近年、ガチ中華は「散歩の達人」(交通新聞社)のようなお散歩雑誌でも注目されています。
編集長の中村さんも出ている「散歩の達人」2025年6月号104ページに載っている高田馬場の、肉や野菜の串を麻辣スープにつけて食べる「串串香(チュアンチュアンシャン)」の店の記事を読み、私は台湾の麻辣味の串おでんも好きなのもあって食べてみたくなりました。
今回一緒に行った仲間は、以前池袋で開催されたハラール中華の料理教室で出会ったメンバーです。
お店の名前は「蜀签(ショクセン)」。(この看板の「セン」は繁体字)。
雑誌掲載時と店名が変わり、リニューアルと思いきや、実はその店が閉店して新しいお店になったこことを後で知りました。
高田馬場はコロナ前後でお店も大分入れ替わりましたが、そもそもガチ中華店は経営が難しいと思うとすぐに撤退や事業形態を変更して、移ろいが早いのも特徴です。商売戦略があるとも言えます。
店名について話を戻すと、聞きなれなくて変わった名前に見えますが、「蜀」は四川の昔の名前、「签」は「串」の意味です。そういえば蜀って歴史の教科書にありましたね。「蜀签」は四川料理で串に刺した食材のことを指すそうです。中国にはこの単語を使った店名がいっぱいあるんだとか。

場所は高田馬場駅近くのビルの7Fです。1Fからガチ中華店特有のスパイスのような独特の匂いがしましたが、その匂いはこの店からでした(笑)
店では串と一部の具材を除いてQRコードから注文です。日本語も選べます。まずスープを選びます。2種類まで選べ、3段階の辛さで一番下のピリ辛麻辣スープ、もう片方はきのこスープにしました。
雑誌(旧店)で見たスープもそんなに辛そうに見えず、台湾おでんスープとも違い、実はちょっとギャップを感じましたが、そういえば串串香は火鍋から派生したものと後でハッとしました。
ここで「小料台(セルフ調味料)」も人数分注文しておきます。串をつけるたれと漬物等の小皿2品、デザート2品も込みで1人300円(税込330円)です。私達は注文システムが分かっていなかったのですが、店員さんがフォローしてくれました。
たれコーナーに行くと、メンバーの1人は「よくわからないから、こういうお店ではいつも作ってもらう」と早速店員さんに作ってもらっていました。彼女は辛いのが苦手なので、香辛料なしのごまだれベースです。



香油(シャンヨウ)とは、ごまから抽出した油で、店内ではスパイス等の匂いであまり感じませんでしたが、ごま油よりも香りが強く、火鍋のたれによく使うそうです。入れるとたれに滑らかさが出ます。たれに多めに入れるようですが、つけてみると割とさらっとしています。

私もそれを見て、以前、火鍋店の海底捞(ハイディーラオ)でのたれ作りを思い出しながら、ごまだれにニンニクと、辛そうに見えた赤っぽい「酱豆腐」を入れてみました。実はこれ、「腐乳」という塩漬け豆腐を麹や酒等に漬け込み発酵させたもので、辛くなく少ししょっぱいものでした。

香港在住歴が長かったもう一人は、「いつものたれ」をいつの間にかささっと作っていました。ごまベースに小米椒(刻み唐辛子)、オイスターソースを少しと香油です。自分のたれがすぐ作れるくらい食べた経験あるってすごいです。

ついでに小皿2品も取っておきましょう。大根と人参の漬物とビーフジャーキーがありました。ジャーキーには切った唐辛子もいっぱい入っていましたが、それほど辛くなく、漬物はさっぱりして、串を食べる合間に食べるのにちょうどいい2品です。


さて、主役の串を取りに行きましょう。串用の白いトレイがあり、テーブルで1つでも、1人1皿使用してもOKです。串はなんと1本59円(税込み64円)!

串以外のまとまった野菜や豆腐類、一部の肉はお皿やボウルにもりもり入っているので、それをテーブルに運びます。お皿は一皿480円と680円(税抜)です。
野菜…先日も中国の屋台料理を出す店で韮串を食べましたが、中国の方は韮を器用に刺しますね。


他にも魚団子や茎わかめ、はんぺん、こんにゃく等、とにかく色々あります!
お皿からは响铃卷(揚げ湯葉)、 炸豆皮(シート状の豆腐を切って揚げたもの) 、冻豆腐(凍り豆腐)、 现打魚籽蝦滑(作りたての魚卵入り海老のすり身)を持ってきました。
豆腐系だけでもいろいろな形があり面白いです。


席に戻ると、火鍋スープが来ていました…!

