こんにちは!中原美波です。
今回はJR御徒町駅から徒歩5分程、アメ横からほど近い場所にある「上野牛魔王牛肉ラーメン」さんにお邪魔させていただきました。大学の学部の友人、小林まどかさんと森あこさんが取材に同行してくれました。
こちらのお店は2023年の2月1日、中国出身のご夫婦がオープンした「牛肉麺」を名物としたガチ中華のお店です。
「牛肉麺」は地域によって味付けは異なるものの、中国各地や台湾などで広く親しまれている牛肉入りラーメンです。
このお店の特徴は、「担々麺」、「チャーシュー麺」、「五目ラーメン」など日本人になじみのある麺料理とともに、「牛肉麺」をはじめとしたガチ中華麺がいろいろ食べられるという点です。
また、店長であるご主人の王冰さんが河南省平頂山市出身ということで、小麦を材料とした麺料理やラム肉を使った料理など、メニューから河南省の特色がみられるのもまた大きな特徴です。
河南省は黄河流域のすぐ南に位置しますが、河南省を含む華北・西北地域では気候などの関係から、一般に小麦粉や羊肉を扱った料理が多いといわれています。
そして驚きなのが、それらの麺料理が、注文を受けてからすべて手打ちでつくられていること!
店内中に生地を豪快にたたきつける音など、ご主人が麺を力一杯こねている音が鳴り響いています。客席からは厨房が見えるようになっており、ご主人の職人技が見られます。待ち時間も楽しいです。
それにしても一つ一つ手打ちとは、かなりの肉体労働ですね。なんと1日でこの手打ち作業が150回に及ぶこともあるのだとか!「おかげで肩と腕があんなにがっちり鍛えられてるんです(笑)」と奥様は笑っておっしゃいました。
ご主人は今年で来日してちょうど10年になりますが、今年こちらのお店をオープンされたのも、地元の味を多くの人に知ってもらいたいとの思いがあったからだそうです。そのような思いはこの手打ち麺にすべて現れているように感じます。
麺の太さ等はお客様の要望に合わせても変えてもらえるとのことなので、一つ一つの作業にかなり手間がかけられています。
今回の私たちの目的は、ガチ中華麺の特徴や日本のラーメンとの違いについてレポートすること。豊富なメニューの中でも、日本では馴染みのない麺料理に絞って、私たち女子学生3名が食べ比べてみることになりました!
私たちが日本で食べ馴染みのあるラーメンは、中国では‘日式拉麺’などといわれます。日本で食べられるラーメンと中国の麺料理は違ったものだと考えられます。
私自身、まだガチ中華麺をあまり食べたことがなく、それらの違いがわかっていませんでしたが、今回様々な麺料理をいただいて、特徴やその違いが見えてきました。
今回、私たちがオーダーしたのは「牛魔王牛肉ラーメン」、「河南ラム肉チャングオ麺」、「河南ラム肉麺」、「油かけ麺」、「ラム肉(炒め)麺」、「冷やし牛肉麺」の6品です。
それでは料理を順番に紹介します。
牛魔王牛肉ラーメン~日本人も大好き一番人気のメニュー
こちらはお店の名前にもなっている麺料理で、いわゆる牛肉麺です。お店の一番人気メニューだそうで、日本人の方もよく頼まれるそうです。
上には牛肉が豪快に、ネギもたっぷり入れられており、綺麗なオレンジ色のスープが食欲をそそります。麺を持ち上げてみると、牛肉の下からたっぷりの厚揚げとともにつるつるした麺が出てきました。日本のラーメンより少し太めです。麺は小麦の甘みがあっておいしい!
太めの麺によく絡むスープは、見た目と違って辛さはあまりなくマイルドであるものの、なんと18種類もの中国調味料を使っているとのことで、様々な旨みがギュッと凝縮されています。味はトマトと似たような酸味がほんのりあり、塩味とともに爽やかさすら感じました。
そして上にのったボリュームある牛肉は簡単に噛み切れる柔らかさで脂身もちょうど良く、とてもおいしいです。具材もシンプル、味も独特なクセなどなく日本の豚骨ラーメンなどと少し近く、多くの方が好まれるのではないかと思いました。
河南ラム肉チャングオ麺~河南省を代表する麺料理「烩面」
こちらはご主人の出身地、河南省の特色がよく表れた料理です。中国語では「烩面(ホイミエン)」といい、河南省を代表する麺料理です。
ちなみに‘チャングオ(炝锅)’とはまず炒めた具材や調味料に水を入れて煮立て、そこに麺を入れるという調理方法のことを指します。
こちらの麺はご覧の通り平たくてとても太いです。麺の幅はまるでほうとうのようですが食感はほうとうよりもちもち、つるつるしており、分厚い水餃子の皮のような感覚です。麺がほどよく溶け込んだ少しとろみのあるスープは、マイルドな味わいとなっており、さらにそこに煮込んだラム肉の旨み、ごま油のような香りが広がり、じっくり体に染みる美味しさです。
ラム肉はあまり食べ馴染みのない方もいらっしゃると思いますが、じっくり煮込んだこちらのラム肉は柔らかくて脂もさっぱりしており非常に食べやすいです。麺との相性も抜群です。具材はラム肉の他に、チンゲンサイ、パクチー、干豆腐、ネギ、昆布等が入っており、特にパクチーはまろやかな麺とスープの良いアクセントになっていました!
