名古屋にもあるぞ！極上「ガチ中華」四川料理の「華香苑」で食欲増進

みなさん、こんにちは。日本人夫「川」と中国人妻「雲」の食いしん坊夫婦（川雲）です。

７月上旬、名古屋に行ったので、名古屋のガチ中華にも行ってみようと、中国のSNS小紅書(RED)で探してみると、評判の良い店が何軒も出てきました。

どこに行こうか迷った末、新栄の四川料理店「華香苑」（名古屋市中区新栄）に行ってみました。四川省瀘州出身の曾さん夫婦が2011年3月に開いた店です。

店の前に着いたのが13:00前、車の温度計は外気温34℃を示し、うだるような暑さ、こんな日にこそ四川料理の「麻辣」で食欲増進です。

幸い目の前にコインパーキングがあり、ほとんど歩かずに済みました。公共交通機関で行く場合は地下鉄東山線新栄町駅から500mほどです。

店に入ると、多くの日本人ビジネスマンで賑わっていました。店員同士では中国語を話しており、雲は「四川方言だ」と聞き分けていました。

13:00時を過ぎても日本人ビジネスマンが入ってきます。途中、若い中国人が3人入ってきたのを除くと、他の客は皆、日本人のようで、地元に愛されている店のようです。

卓上にはランチメニューだけ置いてあったので、中国人の老板娘(ラオバンニャン、女将の意味)に単品で注文できるかと聞くと、この時間だったら大丈夫と、単品メニューを持ってきてくれました。

ランチで混み合う時間帯の単品の注文は避けた方が良さそうです。注文する前に、老板娘に出身地を訪ねたところ、老板娘、料理を担当するご主人の曾さん、他の料理人も皆、四川省瀘州の出身ということでした。

瀘州と本稿記載の料理などの発祥地、及び四川料理の下位分類
(Google Mapを利用し川が作成)

上河幇菜は、成都、楽山、徳陽など四川西部の料理です。成都の別名から蓉菜とも呼ばれます。庶民的で、四川料理の中では相対的に薄味です(飽くまでも四川料理の中では、です)。

下河幇菜は、重慶、達州、南充など四川東部の料理です。重慶の別名から渝菜とも呼ばれます。庶民的で、四川料理の中でも麻辣が効いています。

小河幇菜は、自貢、瀘州、宜賓など四川南部の料理です。自貢産の塩から塩幇菜とも呼ばれます。富裕な塩商の下で発展したため豪気です。四川料理の中では相対的に濃厚な味付けです。

※ 四川料理の下位分類には諸説あります。

瀘州は四川省東南部、重慶から長江を100kmほど遡ったところにあります。ライチなどの果物や、「窖(ジャオ)」という穴の中で発酵させて蒸留する白酒の「瀘州老窖(ルージョウラオジャオ)」で有名です。

古い窖の「老窖」には麹菌が沢山住み着いて酒を美味しくします。瀘州市南部の古藺県の「郎酒」や、瀘州市と隣接する宜賓市の「五糧液」も有名な白酒で、さらに、「茅台酒」の貴州省仁懐市茅台鎮とも隣接していて、この一帯は中国有数の白酒生産エリアになっています。

瀘州はまた、塩分を含んだ井戸水を汲み上げて乾燥させた「井塩」で有名な自貢市にも隣接しています。

すでに述べたように、四川料理は成都を中心とする「上河幇菜」、重慶を中心とする「下河幇菜」、そして瀘州、宜賓、自貢一帯の「小河幇菜」に分かれ、「小河幇菜」は自貢の塩商の下に発展したため「塩幇菜」とも呼ばれています。

その中で、瀘州は長江と沱江の合流点に位置し川の恵みの「河鮮」が豊富で、その料理は「瀘州河鮮菜」とも言われ、魚料理も得意です。

良い酒や塩、新鮮な川魚が使える環境で育まれた瀘州の料理人が作る四川料理、否が応でも期待が高まります。しかし、昼に車で行ったので残念ながら瀘州老窖はお預けです。

さて、メニューの内容はマチ中華とガチ中華が混在しているような感じで、料理名は基本的に日本語で中国語併記がありませんが、いくつかは日本語がなく中国語のままです。

「本格四川料理」の欄には定番の四川料理名が並んでいます。

魚の四川風煮込み(水煮魚)、酸菜魚、四川風魚焼き(烤魚)、牛肉の四川風煮込み(水煮牛肉)、豚肉の四川風煮込み(水煮肉)、夫妻肺片、よだれ鶏(口水鶏)、ホルモンの四川風炒め(爆炒肥腸)、ホルモン鍋(水煮肥腸)、四川風鶏肉の辛子炒め(辣子鶏)、豚の腎臓炒め(火爆腰花)、豚の腎臓煮込み(水煮腰花)、酸辣粉、麻辣香鍋、陳麻婆豆腐、干焼魚、鶏の干鍋(乾鍋鶏)、ホルモンの干鍋(乾鍋肥腸)、牛肉の干鍋(乾鍋牛肉)、ホルモンの唐辛子炒め(辣椒炒肥腸)、ビール鴨(啤酒鴨)、毛血旺、マーラータン(麻辣燙)、麻辣鴨頭、唐辛子と鶏肉炒め(辣椒炒鶏)、鶏肉の四川風炒め(宮保鶏丁)と、定番四川料理が目白押しです。