辛さピリ辛と言ったのに、この色と唐辛子の量…。みんなでちょっと心配になりました。香辛料の多さから鍋に近づくと店員でさえもむせていました。きのこスープには葱や数種類のきのこが浮かび、身体によさそうです。

そしてこの鍋の深さ。一人は「バケツみたい」。もう一人は「串を入れるから深いのか」と。確かに。

それでは、具をどんどん入れましょう。
メンバーが動画を撮っていました。この5秒を聴くだけでお店の賑やかさが伝わってきます!留学生がいる地域とあって、ほとんどが青年層でほぼ満席です。
QRコードから羊肉も注文しました。

麻辣に浸かった方は、辛さはありますが、見た目よりは控えめです。でも具材を探してお玉ですくってみたら、花椒がすごくたくさん入っていました!一杯でこれだけ入っていたので、鍋底にはどれだけ入っているんだろう。

火鍋は油が多い、と言えば…テーブルの隅にある言葉を見つけました。
「一斤料五斤油 」。調べると「一斤(500g)の調味料(唐辛子・花椒・豆瓣醤等)に、五斤(2.5㎏)の油を使う」という意味で、材料1に対して5倍の油を使い、本格的にちゃんとスープを作っていることを表しているそうです。


「牛刚下砧板就上签」と書いてあり、この意味は「食肉加工場のまな板で捌いたばかりの肉をすぐに串に刺す」という、要は新鮮なうちに提供していることを表しているようです。入口にも「现切现穿(切りたて刺したて)」とあり、店内どこにも新鮮さと質を全面に出して強調しているコンセプトを、もう少し控えめに出す日本の飲食店と違い、個性的だなぁと思います。でも、言葉から探るガチ中華、悪くないですね。
具の味ですが、辛いものがそれなりに平気な私は、食べていくと辛さに慣れて野菜も肉も旨辛で食べられました。ニンニクゴマだれと一緒に入れた刻みピーナツの食感もよいです。パクチーと一緒の牛肉は爽やかさも一緒に感じられ、羊肉は牛肉にはない味があり火鍋との相性もいいです。コーンの甘味と火鍋の辛さもよく合います。

ペン立てのような串入れがないなぁと話していると、店員さんが串入れの場所を教えてくれました。串入れつきの火鍋用テーブルなんですね(驚)

別皿で選んだ豆腐系具材3品は食感がそれぞれ違い、飽きずに食べられます。
私は特にパリパリの炸豆皮がちょっと固めの食感で、麻辣味が適度に染み込んで好みでした!冻豆腐は高野豆腐みたいなものなので、味がよく染み込みます。
メンバー2人はきのこ出汁に入れた具を中心に楽しんでいました。スパイスつきの肉はそのスープに入れていくとスープの色と味が変化していきます。メンバーの一人は、「これくらいの辛さがちょうどいい」と言っていました。麻辣スープと違い、味の変化が楽しめるスープもいいですね!

ここで、他のテーブルで見ておいしそうだったものを注文してみました。

「软煎糍粑(柔らかいもちの黒糖煮込)」です。もち米から作ると教えてくれました。黒砂糖でできた甘いたれがかかったおやつみたいな小吃です。表面にちょん、とのっているのは「红糖(赤糖の固形)」とのことです。
「红糖」はサトウキビからできていますが、黒糖と違い、蜂蜜を加えていて、中国でいう黒砂糖はこれを指すみたいです。メニュー名の訳は「黒糖」ですが、多分「红糖」のことだと思います。ちょっと甘くてもちもちしていて、日本人も好きな味だと思います!
おかわりのたれを作りに行くと、よく見たらたれの組み合わせが書いてあるではないですか。

この掲示の中で、上の段の「四川人都著麼吃(四川人はみなこれを食べる)」の中の(四川州の州都)成都版を作ってみました。

これはさっぱり辛い感じで爽やかに食べられました。
たれがいつもごまだれベースになりがちなので、ごまだれ無しのソースの作り方を知ることができて嬉しいです。
締めは刀削麺です。もちもちしていていい麺です。

最後にデザートを食べました。
一つは、少し甘いシロップに白きくらげとクコの実が入ったもの。

もう一つは「冰粉(ビンフェン)」と呼ばれる葛切りのようなゼリーに红糖シロップとトッピングをして食べるものです。
店員さんが冰粉も作ってくれました。上にかかっている四角いのはサンザシです。

他のトッピングも入れてみましたが果物シロップも混ざって味が変わってしまったので、店員さんが作ってくれたものがきっと伝統的でベストなんだと思います。どちらのデザートも優しい甘さで、特に辛いものを食べた後にぴったりでした。
20時半を過ぎると店内もガラガラで静かに。私たちはしばらくおしゃべりしていましたが、食べたらぱっと帰るのが現地又は留学生スタイルなのでしょうか…。そのためか20時半以降は串の値段が更に安くなるようです。
お会計の際は店員さんが串とお皿の数を数えてくれます。寿司皿を数える回転ずしと同じですね(笑)私達は全部で42本でしたが、読んだ雑誌には学生は1人20本は食べると書いてありました。

とにかく色々な串を入れて手軽に食べられるのが串串香の楽しいところです。たれの料金にデザートや小皿もつくのでコスパもいいです。学生に人気で賑やかなお店に皆さんも混ざってみてはいかがでしょうか。
(aokinapple)
店舗情報
蜀签(ショクセン)

新宿区高田馬場1-27-6 kiビル 7F
Writer
記事を書いてくれた人






