蘭州拉麺とは別物 日本で唯一ここだけ水天宮前の回族風味「西北拉麺」

蘭州拉麺とは別物 日本で唯一ここだけ水天宮前の回族風味「西北拉麺」

厦門の思い出

ライター|辻岡義昌

ライターのツジです。

私は学生時代に中国福建省の厦門に留学して以来、中国の文化にどハマりしてしまい、それ以来、長期休みのたびに中国に通い、料理、お茶、酒、音楽などをディグして布教する活動を行っていました。

そんなところ、東京ディープチャイナの書籍に出会い、東京のガチな中華を探すというコンセプトに感動し、活動に参加することになりました。

そんな私が厦門に留学していた頃、食べていた忘れられない味があります。それが「西北拉麺」というお店です。

私の留学していた学校の近くに店舗があり、あまりのうまさに週3ほどのペースで食べに行っていました。

西北拉麺の看板メニューは「牛肉拌麺」で、コシのある汁なし麺の上に、香辛料で牛そぼろとパクチーがガバッとのった料理です。

元は、回族という中国の西北地域に多く住むイスラム教を信仰する民族の料理で、中華でよく使用される豚は一切使用せず、牛を使用しています。

同じ回族の料理だと蘭州拉麺が有名ですが、牛肉ベースの麺料理という共通点はあるものの全く違った味わいの料理です。

西北拉麺というお店は、厦門在住の回族によって、厦門市内にてかなりチェーン展開されているそうなのですが、そんな私の思い出の味とも言えるお店が、なんと東京に一店舗あるとの情報を聞きつけこの度レポートすることにしました。

日本唯一の味

そのお店は、水天宮の駅近くにあります。
中国で通っていた「西北拉麺」よりかなり綺麗でオシャレな外見ですが、白と緑というイスラムっぽさを感じさせる色合いが素敵です。

お店には「ハラールフード」の証明があり、豚肉はもちろん豚由来の食材が使用されていないため、イスラムの方でも安心です。

西北拉麺|外観

店内はカウンターのみとなっており、食券で食べたいメニューを購入できます。
こちらの看板メニューは、先程紹介した牛肉拌麺と汁ありの「牛骨薬膳拉麺」。
ちなみに麺系のメニューは大盛無料(特盛は金額が異なります)という太っ腹ぶりです。

券売機

まずは厦門時代の思い出、牛肉拌麺から。
こちらを注文するとまずはスープが出てきます。が、このスープがとにかく美味しい。

多数の薬膳を使用している透き通ったスープなのですが、味の深みがすごく、他に似ている料理が思いつきません。

実は私はこのスープを飲むまで、西北拉麺の味を完全に忘れていたのですが、一口飲んだ瞬間に味の記憶が約10年ぶりにフラッシュバックしました。

牛肉拌麺のスープ

それほど美味しく、厦門の味が忠実に再現されていました。

スープに舌鼓を打っていると、おまちかねの牛肉拌麺が出来上がります。
これまた薬膳の効いた牛肉そぼろにザーサイが添えられ、パクチーがこれでもかとかけられたダイナミックな風貌です。

時間が経つと麺が固まってしまうため、提供されたらアツアツのうちにすぐにかき混ぜることが推奨されています。

素早くかき混ぜて口の中に入れると肉そぼろとパクチー、ザーサイの三者のインパクトある味がガツンと口の中に広がります。
カウンターには辣油、香酢、ニンニクがあるので、こちらもお好みで。

牛肉拌麺

もう一つの看板メニューである牛骨薬膳拉麺は恥ずかしながら、厦門では食べたことがなかったのですが、こちらのお店にて初めて食べてみました。前述の透き通った薬膳スープを使っていて、同じくコシの強い麺が使われています。

見た目は蘭州拉麺にも似ていますが、使う具や香辛料の違いからか味は全くの別物です。

牛骨薬膳拉麺

看板メニューの他にも、回教特有の羊を使った料理や一品メニューもあって、ちょい飲みにも困らない布陣です。

「こんな素晴らしい味を日本に持ってきてくれてありがとう」

そんな気持ちで満たされると共に、このお店を日本で開いてくれた人に興味が湧きました。そこで、お店を開いた方、オーナーの増渕さんにもお話を聞いてみました。

外食が趣味のオーナーが出会った病みつきの味

西北拉麺と出会ったきっかけは?

