裏メニューが美味しいので、事前予約して行きたい水道橋の「上海味道」

東京ディープチャイナ研究会の学生ライターの山田一衣です。日々の営みである食を通して、その国の文化や生活を体験するみたいなことが好きなので、私にはぴったりの活動なんじゃないかと思っています。

実はもうずいぶん前のことなのですが、昨年夏、学生数名が研究会の代表の中村さんと一緒に訪ねた水道橋にある上海料理の店「上海味道(シャンハイミドウ)」を紹介します。すでに自分のfacebookでは投稿していたのですが、今回あらためて記事として配信させていただきます。

中村さんによると、中国四大料理のひとつである上海料理は、トウガラシなどの刺激的な調味料はほとんど使わず、中華としては珍しく甘くてやさしい味つけも多いので、日本人の口に合うそうです。ところが、上海料理を出す店は東京には少ないのだとか。そう言われても、私にはよくわからないし、上海料理というものを食べたこともなかったのですが、その日、私たちは上海出身のオーナーの李さんのおすすめ料理を何品かいただきました。

私が特に好きだったのは、五香素鸡と四喜烤麸、それに店長イチ押しのスペアリブの唐揚げです。

読めないでしょう…? 「五香素鸡(ウーシャンスージー)」(左)と「四喜烤麸(スーシーカオフー)」(右)はこれです。私は正しく発音はできません。

五香素鶏は「お豆腐」や「高野豆腐」に近いかも。
キメの細かいスポンジ状のお豆腐はふっくら柔らかくて、汁がよく染み込んで美味しい!

大豆の甘い香りと薄口のお醤油は和食にも似た ほっとする味わい。少し甘めの味付けも日本人なら絶対に好きなはず。

四喜烤麸の方は、文字からわかるように「上海のお麩」らしいです。
でも、日本のお麩とは全く違い、ムチムチした弾力の強いお麩。

見た目は濃口醤油の色で真っ黒ですが、食べてみるとほどよい塩気。甘辛い味のあとに、ほんのり八角の香りが鼻に抜けます。ピーナッツと椎茸も一緒に煮込まれていましたが、どっちも味が染みていて、食感のアクセントにもなっています。

このふたつは冷菜なので、煮物のように見えますが、冷まされた状態で出てきます。

そして、店長イチ押しのスペアリブの唐揚げの「蒜香骨(スアンシャングゥ)」は、言わずもがな。熱々、ジューシーな骨付きスペアリブはお箸では小さく切り分けられないのでしょうがない。かぶりついていただきました。

これが最高‼ ニンニクの香りが食欲をそそり、あとをひくうまさ。
最初の2品は紹興酒に合いそうなものでしたが、これはどちらかというとビールに合いそう……。

ほかにも上海風茹で鶏の「白斬鶏(バイザンジー)」。ほんのり甘みのある醤油ダレにつけて食べます。

上海風の揚げ魚の醤油煮の「熏魚(シュンユー)」。

インゲンとひき肉炒めの「干煸四季豆(ガンビエンスージードウ)」。

これを作っているとき、厨房を撮らせてもらいました。すごい火力ですね。

これは野菜の名前を忘れてしまったのですが、旬の野菜を使った青菜炒めです。どれも美味しかったです。

これは上海風エビ入りネギ油がけ混ぜそばの「蝦仁葱油拌麺(シャーレンツォンヨウバンミエン)」です。

オーナーの李さんにお話をうかがいました。

実はこの店ではメニューを3種類用意しているのだそうです。

まずごく一般向けの定食メニュー。

これはひとことでいえば、水道橋周辺のサラリーマン向けだそうで、「エビとタマゴ炒め定食」や「青椒肉絲定食」「回鍋肉定食」「酢豚定食」といった日本の人にもなじみのある町中華メニューです。

そして第2のメニューがこれ。

こちらは本場の中華好きの人のための「石鍋麻婆豆腐」や、よだれ鶏として最近人気の「口水鶏」の定食メニュー。そして、上海料理の腸詰入り混ぜご飯の「上海菜飯(シャンハイツァイファン)」や上海風焼きそばの「老上海炒麺」、そして先ほど私たちもいただいた「蝦仁葱油拌麺(シャーレンツォンヨウバンミエン)」などが入っています。

