中華の激戦区といわれる池袋西口ですが、まさに文字通り、知らないうちに、お店がどんどん新しく変わっていきます。
一度訪たことのあるお店が、いつしかほかの店になったりすると、とても寂しく感じます。また、時の流れでもあります。池袋にいること20数年、自分は保守的な人間のせいか、私が行く中華料理店は決まっています。
池袋駅西口を出て、右手に行きロマンス通りに入って、あのロサ会館向かいのビルの4階にある『四季海岸』が私のお気に入りです。
『四季海岸』は、2007年にオープンした池袋で初の火鍋『逸品火鍋』の姉妹店です。
2013年12月に開業された時、先ずはその場所に驚きました。本店の「逸品火鍋」と本当に目と鼻の先で、階数も同じ、窓越しで挨拶ができるほどの至近距離です。それに料理も共通する部分があり、第三者の私から見ていても、お客さんが入るのか心配になりました。
年明けに家族で食べに行きました。
今でも鮮明に覚えていますが、広い店内はほぼ満席でした。今は入口に配置してますが、当時厨房の前にはとても大きな生け簀があって、中にいる魚や伊勢海老、貝類などが次から次へとすくい出され、大盛況でした。
『四季海岸』のメニューの豊富さにも注目すべきです。こちらのガチ四川料理も本格的で、さすが有名店で料理長を務めたシェフの腕は言う事なし!
近年では串焼きなどバーベキュー料理も人気のようで、きっとどなたにでも好きな一品が見つけられるでしょう。
私がよく注文するエビチリですが、プリップリの海老に特製のソースを絡め、辛さの中酸味と甘みもあって、残りのソースまで食べてしまいたい一品です。
四川料理と言えば、麻婆豆腐ですね。最初の一口で、辛さと痺れが一気に口の中で広がり、汗がいっきに噴出し、のどにやけどでもするのかと思ってしまいましたが、少し落ち着いたら、口に残ったのは旨さのみです。これは夏こそ食べ、汗をたくさん流すと爽快感が半端ないです。
この料理は簡単に言うと、揚げた豚肉に甘酢をかけた料理です。スライスしたヒレ肉を使い、その肉の柔らかさでおいしさが決まる料理でもあります。麻婆豆腐の辛さの後にはこのありがたい一品は、絶妙なタイミングです。甘酸っぱいソースが口の中を調和してくれ、胃袋もこれで落ち着きます。
海鮮好きな私のこれもおすすめです。当日朝、市場から仕入れてきた新鮮な素材しか出せないおいしさが凝縮されていて、口に入れた瞬間、贅沢な気分になります。
四季海岸の「火鍋」コースです。
さすが池袋火鍋の先駆けではあり、使っている火鍋のスープの材料は、出来合いのインスタントものではなく、独自の配合でオリジナルな味を出しています。中国の伝統的なオシドリ火鍋のほか、海鮮火鍋、薬膳火鍋などのコースもあり、その日の気分で好きな火鍋をチョイスできるのも嬉しいことです。
オシドリ火鍋(鸳鸯火锅)って何? と思う方もいらっしゃるか思いますので、簡単に説明いたします。
“鴛鴦(おしどり)鍋”には専用の鍋を使います。鍋の形は丸型で、真ん中をSの字に仕切ってあります。1983年、四川省の重慶で火鍋屋を開店した何(か)さんという方が辛い物の好きな人と苦手な人が一つの鍋で楽しめるように、鍋にS字の仕切りを作ってもらったそうです。赤い方(紅湯)は激辛スープで、白い方(白湯)は濃厚豚骨スープです。
最初作った鍋の仕切りを上から見ると鳥の形に見えるため、縁起の良い『鴛鴦(おしどり)鍋』と名付けたそうです。その後、鍋を洗う時に指を怪我することがあるので、仕切りのカーブを大きく改良したところ、太極の陰陽にみえるので、“陰陽鍋”とも言います。
これがわかればあなたも火鍋通です。火鍋を囲むとき欲張って、二種類のスープで味わいたくなるでしょう。
大人数で行かれる場合は、この「二層銅鍋」をぜひ食べてみて欲しいです。
カエルや海老、ザリガニ、渡り蟹、スペアリブ、豚足など10種類の具材から2種類選べ、味も麻辣か甘辛味噌のどちらかを選べます。しっかり味の染み込んだ野菜が沢山入っていて、お得な一品です。
何よりテーブルに運ばれてきて、みんなが歓声を上げ、笑顔になる時、注文して良かったと思うし、ガッツポーズをしたくなります。なにしろ迫力がすごくて、間違いなく映えます。
私はランチの時もよく四季海岸を利用しています。
メイン料理とデザートの他、サラダ、あえ物、漬物、味玉、焼き餃子などの副菜も充実です。バイキング形式で、食べられる分だけ自由に取り、食後のコーヒーまたはお茶まで付き、1000円でお釣りがくるのは財布に優しいですね。
私が注文するのはいつも酸菜魚で、辛いものの苦手な私でもこのピリ辛な味には惹かれ癖になり、時々食べたくなります。
中華の激戦区、池袋で逸品グループがガチ中華で不動の地位を保てるのは、やはり経営者の人間性が大切だと思います。
振り返ってみると、大連が出身の綾川陽子社長と知り合って、もう20年になります。彼女の人に対する謙虚な態度、腰の低さは全然かわってません。
綾川社長の口癖は、「日本に恩返しをしたい。日本人のお客さんが沢山来てもらいたい」です。
その言葉は最初の「逸品火鍋」をオープンされる前から聞いていました。多くの中国人オーナーのように、看板とメニューのデザインを中国でつくるのではなく、日本人のお客さんが入店しやすいように、日本の会社に注文。味にも工夫をし、客がまた客を呼び、段々と知名度をあげ、そこで「四季海岸」をオープンする運びとなりました。
新店四季海岸は場所探しから大変苦労されました。池袋西口で一番の好立地で、大家さんは、外国人に貸さないと何回も断られたのですが、綾川社長の熱意と評判が少しずつ大家さんの心を動かし、今のビルの4階を貸してくれました。またのちに5階の逸局カラオケも貸してくれることになりました。
当初逸品火鍋と四季海岸の両店の距離の近さから社内の反対もあったようですが、オープンすると、集客の心配はなく、半年も経たないうちに黒字経営となりました。社長としての彼女の経営方針と判断力は素晴らしいです! また、周りにいる従業員の方たちが長年ついてきてくれるのも、成功の秘訣でしょう。
(和田茜)
店舗情報
四季海岸
豊島区西池袋1-36-8
ロマンスビル 4F
03-6912-6108
Writer
記事を書いてくれた人
和田 茜
代表からひとこと
四季海岸はぼくも何度か訪ねたことがあります。
とにかくメニューが豊富で驚きました。また和田さんも書いてらっしゃる麻辣ザリガニや牛ガエルの入った「二層銅鍋」を隣の席の若い中国のお客さんが注文し、出てきたときには驚いて、写真を撮らせてもらったことがあります。
この店の店内は広くて、落ち着いた雰囲気があります。個室も用意されています。
先日、和田さんと一緒に綾川陽子社長とお会いしましたが、和田さんの言うようにとても腰が低く、丁寧にお話しになる方だと思いました。
ぼくは彼女の出身の大連の事情に詳しく、友人知人も多いのですが、どの方もとても親日的で、日本に対する理解も深いです。ちょっと台湾の人たちにも感じが似ています。
9月の「聖地deガチ中華フェスn池袋」で、和田さん主催で「四季海岸」で宴を催すことになりました。ぼくも参加します。ぜひみなさまご参加いただければうれしいです。