通りから少し離れた神田川沿いの閑静な場所にあります。斬新なデザインのビルの1階にあるのがその店です。なんとなく、これまでイメージしていた中華の店とは印象が違います。

店に入ると、オーナーの李小軒さんが出迎えてくれました。彼は湖南省出身で34歳という若いオーナーです。実は、彼はこの店以外に同じ高田馬場と上野にある「李厨」という湖南料理店を経営しています。

いま湖南料理は、東京で最も注目されている中華のジャンルのひとつです。まだ店の数は少なく、稀少な存在です。李さんは言います。「日本に来て約10年ですが、東京に故郷の味を食べさせてくれる湖南料理の店はほとんどありませんでした。だったら、自分がつくろうと思ったのです」。

湖南省は北緯24〜30度(沖縄県石垣島南~鹿児島県トカラ列島口之島)、東経108〜114度、長江中流域の南岸に位置し、湖北省や重慶市、貴州省、広西チワン族自治区、広東省、江西省に囲まれています。

省都の長沙から上海までは約880km(東京・熊本間くらい)の距離にあります。中国では湖南省は「湘(シャン)」と呼ばれています。

湖南料理は中国八大料理のひとつである「湘菜(シャンツァイ)/湖南菜(フーナンツァイ)」。最大の特徴は多種なトウガラシを使った激辛な味つけで、中国で最も激辛な料理として認知されています。この辛さについては、湖南省が亜熱帯に属しており、その暑さに対処するため発汗を促す辛い味つけが好まれるようになったという説があります。

日本でも「辛さ」で知られる四川料理との最大の違いは、使用する「花椒(ホワジャオ)=中国山椒」の量。湖南料理では、舌が痺れる(麻=マー)より酸味のある辛さ(酸辣=スアンラー)ほうが好まれます。また、食材としては塩漬けした豚肉を燻製した「腊肉(ラーロウ)」が有名です。

では、「湘遇TOKYO」が供する湖南料理の数々を紹介しましょう。

まずは冷菜の「擂辣椒皮蛋(レイラージャオピーダン)」。ピータンと焼き青トウガラシの和え物で、ピータンの甘さで多少抑えられるとはいえ、相当辛いです。湖南の家庭料理で、お酒のつまみによくあいます。

これも冷菜の「焼椒牛肉(シャオジャオニウロウ)」。牛肉と焼き青トウガラシの和え物で、こちらはもっと辛いです。口に入れると、舌がピリピリしてきて、すぐにビールか何か飲み物がほしくなります。

こちらは「石門肥腸(シーメンフェイチャン)」。

直訳すれば、石門風ホルモンです。中国東北地方の家庭料理である「溜肥腸(リウフェイチャン)」とトウチャ族(湖南省や湖北省、重慶市、貴州省に暮らす少数民族)の調理法を組み合わせた一品といわれます。

豚の大腸にトウガラシ、陳皮、花椒、トウバンジャンなどを加えて少量の油で長めの時間炒めて水分を飛ばしたもので、1990年代に湖南省常徳市石門県(長沙の北西にあります)で生まれた比較的新しい料理とされます。いまでは湖南料理を代表する料理に加えられています。内臓のコリコリ食感がたまりません。

これは「干香蒸腊肥腸(ガンシャンジョンラーフェイチャン)」。燻製豚ホルモンと燻製豆腐の蒸し物です。干香とは花椒やハッカク、ショウガなどを加えてご当地名物の燻製豆腐で、輪切りにした燻製豚ホルモン、青トウガラシ、乾燥トウガラシ、ネギなどを加え炒めた後、蒸し焼きにした一品です。

これは「火焙魚(フオペイユィ)」で小魚のピリ辛炒めです。伝統的な湖南料理の一品で、内臓を取り除いた小魚をカリカリになるまで火で炙り、いったん冷やした後、細かく刻んだ赤トウガラシ、青トウガラシ、ネギ、ニンニク、ショウガ、オイスターソース、生醤油などと一緒に炒め、最後にゴマ油で香りを付けて完成。歯ごたえと辛さのおかげで、やっぱりお酒がどんどん進んでしまいます。

