これが京中華のからしそばだ!「鳳麟」に京&ガチ中華を食べに行こう

これが京中華のからしそばだ!「鳳麟」に京&ガチ中華を食べに行こう

地下鉄くいな橋は中国人留学生が多い龍谷大学の最寄り駅だ。

そのため、このあたりは京都南部のガチ中華地帯になっている。その龍大の真ん前の業務スーパーの隣にずっと気になっている中華料理屋がある。

広東料理「鳳麟」。表に出ているランチメニューは青椒肉絲定食や麻婆豆腐定食などの定番ばかり。年季の入った外観と言い、「鳳麟」は町中華っぽい。

ある日、友人が「鳳麟? 何回も行ったことあるよ。ご主人は中国人」と教えてくれた。鳳麟って、実はガチ中華だったのか!

広東料理「鳳麟」
周辺で働く人に人気の鳳麟は平日のランチタイムが一番忙しいそうだ

ガチ中華、町中華という言葉はよく聞くけれど、京都にはもう一つ「京中華」というジャンルがある。

京中華とは、にんにくをあまり使わず、辛味も控えめで全体的にあっさり薄味に仕上げた中華料理らしい。

その京中華料理を初めて作ったと言われるのは、大正時代に来日した広東人の高嘉吉さんだ。祇園の「支那料理ハマムラ」の料理長として迎えられた高嘉吉さんは、祇園という花街という土地柄、口が臭くならないよう香辛料を控えめであっさりした京中華を創り出したのだった。

鳳舞から伝わった京中華の数々
鳳舞から伝わった京中華の数々

その高嘉吉さんが北区の紫明通りに開いた中華料理屋が「鳳舞」。

鳳舞は惜しまれながらも2009年に閉店したが、鳳舞で働いていた厨師がその味を受け継ぐ店を開いた。そのうちの一軒が鳳麟だという。となると、鳳麟はガチ中華であり、さらに京中華でもあるというむちゃくちゃ稀有な店なのだ。

とにかく鳳麟に行って、食べてみなくては! 

京都のガチ中華店と言えば、四川や東北料理屋が圧倒的に多いけれど、広東料理とはっきり書いている鳳麟はかなりの少数派。ガチ広東料理にも惹かれるが、鳳麟の看板料理にもなっている京中華は必食だ。

現在、鳳麟のオーナーシェフは2代目。劉さんが調理担当、奥さんの李さんがお客さん係をしている。二人とも山東省の煙台出身で2001年に来日した。

残留孤児だったと言われる先代料理人から鳳麟を引き継いだのは11~12年前。その時に鳳麟に伝わっている鳳舞の京中華も引き継いだそうだ。

李さんは「うちは中国人より日本人のお客が多くて、鳳舞の味を求めて遠くから来てくれるんです。広東料理店ですけど、四川や東北、上海料理もありますよ」と言われる。それに加え、もちろん夫妻のふるさとの山東料理も食べられる。

中国にいた頃はホテルのレストランの厨師をされていた劉さん
中国にいた頃はホテルのレストランの厨師をされていた劉さん

私たちは、おすすめの甘香鶏(ガンシャンジー)、甘香茄子(ガンシャンチエズ)、葱爆鶏脖肉(ツォンバオジーボーロウ)、捞麺(ラオミェン)、韮黄春巻(ジュウホワンチュンジュエン)、羊肉湯(ヤンロウタン)を食べた。

甘香茄子

その名の通り甘くておいしい茄子炒め。塩も唐辛子も入っているけれど、最後に甘さが来る。ほくっとした茄子も美味しく、スイートポテトの茄子バージョンみたい。

漢字にすると、たった二文字の捞麺が、京中華を代表する「からしそば」だ。

捞麺とは、中国北部では穴がいくつもあいた道具を通して作る麺のことだけれど、からしそばを作った高嘉吉さんのふるさとの広東省では汁なしの混ぜ麺をさす。

ここはもちろん広東式で、からしそばには汁はない。味付けはその名の通り芥子で溶いた醤油、酢であえた麺に鶏ガラスープと昆布でとったあんをかけたものだ。

テレビで紹介されると、タレントが「(芥子が)ツーンときた~」と大げさに言うけれど、そんなことはない。鳳麟の芥子味はひかえめ。ほのかな芥子と酢の酸味、あっさり味のとろみスープがもちもちの太麺とからみあって、おいしい~。

「辛味が足りない時は、(春巻きのタレ用の)からしを足してくださいね」と言われたが、私はそのままでも十分いけると思う。

捞麺

根強い日本人ファンがいるからしそばだが、中国人のお客の評判はいまいちらしい。種類の違う辛味があわないのかもしれない。

韮黄春巻

小麦粉生地の皮はサクサクっと軽く、シャキシャキ食感の筍がおいしい。このまま食べてもいけるが、酢醤油にも醤油とからしにつけて食べてもいい。

羊肉湯
羊肉湯

お酢が入った酸っぱい羊肉湯は夫妻のふるさとの山東式。羊肉湯はいろんな店で食べられるけれど、酸っぱいのはかなり珍しい。

葱爆鶏脖肉

葱と鶏の首の部分の肉を唐辛子の辛味をきかせて炒めたもの。少し噛み応えのある鶏肉にピリ辛味がよくあう。ビールが欲しくなる味。

私が友人たちと鳳麟で晩ご飯を食べた日、隣は日本人の家族連れ4人だった。李さんとのやりとりから何度も来ている常連さんらしい。テーブルには韮黄春巻、からしそば、焼売、焼き餃子などが並んでいた。

李さんは「風舞の味を求めてやってくるお客さんは、もう80代だから新しい料理は食べないわ。昔から知っている味ばかりね。でも、息子さんや家族を連れて来るから若い世代の人たちが新しい料理にチャレンジしてくれる」と言われる。

また、近年のガチ中華ブームでお客が好む味も変わってきたらしい。かつての日本人は花椒の麻(しびれる)な辛味には慣れていなかったので辛味を抑えて作っていたけれど、今では水煮魚など、好んでガチな中華料理を選ぶお客さんも増えてきたそうだ。

鳳麟は、鳳舞の味を求めて足を運んでくれるお客さんのため、鳳舞の味を守り続けている。

そしてガチな中華料理も食べられる京都でも珍しいお店だ。ぜひからしそばと一緒にガチな中華料理を食べに行ってほしい。

広東料理「鳳麟」の李さん
鳳舞の味は広東料理、メニューも四川料理がやや目につく。夫妻のふるさとの山東料理はどれかわからなかった。羊肉湯の味つけが珍しいので質問したら、「酢を入れたこの味が山東の味」と言われた時の李さんのうれしそうな顔が忘れられない。

(浜井幸子)

店舗情報

鳳麟

広東料理「鳳麟」

京都市伏見区竹田久保町62-1
足立ハイツ1階
075-641-8848

営業時間
火曜定休(祝日の場合は休みなし)
11:30~14:30、17:00~22:00

Writer
記事を書いてくれた人

浜井 幸子

プロフィール

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