最近、都内にカジュアルな雰囲気で香港の点心を食べさせてくれる店が次々オープンしています。
それらの店は、日本人オーナーではなく、香港に隣接する広東省出身で点心の調理資格を有する点心師と中国の他の地方出身のオーナーたちとのコラボによるものです。
JR神田駅近くに今年1月正式オープンした「香港飲茶」はその名の通り、香港名物の点心やロースト料理(焼味)、エビワンタン麺、お粥、さらには煲仔飯 (ボウジャイファン)まで楽しめる店です。日本人が香港に旅行に行ったら、必ず食べたいものがほぼすべて揃っているといっていいでしょう。
というのも、都内で「香港」をうたう店に行くと、点心や麺・粥はあっても、ロースト料理はない、また煲仔飯は調理に時間や手間がかかることから予約制でないと食べられない店が多いのです。もちろん、それぞれ調理法が違うのですから、無理もない話なのですが、この店はメニュー選びに日本人の好みをとことん採り入れているのです。
では、おもなメニューを紹介しましょう。
エビ入り蒸し餃子の「鮮蝦餃」。飲茶を代表する点心です。浮き粉でつくる透明で薄い皮がエビのプリプリ感を引き立てます。
豚スペアリブの豆鼓蒸しの「豆鼓排骨」。骨ごと食らいつきましょう。
通称「モミジ」の鶏の爪の同じく豆鼓蒸しの「豆鼓风爪」。コラーゲンたっぷりでピリ辛の皮をしゃぶり尽くします。
直火焼きチャーシュー(叉焼)です。
釜焼きローストダックの「焼鴨」です。
地下にある厨房を訪ねると、ローストダックが天井からぶら下げられていました。炭火焼きの釜を覗くと、チャーシューがじっくり焼かれている様子が見られました。
香港でおなじみのエビワンタン麺。この店のスープは醤油味ですが、麺は香港のごわごわした本場のものに比べるとソフトな感じです。
鶏肉入りのチマキ(糯米鶏)はとてもおいしいです。
たまにどうしても食べたくなるのがお粥で、これはピータンと豚肉入りの「皮蛋咸肉粥」。
香港ローカルフードのひとつ、土鍋ご飯の煲仔飯 (ボウジャイファン)です。広東風ベーコンとチャーシューがのっていて、ご飯のおこげがたまりません。
ほかにも腸粉(チョンファン)やダイコン餅も食べられます。
デザートとしては、人気のエッグタルトやチャーシューパイ、クリームまん、マンゴーココナッツなどいろいろありますが、おすすめは「菠蘿包(ポーロ―パーウ)」という名のパンです。
「菠蘿」はパイナップルの意味ですが、実際にはパイナップルは使われておらず、メロンパンに近い味です。ほんのりした香りと食感が楽しめます。
オーナーの劉暁兵さんご夫妻です。湖南省出身の劉さんは1997年に九州の大学に留学し、帰国後中国の大手銀行に就職。深圳に勤務していたとき、香港料理に親しんだそうです。2007年に日本支店開設のために再来日したとき、筑波大学で博士課程を修了していた奥様と知り合い結婚し、ふたりのお子さんに恵まれます。
その後、再び中国に呼び戻され、単身赴任となった劉さんですが、家族と一緒に日本で暮らすことを選び、2014年に銀行を退職。
2015年頃から都内で飲食店などの経営を始めます。
2010年代のインバウンドブームの頃は、いまの同じ場所でラーメン屋兼中国人ツアー客専用の食堂を始め、ずいぶん儲けたと聞きます。
コロナ後は客足が消えたので、新規事業として飲茶の店を始めることを計画。2020年10月に店舗の内装工事を手がけ、点心師を探すなど準備をしたのち、同じ年の年末にプレオープンしたそうです。
劉さんは天王州アイルにも「天厨菜館」という中華レストランを経営しています。
(東京ディープチャイナ研究会)
店舗情報
香港飲茶
千代田区神田鍛冶町3-2-3
03-6206-0847
天厨菜館
品川区東品川2-2-24
天王州セントラルタワー別棟2F
03-5463-1851