これは「農家一碗香(ノンジアイーワンシャン)」。豚肉と目玉焼きの農家風炒め物です。五花肉(皮付き豚バラ肉)や目玉焼きをショウガ、ニンニク、青トウガラシ、乾燥トウガラシを加えて炒めた素朴な一品で湖南省では一般的な家庭料理です。

これは「干豆角蒸扣肉(ガンドウジャオジョンコウロウ)」。干しインゲンと豚バラの蒸し物です。茹でた五花肉に生醤油を塗って油で火を通した後、さっと炒めた干しインゲンなどを載せて蒸します。蒸し上がったら器にひっくり返して盛り付けます。湖南風東坡肉とも言うべき料理で、豚の皮・脂身・赤身の3つの食感が楽しめ、辛くありません。

これは湖南料理というわけではないのですが、手作り肉団子スープの「手打肉丸湯(ショウダーロウワンタン)」。

肉団子、キノコ、目玉焼きなどが入ったあっさり味スープです。とにかくどの料理もほとんど激辛のこの店では、箸休め、いや口休めになるありがたい一品です。

湖南料理は激辛ですが、使用されるトウガラシは品種や加工法が多様で、単に辛いだけではありません。また、先ほどの干豆角蒸扣肉のような辛くない料理もあります。

湖南料理を食べるとき、知っておくといい中国語があります。「ちょい辛」を意味する中国語「微辣(ウェイ・ラー)」です。辛さの尺度は人によって違いますが、ひとまず現地並みにはしないで、日本人向けに少し抑えめに調理してくれるはずです。「ウェイ」はいつもの発声より少し高くし、「ラー」はそこから落とす感じで言えば伝わります。

ところで、この店の客層は、高田馬場という場所柄、ほとんど中国の若い人たちばかりでした。

でも、実はこの店にお忍びで訪れている有名人がいるそうです。

ホラン千秋さんがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「apollostation Drive Discovery PRESS」では、全国の食べ物やさまざまな場所にスポットを当て、日本の魅力を再発見していくコーナーがあります。

apollostation Drive Discovery PRESS

9月12日(日)の放送で、ミュージシャンのホフディランの小宮山雄飛さんが「湘遇Tokyo」を紹介していたのです。

小宮山さんがこの1~2年ハマっているのが、「中国の方が、中国のお客さんに向けてやっている中華」、すなわち「マジ中華」だそうです。町中華ではなく、マジ中華と名づけたところがチャーミングですね。

小宮山さんによると、マジ中華を訪れる魅力は、まるで中国に行ったかのような「プチ・トリップというか、ちょっとした小旅行を全国各地の町で楽しめること」。とはいえ、“マジ中華”を楽しむ小宮山さんでさえも、いまだにお店に入るときは“大丈夫かな……!?”と言いつつも内心ドキドキだそうで「でも(逆に)それがいいんですよ」だとか。

これはまったくといっていいほど「東京ディープチャイナ」のコンセプトと同じではないですか。とてもうれしい話です。

それだけではありません。小宮山さんは食べログにも「湘遇Tokyo」について投稿しています。タイトルは「お店はカフェ風ながら味はガツンと美味しい!」。

「中国のローカルグルメだという木桶飯。(中略)骨抜きとんそくと唐辛子炒め木桶ご飯を注文。味濃いめの豚足がご飯に合ってめちゃくちゃ美味しい!」

小宮山さんは2021年1月に訪問しているようです。

ちょっと行ってみたくなりませんか。この話を聞かせたら、あの若いオーナーの喜ぶ顔が思い浮かびます。みなさま、まだ知られざる激辛中華に挑戦してみてください。

(東京ディープチャイナ研究会)

店舗情報

湘遇Tokyo

豊島区高田3-10-22
キャッスルアンザイ 1F
03-4362-6555

李厨高田馬場店

新宿区高田馬場3-4-16
MKビル 2F
03-6886-9751

李厨上野店

台東区上野7-3-2
03-6231-7760

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