ラム肉(炒め)麺~辛いもの好きな方におすすめ
こちらは炒め麺で、麺の太さはうどんより少し細いくらいです。具材はラム肉、キクラゲ、玉ねぎ、トマト、ネギ、もやしなどと野菜たっぷりです。
見た目はほんのり赤味がありますが、トマトと香辛料の赤さなのでしょうか、麺によく絡んだトロトロしたソースはトマトのような爽やかな香りが広がります。
でも、辛くないと思って食べていると、最後にガツンと激辛カレーのような辛味を感じます。
辛いものが好きな小林さんは余裕そうに食べていましたが、辛いものがあまり得意でない森さん、辛いものが少しだけ得意という程度の私にはだいぶ辛く感じました。
自家製の泡椒などの香辛料を使用しているようで、食べていると口がヒリヒリしてきます。辛いもの好きな方におすすめの一品です。
油かけ麺~ガチ中華麺デビューにおすすめ
こちらは、以前その画数の多さから話題となった‘ビャンビャン麺’という幅広汁なし麺の一種です。
主に陝西省でメジャーな料理であり、小麦で作られた幅広い麺に、その名の通り、最後に仕上げとして高温の油をかけることが特徴です。ヨウポー麺(油がはねる、の意)とも表記されます。
テーブルに運ばれてきたとたん、かけられたごま油の香ばしい香りが広がりました。そしてこちらは麺全体に油がよく絡むまで豪快に混ぜてから食べるのがポイントです。
麺の太さは「河南ラム肉チャングオ麺」に近いですが、今回いただいた麺料理の中で一番食べ応えのある太さ、弾力であるように感じました。
端のちぢれた幅広い麺はごま油がよく絡んでいて、麺の小麦の甘みとの相性抜群です!
具材はチンゲンサイ、ネギとシンプルで日常的に食べたくなるおいしさです。また、トッピングとしてかかっていたニンニクもよいアクセントとなっており、この「麺×ごま油×ニンニク」の組み合わせはラーメンなど麺料理好きの日本人にとってなじみのある味に近いように感じます。味も辛くなく食べやすいため、ガチ中華麺デビューにおすすめの一品です。
河南ラム肉麺~麺のおこげがぱりぱりと良い食感
中国語では「羊肉焖面」といって、こちらも河南省の特色が表れた料理です。
ご主人によると河南省は麺好きな方が多く、毎日食べることも多いのだとか。またラム肉が使用されるのは、イスラム教徒が多いことも関係しているそうです。
日本の焼きそばに似た見た目をしていて、鉄板焼きのような香ばしい香りを漂わせていました。しかしこの麺は今回食べた料理の中でもダントツで細いです!
太麺からこんな細麺まで、幅広い種類の麺を提供できるのはかなり魅力的ですね。中国醤油等で味付けされているようで、お味は黒炒飯に近いように感じます。
そこにセロリやもやし、ネギ、ラム肉が炒められており、日本人も馴染みのある焼きそばにかなり似ています。
さらにポイントはところどころ麺がおこげになっているという点!
このおこげがぱりぱりと良い食感で、本当に美味しくて病みつきになります。麺も細く、ラム肉もあっさりしていて重くないので軽食感覚でぺろりと食べられてしまいます。日本の夏祭りの屋台に、ぜひこの「羊肉焖面」、登場してほしいです。
冷やし牛肉麺~私の一番のお気に入り
汁なし牛肉麺です。
こちらはこれまで紹介したものとは違ってひんやり冷たく、まるで冷やし中華のようにさっぱりいただける夏限定メニューです。麺は少し細めでつるつるしているのが特徴で、まさに夏に食べたくなるようなのどごしです。
ネギや細切りしたきゅうり、脂身が少ないさっぱりとした牛肉がふんだんに混ぜられており、爽やかさをプラスしてくれます。
味付けは日本の料理にたとえて説明するのは少し難しいように感じました。自家製の泡椒やお醤油が使われており、あとからほんのりヒリヒリ感じるような甘辛い味のソースが良く絡んでいます。韓国料理で使用される香辛料に少し似た甘辛さ、中国醤油の塩味、そして辛味と様々な味が楽しめます!こちらも後から辛さを感じさせますが、冷たいためか「ラム肉(炒め)麺」ほど辛くないようで、これからの暑い夏にまた食べたくなる美味しさでした。
以上6品を頂きましたが、どれも美味しくボリューミーで大満足でした。
なかでも特に私のお気に入りだったのは、最後の「冷やし牛肉麺」でした!
