先週の2月11日は神田味坊さんの25周年記念の大宴会!
神田味坊さんは10店舗以上ある味坊集団の中の最初のお店で、私がずっと行きたかった店だ。肉の中では圧倒的に羊が好きな私は、料理本専門書店の柴田書店が出した「羊料理」と言う本を持っている。この中に羊香味坊(味坊集団の1つ)の烤羊肉串や手把羊(塩ゆで羊)が紹介されており、それがむちゃくちゃおいしそうだった。
この本の印象が強いので私には神田味坊さんも東北料理店というよりも、とにかく羊がうまい店というイメージが強い。友達数人と行くより、数多くの羊料理を楽しめる神田味坊開店25周年記念宴会は、まさにチャンス到来だった。

残留孤児2世として1995年12月に来日。最初はパン工場で働いたり、朝から晩まで働きづめだった。1997年足立区に「味坊」という拉麺屋を開店。当時から東北料理を出していたそうだが、あまり人気はなかった。2000年1月、神田ガード下に「神田味坊」を開店。以後、梁さんの快進撃は続き、現在13店舗を経営。東京のガチ中華ブームをけん引する一人でもあり、代表者でもある。
味坊集団の代表、梁さんと言えば、ネットや雑誌で見ると、丸顔ににこ~っと感動的にすばらしい笑顔。この笑顔に好感を持たない人なんて、いないんじゃないだろうか。
初めてお会いした梁さんは、いつもの最高の笑顔だった。中国の屋台飯を紹介した自分の著書を見てもらうと、真っ先に西北部の粉物のページをあけ、「これ、いいね」。
東北地方のチチハル出身の梁さんにとっては、小麦粉で作ったマントウ、餅(パン)、包子は主食。一瞬ながら梁さんの小麦粉愛といおうか、粉物愛が感じられた。雲南省麗江の豚の血のソーセージを見つけると、「東北のスンデに似てる。これが麗江にあるの?」。北方人は南方人に比べて、ふるさとの食に対する愛が強い気がするけれど、梁さんもその一人に違いない。

さて、初めて行く神田味坊(以下、さんは省略)はガード下だけあって、パッと見からして広くはない。私は宴会開始1時間前についたのだけど、すでに店の前には待機している人が数名。「今日は70人、来るそうですよ」と言われ、思わず絶句。いったいどこに70名が入るんやろ? あとで知ったことだが、70名もの参加者が2回転して、140名も参加したらしい。
私の友人も申し込んだが、満員で受け付けてもらえなかった。それぐらい盛況だった。二部屋に分かれた2階席は、とにかくギュウギュウ。乾杯までしばし、おあずけを食っている間に料理がバンバンバンと出てきた。

羊料理が6(5)品、豚料理が2品、牛料理が1品。羊、羊、羊、時々豚と牛というパワフル肉料理コースだ!

味坊はガチ中華のお店なのに、羊料理にあう美味しいワインが飲めることでも有名。ワインにぴったりな羊の内臓の異なる部位を使った冷菜盛り合わせが最初に出てきた。しっかりお醤油味で何もつけなくても美味しい。

極薄の干し豆腐の前菜。塩、酢、砂糖などで味をつけた干し豆腐は、さっぱり。誰もが好きな味。これから続く料理のため、とにかく口に重い味が残らないように作られていた。


馬鈴薯で作った幅広の春雨は、東北地方を代表する和え物。馬鈴薯でんぷんで作った板春雨のムキュムキュした食感にはまる。普通は豚肉が入っていないので、豚肉入りの東北大拉皮はかなり珍しいんじゃないだろうか。

パクチーと青唐辛子の割合で印象が全く異なる。前回、大阪で食べたのは青唐辛子たっぷりで激辛だったが、味坊のは香菜多めで青唐辛子がいいアクセントになっている。

日本式の極薄生地の焼き餃子ではなく、生地がしっかりした大陸の焼き餃子。表面はカリッとだけど、中はもっちり食感の餃子は食べ応えあり! 定番の豚肉餡でみんな好きな味だから1個と言わず、もっと食べたかった。


もちっとした生地はまさに耳朶のような軟らかさ。水餃子は生地の美味しさが一番重要だと思うけれど、味坊の水餃子は圧倒的に生地がうまい!

本日の主役登場! 玉ねぎ、卵、塩などが入ったマリネ液に一晩漬けこんだラムの肩肉を炭火で焼き、クミン、唐辛子でしっかり味をつけたもの。串に刺した一個一個の羊肉の塊がでっかいから満足感もでっかい。味は見ためよりスパイシー!

骨付き羊肉を塩ゆでしたシンプルな料理。にんにくダレ、韮菜花(韮の花の塩漬けのペースト)、ゴマダレの3種のタレで食べる。ほどよい塩味が癖になる韮菜花につけて食べるのが個人的にはおすすめ。骨の周囲の肉を骨から引きはがしながら、食べていると、羊を遊牧している草原のパオにいる気分(笑)

脂が少ない肩ロース肉は片栗粉をまぶしているので、やわらかく、つるっとした食感。それが同じくつるっとした長ネギとよくあうんだな。塩で味をつけただけとは思えない完成度。



白菜で作る酸菜は東北地方のお漬物。寒さが厳しすぎて、冬は野菜が食べられなかった東北では、新鮮な野菜のかわりに酸菜を食べる。酸菜と豚肉の相性は抜群で、酸菜の酸味がこってりした豚バラ肉をさっぱりさせてくれる。酸菜と豚バラ肉のうまみをすった春雨がうまい食べるスープだ。

太目の手打ち麺がズドーンと腹にくる。まるで刀削麺(硬い生地を削って作るので、中国では重い食感で知られている)みたい。それを炒めているので、ますます重いんだけど、羊肉と合わせるなら、ふにゃふにゃ麺じゃあわない。この固さでなきゃ!北方人の粉物愛をドストレートに感じる炒麺だ!

スプーンを入れると、ぶるんと重く震える杏仁豆腐は、まるでババロアのような濃厚さ。甘いけれど、後をひかないところがいい。

味坊拉麺からスタートし、神田味坊を開き、飲食店の競争がし烈なこの地で25年。長すぎたコロナ期も経験した梁さんの話を聞きたかったが、さすがに今日は無理。きっと誰もを元気づけるあの笑顔で乗り切ってこられたのだと思う。しんどい顔は決して見せないで。
今日はとびきり新鮮な食材を使い、豪快なのに絶対うまいという一点に焦点がぴしゃっとあった料理に感動しっぱなしだった。食べに食べ、もうおなかがはちきれそう。羊、羊、羊、時々豚と牛。神田味坊は肉好きにはたまらない店だ。
店舗情報
神田味坊

千代田区鍛冶町2-11-20
03-5296-3386
月~金は11時から22時半、
土日は12時から22時半。途中休みがないのがすごい。
Writer
記事を書いてくれた人