李さんとしては、ぜひ第2のメニューから上海料理を選んでもらえるとうれしいそうです。

そして、第3はこの手書きのメニューで、いわばこの店の裏メニューといっていいものです。

この手書きのメニューは、私たちが行ったときは4枚ほどあって、今日いただいた「五香素鸡(ウーシャンスージー)」や「四喜烤麸(スーシーカオフー)」、「白斬鶏(バイザンジー)」、「熏魚(シュンユー)」などが入っています。

李さんは言います。

「日本のお客さんの多くは、本場の中華料理に詳しくないので、まずわかりやすい料理からランチで食べていただき、何度か通ってもらうようになったら、少しずつ上海料理を試してもらいたいと思っています。

でも、なかには詳しい方もいますし、上海出身のお客さんも増えてきたので、裏メニューとして、そのときどきの旬の食材なども採り入れた料理を用意するようにしました。

もしこういう上海料理が食べたいというリクエストがあれば、事前にお電話いただけるとうれしいです。食材も用意しないといけませんから。この手書きのメニューをじっくりご覧になりたい方がいたら、声をかけてくださいね」

李さんは、以前上海でブランド品のマーケティングの仕事をしていましたが、数年前に来日したそうです。実はお父さんが西川口で上海料理を経営していたこともあり、少しの間、そこで仕事を手伝っていたのですが、2020年10月、「上海味道」の水道橋店をオープンしました。

まだ20代ですが、都心で上海料理店を2店舗経営しています。

「コロナ禍で2店舗もやっていくの、正直大変なんじゃ……」と聞いたところ、「お客さんを信じてますから!」と笑顔で私たちの心配を跳ね返してしまいました。

お店にいた上海出身のお客さんとも何やら楽しげに会話していたり、私たちとも流暢な日本語で上海について教えてくださったりと、「また李さんに会いに行きたい」と思わせてしまう人柄もお店の魅力のひとつです。

ごちそうさまでした!

※インタビューの様子です。

店舗情報

上海味道

千代田区神田三崎町2-17-8
03-6261-7278

上海味道淮揚館

李さんの2号店
千代田区神田錦町1-8-11 B1F
(2021年4月オープン)

Writer
記事を書いてくれた人

山田一衣

プロフィール

代表からのひとこと

上海味道は、水道橋に用事があって歩いているとき、偶然見つけた店です。山田さんに話したとおり、東京には「上海」と名の付く店はけっこうありますが、いくつか理由があって、実際に上海料理を出す店はそれほど多くはありません。でも、ここは本物の上海料理を食べさせてくれる貴重な存在です。その後、ぼくは上海出身の友人と何度かこの店に通いました。

ぼくが好きだったのはこんな料理です。たとえば、イシモチの高菜漬けの「雪菜黄魚(シュエツァイホアユー)」。いかにも上海風の魚料理です。

それから揚げ麩の肉詰めの「油面筋塞肉(ヨウミエンジンサイロウ)」。これは上海の友人が子供の頃、よくお父さんがつくってくれたそうで、とても懐かしがっていました。実は、上海では家で料理をつくるのはお母さんではなく、お父さんであることが一般的なのです。だから、彼によると「これはおふくろの味ではなく、おやじの味」なのだそう。

ぼくは以前よく上海に取材に行っていたので、懐かしいのが、上海風の小さな丸餅と豚肉と野菜炒めの「白菜肉絲炒年糕(バイツァイロウチャオニエンガオ)」。ふつうは白菜ではなく、ナズナと一緒に炒める料理ですが、白菜で代用しているそうです。

スープワンタンも上海の懐かしい味です。

「上海味道」の若いオーナーの李さんは心優しく繊細な好青年で、味も上海の友人の保証付きです。店の前に自慢の上海料理が写真入りで紹介されていました。なかなか東京では食べられる店が少ない上海料理、ぜひ味わってほしいと思います。

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