もともと汁なし麺のほうが好きなこともあるのですが、香辛料をはじめとしたさまざまな調味料の風味を感じられる点、そして何より、夏に食べたい! と思えるガチ中華麺はこれが初めてという点でイチオシでした。
実は私は普段あまりラーメンを食べることがなく、特に夏場は一切食べないことも稀ではありません。しかしこちらの汁なし牛肉麺は、麺本来のつるつる感を感じられるほか、ひんやり、かつさっぱりとしたラム肉が使用されているなどといった点で、日ごろラーメンを食べることがない人にとってもさらりと食べられてしまうほどのさっぱり感があり、私にとってかなり新鮮でした。
最初にお話ししたように、今回の目的は、ガチ中華麺の特徴や日本のラーメンとの違いを探ることでした。
私なりのその答えとしては「ガチ中華麺は日本でいうラーメンとは味も具材もかなり違う新感覚の料理だということ」です。
河南省ラム肉チャングオ麺や、油かけ麺など、日本人にとって食べ馴染みあるような味に近いものもありましたが、一つ一つ考えてみると、麺においては手打ちならではの麺の太さや食感の大きな違い、小麦の強い味わいがあったり、スープにおいては日本でメジャーな豚骨ベースというよりも、香辛料やその他牛肉やラム肉を基調としたベースであったり、そもそも汁なし麺が多かったり、具材においてはラム肉などの地域の食材や野菜をふんだんに盛り込んだものだったりと、各麺料理によってテイストが全く変わってきます。
その点で、味噌、しょうゆ、塩、豚骨などのスープに、コシのある黄色いちぢれ麺、チャーシューや玉子、メンマなどが入った日本のラーメンとは異なります。
しかし、ガチ中華麺を日本のラーメンというくくりで比較すれば、かなり異なるものといえますが、日本のご当地麺というくくりでみれば、その特徴はかなり近いものなのではないかと考えられます。
日本においても、ほうとうやうどんなど、同じ麺料理といっても使われる具材や汁など多種多様で地域の特色が活かされています。しかし中国は国土も広いため、日本よりもさらに多様で特徴的な麺料理がいただけるということではないでしょうか。ガチ中華麺は開拓し甲斐があると思いました!
それらを踏まえた全体の感想として、ガチ中華麺というのは
- 地域の特色が強く表れている
- 中国人の食に対する思いが伝わる
といった特徴があり、一言で表すならば、「中国料理の良さが詰まった料理」だといえるのではないかと思いました!
今回は特に小麦麺やラム肉など河南省ならではの特色が色濃く表れていましたが、その他にも油かけ麺など陝西省ならではのものもあり、各地域の地理的特徴を活かした料理ばかりでした。
また、一つ一つ手打ちされている生地をはじめに手間をかけて作られている料理からは、地元の味を食べてもらいたいというご主人の思いや、食事を大切にする中国の食文化を感じさせられました。
最後に、今回ガチ中華に挑戦してくれた二人の友人、小林さんと森さんの感想も紹介します。
小林まどかさん
「私はまだガチ中華に馴染みがなく、今回いただいたメニューも自分から頼もうとはしないものばかりでしたが、口にしてみると素直おいしいと感じるものがほとんどでした。
麺の太さや形も様々で、味に合わせて麺も変えているのではないでしょうか。なおガチ中華麺は、日本のラーメンとは違って、一言では表せないような複雑なスープの味が特徴的で、‘もう一度あの味を食べたい’というリピーターを生み出すと思います。
私は「河南ラム肉チャングオ麺」が気に入りました。麺がほうとうのように太く平たく、そこにやさしく、そこまでクセのないスープの味が絡んでやみつきになる料理でした。テーブルに置いてある自家製ラー油を入れて味変するなどの楽しみ方もでき、人気であるのも納得だと思いました」
森あこさん
「もともと辛いものはあまり得意ではなく、ガチ中華初挑戦の私からすると、一番のお気に入りはやはり、一番食べやすい「河南ラム肉チャングオ麺」でした。
日本人好みな味で、ラム肉の臭さは全くありません。苦手意識があったパクチーも入っていましたが、スープの味と相性よく食べられました!