その他の欄にも四川料理が散らばって載っています。

※ メニューに中国語名の記載がなかったものは川雲が訳して(　)内に記載しました。

美味しそうな料理が沢山並んでいるので、何を注文するか迷うところですが、瀘州の料理人と聞いたら魚料理は外せず、酸菜魚を真っ先に注文、次に同じ塩幇菜の自貢で生まれた牛肉の四川風煮込み(水煮牛肉)、老板娘のオススメの夫妻肺片、そして野菜も摂らなければとインゲンの四川風炒め(乾煸四季豆)を注文しました。

辛さは全部ピリ辛にしてもらいました。雲は辛い料理にはやっぱりご飯！とご飯も注文、川は2人で4皿も注文してしまったので、ご飯は頼まず様子見です。注文して数分すると、最初の料理が出され、その後、すぐに4皿全てが揃いました。

定番の凉菜で、茹でて冷ました牛のモツに酢、ラー油や唐辛子などを合わせた香辛料タレが良く絡んで食欲を引き出します。最初の一皿に打ってつけです。1930年代、郭朝華と張田政の夫婦が成都で作ったと言われています。

注文時にピリ辛にしてもらったので辛さは控えめでしたが、藤椒(青花椒、熟す前の花椒)の鮮烈な麻(痺れ感)があったので、麻が苦手な方は注文時に控え目で注文した方が良いかもしれません。

白身魚と高菜に似た中国西南地方のからし菜の漬物「酸菜」を煮たものです。魚の下に大量の酸菜が埋もれていました。中国東北地方には白菜の漬物の「酸菜」がありますが、それとは違うものです。本場では草魚などの白身魚を使います。

この店では「巴沙魚(バーシャーユィ)」というナマズの仲間「バサ」を使っていて、クセがなくシタビラメのような滑らかで柔らかい食感です。酸菜から出た酸味に藤椒の鮮烈なフルーティさと痺れ感が効いていて食欲をそそります。元々重慶の一部地域で食べられていたのが1990年代から全国に広まって行ったそうです。

川は90年代、四川出身の友人に連れて行ってもらった四川省政府の北京駐在事務所の食堂で初めてこの料理を食べてご飯が止まらなくなりました。当時の北京では四川の酸菜はまだ一般に流通しておらず、酸菜魚が食べられる店は限られていました。それが今では日本の四川料理店でもこの料理を提供するところが多く、嬉しい限りです。

醤油ベースのスープと唐辛子と花椒でスライスした牛肉を煮込んだ料理です。肉の下に野菜が仕込んであります。下に敷いてある野菜は店や時期によって変わります。今回はキャベツとモヤシが入っていました。川は味付けはもちろん、肉と野菜が一緒に摂れるこの料理をよく注文します。1930年代、自貢の名料理人、範吉安が開発したと言われています。

これも川雲がよく注文する四川料理の一つで、インゲンを唐辛子などとカラッと炒めたものです。若干ウェット感がありましたが、こちらも藤椒を使っていて香りが良く、塩加減が絶妙で無限に食べられそうです。

ここまで結構食べたのですが、麻と辣の刺激や酸味で食欲が沸き、最後に麺も食べたくなりました。

メニューにない宜賓名物、激辛汁なし麺の「燃麺」は作れるか聞いたところ、残念ながら、日本の麺では味が出せないので作れないということだったので、老板娘オススメの四川風冷麺を追加オーダーしてしまいました。

酢醤油ベースのタレに唐辛子、麺の下にモヤシが隠れていて混ぜて食べます。辛い冷やし中華のような味付けでさっぱりしています。四川など中国西南地区では夏にこの「凉麺」という冷麺を食べます。麺は現地のものが手に入らないので、この店では日本の麺を使っているとのことです。老板娘が、夏に一時帰国する時は、必ず凉麺を食べると言っていました。

辛い四川料理を食べて体が火照ってきたので、最後に、熱を発散させる作用のある凉茶の「王老吉(ワンラオジー)」を飲んで中和させました。