夜のディープチャイナへ 立教大近くの中華カラオケバー「卓尚記」

いまや世界共通語となった「カラオケ」の発祥の地はもちろん日本だが、日本のカラオケ店は大半が個室スタイルなのに対して、海外ではしばしばバーの店内に一台だけカラオケマシンが設置された、俗に言う“公開処刑”スタイルが主流だ。

中国語文化圏でもそれは例外ではなく、串焼きをつまみにお酒を飲みながらカラオケを楽しむミュージックバーが、若者を中心に広く愛されている。たいていは2軒目、もしくは3軒目に、飲んべえの大人たちが夜な夜な繰り出す陽気な文化だ。中国滞在経験者なら、きっと一度は行ったことがあるのではないだろうか。

そんな“夜のディープチャイナ”に触れられるローカルスタイルのミュージックバーが、池袋の西口にある。

池袋西口から立教大学方面に歩くこと5分程度、怪しげなビルの3階に居を構える「卓尚記」だ。

某ディズニー映画のキャラクターに迎えられてドアをくぐると、近未来風のネオンに彩られ、大型のLEDを備えたステージがドンと配置された、異国情緒に満ち溢れた空間が現れる。もちろんステージにはカラオケマシンが設置されており(JOY SOUNDでもDAMでもない)、客たちが思い思いに歌いながらお酒と料理を楽しみ、くつろいでいる。

この串尚記、カラオケバーと侮るなかれ、とにかく食べ物が充実している。中国本土では串焼きをつまめる程度で、主役はアルコールという店もあるが、このお店の名物は炭火で焼いたカレイの頭(焼鰈魚頭)。串焼きももちろん充実しており、厨房に足を踏み入れると、大掛かりな炭焼き台の前で料理人たちがスパイスをまぶした焼き物を次から次へと焼いている。これなら2次会だけでなく、1次会から居酒屋として使うこともできそうだ。

羊肉串をはじめさまざまな串焼きがある
これはカエルの串焼き
焼鰈魚頭はカレイの頭を割って炭火焼きする
これが焼鰈魚頭
ホルモンの野菜炒めがうまい

オープンして間もないこともあり、フロアでは店長の吉田さんが、自ら配膳やら賑やかしやらで明るく駆けずり回っている。

そんな吉田さん曰く、このお店は「とにかく面白い店にしたい」のだという。

吉田さんは中国吉林省長春出身

「うちの店は、安くて美味しい店にしたくて、食べ物にはこだわっているんです。特定の地方の食べ物にこだわるというよりは、お酒に合う美味しい食べ物を幅広く揃えています。美味しいものを食べたり、歌を歌ったり、とにかく楽しくて何でもできる、そんなお店にしたいんです。だから、何はともあれたくさんの人に来てもらいたいと思っています」

とはいえ、完全に中国スタイルのカラオケバーとなると、“ディープチャイナ”初心者には少々敷居が高いと思われるかもしれない。

だが、吉田さんは「そんなことは気にしないでどんどん来て!」とあくまでウェルカムだ。

「うちは意外と国際派なんですよ(笑) 例えば、中国語を話せないベトナムの人が通っていたりもします。それに、この店のお客さんの大半は、日本にいる中国人。だから、ほとんどの人は日本語がペラペラです。だから怖がらないでお店に来て、日本語の曲も歌って欲しいですね。日本人の皆さんに、焼いた魚の頭が美味しいということを知ってもらいたいです!」

池袋西口に突如現れた、中国スタイルのナイトエコノミー。

明るく開かれたカラオケ文化に、ぜひ飛び込んでみよう。

ちなみに、筆者が取材した際にいちばん歌われていた日本人歌手は、米津玄師だった。

勇気を出して一曲歌えば、きっとあなたはもうディープチャイナの夜の世界の魅力に取りつかれてしまうはずだ。

店舗情報

卓尚記

豊島区西池袋3-29-4
ジェスト7ビル3F
03-4362-8739

Writer
記事を書いてくれた人

佐々木遼

プロフィール

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