全体的に日本のラーメンとは違い、味が複雑で美味しいですが、その分それらの味を説明するのが難しいと思いました。今回はこれまで日本にはない麺料理をいただきましたが、逆にこの店のチャーシュー麺など日本に普通にある麺料理を注文して、日本のものとどう違うのかも気になりました。
また、ガラス越しに見える麺を打っているマッチョなご主人が印象的で、奥様はじめ他の従業員の方々も明るく感じの良い方たちばかりで緊張感なく楽しめました」
小林さん、森さんどちらもイチオシは「河南ラム肉チャングオ麺」でした。その他のメニューも、日頃食べることのない多様な調味料や香辛料を使っており、確かに言葉にするのが難しいのですが、新鮮で美味しかったそうです。
なお今回私たちが注文したガチ麺に加え、店内には店長であるご主人のおすすめメニューがずらりと掲示されています。麺料理以外もおいしそうです!
店内はカウンター以外にもテーブル席も充実しています。複数人でお店に足を運び、気になる料理をいくつか頼んでみんなでシェアするのもおすすめです。
また、おまけの紹介ですが、各テーブルには自家製ラー油が置いてあります。こちらを使ってお好みに辛さをプラスすることができます。
スプーンですくいあげると、中からどっさりと油で揚げた香ばしい胡麻が出てきます。私はこちらを「河南ラム肉チャングオ麺」に入れてみたのですが、なんと超激辛でした(笑)!
ラー油自体のうまみの後から、青唐辛子のような鋭い辛さが口の中に広がります。こちらを食べたら一気に顔や耳が熱くなり、湯気が出そうでした(笑)。
この自家製ラー油はお客様に人気なそうで、辛い辛いといいながら食べちゃうそうです。辛い物好きな方はぜひ挑戦してみて下さい!
それから、ご厚意で特色のあるドリンクを試飲させていただいたので、そちらも紹介したいと思います。
厨房の片隅には、左から「フルーツ酒」、「人参酒」、「鹿鞭酒」が並んでいます。ちなみに「鹿鞭酒」とは聞き馴染みのない方も多いのではないかと思いますが、鹿を白酒でつけたものだそうで、そのアルコール度数は56度程だとか。香りだけでもかなりアルコールの強さを感じました(笑)。
まだそこまでお酒に強くない私たちは朝鮮人参を2カ月ほど漬け込んだ「人参酒」をいただいてみました(写真右)。
最初は人参のほのかな甘みがあるのですが、あとからグッとアルコールを感じる味で喉がかなり温まります。こちらはアルコール度数も14度ほどで、朝鮮人参というその食材から女性から人気だそうです! ぜひ皆さんもガチ中華をいただきながら、お店手作りの本格的なお酒に挑戦してみて下さい。
絶え間なくお客様が来店する中、取材にご協力くださったお店の皆さま、何から何までご丁寧に対応下さりありがとうございました!
‘複雑’ともいえるガチ中華麺の奥深さをぜひ皆さんもこの「上野牛魔王牛肉ラーメン」さんで感じてみてはいかがでしょうか!
(中原美波)
店舗情報
上野牛魔王牛肉ラーメン
台東区上野4-8-9 OAKビルB1
03-5817-8327
https://uenogyumaogyunikuramen.owst.jp
Writer
記事を書いてくれた人
中原 美波
代表からのひとこと
中原さん、レポートありがとう。
みなさんの様子を見ながら、ガチ中華のデビューには、麺料理から始めるのがいいと思いました。日本人は麺が好きなので、ガチ中華麺の複雑な味わいを体験するのは、多くの人にとって面白いはずです。
麺を6品も頼んで食べ比べるなんて、普通はしないものですけど、それぞれ麺もスープも具材も調理法も違っていて、味もいろいろで、こんなに多彩な麺料理が同じ店で食べられることってすごいなとあらためて思いました。
中原さんも書いているように、中国河南省はガチ中華麺の宝庫です。みんなが気に入った「河南ラム肉チャングオ麺」(烩面(ホイミエン))はぼくも大好きで、現地の河南省で食べたことがあります。パクチーがいっぱいのっていましたが、みんなそれほど気にならなかったようですね。
でもさすがに麺6品食べ比べというのは大変だったので、次回は一品料理を食べに行きましょう。ガチ中華の世界は奥が深いので、乞う!ご期待です。