実家が石屋だったこともあり、石材業が盛んな厦門とは昔から縁がありました。
18歳くらいの時に父の紹介で入った石材の商社の出張で初めて厦門に行った際に、西北拉麺を食べてその味の虜になりました。
西北拉麺はその時すでに日本の石屋の業界では有名なお店だったので。

中国現地の西北拉麺店舗

そこから通うようになったのですね。

いえ、実はそこから一旦石材の業界から離れ、インテリアの学校に通ったり、DJをしたり、日焼けサロンを経営したりしていました。最終的に25歳で家業を継ぐ決心をして、再び石材の業界に戻りました。

それによって出張で、また厦門に頻繁に行くことになり、そのたびに西北拉麺にも足を運びました。

出張はふた月に1回以上はあり、1回の出張が2~3泊なのですが、1回の出張で3~4回西北拉麺に行くこともあったので、かなりの回数食べていましたね。
仕事のお客様と出張する時もあるのですが、一度紹介すると、もう一回食べたくなって、帰るまでにもう一回行ってしまうことが多いですね(笑)

おかげでおよそ200店舗ほどあると言われている西北拉麺の店舗のうち50くらいは行きましたね。
お店によって味やメニューが微妙に違ったりして面白いです。

壁に掛かるメニュー

西北拉麺を始めたきっかけは?

もともと石屋の職業柄、接待などで外食が多く、いろんな美味しいご飯を食べるのが好きで食への興味が強かったということもあり、大好きな西北拉麺を日本でも食べられるようにしたいと思いも強かったので、日本でのオープンを考え始めました。

他の石屋の同業者も、石屋のお客様もみんな美味しいと言っていたため、これはいけるだろうという気持ちもありましたね。

なるほど、そこでお店を開くことにしたのですね。

はい、ただ実はそこからが長くて、西北拉麺は厦門在住の回族のマーさんという方が創設者で、そのマーさんに日本にお店を出したいという旨を伝えたのですが、回族ではないからダメだということで断られてしまいました。そこから厦門に行くたびにマーさんのお店に足を運び、熱意を伝え続けました。

そこから6年、マーさんから「本当にやりたいのか?」と連絡が来て、ようやく西北拉麺を日本に出店する許可が出ました。

厦門のお店

6年!? それは粘り勝ちですね。そこでようやくお店の開業に行き着いたのですね。

はい、ただそこからもいろんなハードルがありました。作り方を伝授してもらうための費用だったり、絶対にハラールのお店にしたりなどいろいろな条件がありました。

その中でもシェフを1年間厦門に修行へ行かせなければならないというのが、結構大変でした。その期間の給料や家賃も払う必要があったので。

結果的に日本在住の中国人の知り合いに相談して、劉さんというシェフを紹介してもらいました。劉さんは長年中華料理のシェフとして働いていた真摯な方で、私の熱意を汲んでくれたのか、お会いしたその日に厦門への修行の件を快諾してくれました。

劉さんは順調に修行を終え、9ヶ月で日本へ戻ってきたのですが、そこからも問題が山積みでした。

さらに問題があったんですか!どのような?

とりわけ一番の問題は、材料の問題でした。
日本で手に入る食材で同じ味を出すのが難しく、何度も何度も試作を重ねました。

小麦粉や牛肉などは日本のもののほうが質が良くてキレイで、逆に味が本場のものと離れてしまって苦労しました。

逆に香辛料なんかは日本で手に入るものだと高価なわりに質も悪いため、厦門から船便で取り寄せたりもしています。

さらに、仕込みで牛肉と牛骨をかなり時間をかけて煮込まないといけないのも大変です。
同じ回族の料理で蘭州拉麺は数多くあるのですが、うちのような拉麺を出す店がないのは、仕込みに手間がかかりすぎるから、誰も真似しないというのもあるかもしれないですね。蘭州拉麺とは使用する漢方・スパイスの種類も数も違うみたいで、うちでは10種類以上を使ってスープを作っています。

そうやって日本での味の再現に私と劉さん、もう一人のシェフで何度も試行錯誤を重ね、なんとか納得できるものを完成させることができました。
完成した時の喜びはひとしおでしたね。

完成したメニュー

そうだったのですね。オープンしてから3年とのことですが、今後の展望などはどうですか?

今は劉さんはやめてしまいましたが、味は他のシェフに引き継ぎ、今も改良を重ねています。私自身も本業の石屋の代表をしながら、週2くらいで厨房に立っています。
やはりお店に立つのは楽しいですね。

西北拉麺を元々知っているお客様が来てくれるのはもちろん、知らないであろうお客様もたくさん来てくれるのも嬉しいです。

店舗情報

西北拉麺

西北拉麺|外観

中央区日本橋蛎殻町2-2-2 山口ビル1F
03-6661-9994
https://twitter.com/xibeiramen

Writer
記事を書いてくれた人

辻岡義昌

プロフィール

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