最近、上海でよく話題になる旅先といえば、江西省景徳鎮市です。
都市部の美大を卒業した若い陶芸家たちが移住し始め、街の雰囲気が変わり始めているためです。
自然豊かな山間にある三宝村には木造家屋のアトリエが点在し、世界遺産の登録を目指す御窑厰の敷地内には、建築家の朱锫が設計した窯型の博物館が竣工。
いま景徳鎮は、工芸、クラフト、アート、山暮らし、シンプルな生活、アウトドアなどに興味を持つ人たちの憧れの地になっています。
有名な陶磁器も、「手が出ないような高級品」「骨董品の偽物」「土産物的安モノ茶器」の時代は既に終了。
工房が集まるエリアで若い作家の工房兼店舗を発掘しながら、自分のライフスタイルに合う器を選ぶのが今の景徳鎮の楽しみ方です。
が、食に関係のある器の産地でありながら、景徳鎮のご当地料理はあまり知られていません。
景徳鎮のある江西省やお隣りの安徽省は、湖北省や湖南省、江蘇省などの合間にあって、料理の特徴や輪郭があまりはっきりしないエリアだからなのかも?
ということで今回は、工房めぐりと山歩きの合間に出会った景徳鎮料理をご紹介したいと思います。
まずは景徳鎮料理の代表格「冷粉(ルンフェン)」。
コシがあってモチモチの太め米粉麺を、ピリ辛醤油味のタレで和えた料理です。景徳鎮人のソウルフードとして有名なのですが、「冷粉」なのに熱々料理であること、米粉の麺なのに「米粉(ミーフェン)」とは絶対呼ばないことなど、謎多き料理。
調べても聞いても、納得できる理由が私はまだ見つかっていません……。
食べた場所は、景徳鎮でいちばん人気のご当地食堂「回家吃飯」。
地元の人が普段使いしているお店で、景徳鎮の庶民の味が揃っています。
「冷粉」に次ぐ代表料理といえば「餃子粑(ジャオズバー)」。
朝食や夜食に食べられているという蒸し餃子です。特徴は餡が辛いこと。キノコと豚肉の餡に辣醤も入っているので、タレは不要です。
でも、けっこう辛くて続けていくつも食べるのは無理(要ビール)。餃子が辛いって、初めてでした。見た目はやさしい感じなのですが……。
次にご紹介するのは朝ご飯。
景徳鎮人の朝ご飯スポットといえば、創業30年以上の「小毛老面湯包」とのことで行ってみました。夜中の3時まで営業しているので、夜食スポットとしても利用されているようです。
小籠包と肉まんの中間のような「猪肉湯包(ジューロウタンバオ)」が有名なお店です。
これに、「皮蛋肉餅湯(ピーダンロウビンタン)」なる、ピータンと生の肉団子を器のまま蒸したスープをつけるのが地元流とのこと。
豚ひき肉のだしがよく出たスープに、ピータンを崩しながら食べるスープ。シンプルながら絶品でした。
「皮蛋肉餅湯」。蒸し器に並べてた器に肉団子、ピータン、スープを入れて蒸した料理。
最後に訪れたのは、三宝村の山小屋食堂「世外陶源」。
すぐ脇に清流が流れる、豊かな自然に囲まれた場所にあります。メインは景徳鎮の山料理だそう。
お勧めは、「贛南三絲(ガンナンサンスー)」。タケノコ、鶏肉、山菜などのピリ辛細切り炒めです。贛南とは江西省南部のこと。山の幸を使った、やや重めで辛い味付けが特徴だそうです。
もう一つの看板メニューは「野菜餅(イエツァイビン)」。お店の人気No. 1メニューとのこと。
よくある焼餅系かと思ったのですが、食べてみてびっくり。外側は軽めでサクサク、なかはほんのりごま油風味のとろとろの野菜餡が入っています。軽いのでいくつでも食べられる感じ。ビールにもぴったりでした。
山歩きのあとで、山の空気を吸いながら食べてこその料理かもしれません。
ところで、今回久々に景徳鎮を訪れたのですが、もしかしたら江西省は文化も料理も海外(というか国内の人にも)にあまり発掘されていない地域なのでは、と改めて思いました。
上海人でも、「景徳鎮は有名だけど、場所、江西省だったんだ。今知った」なんていう人もいるほど。
私が次回行きたいと思っているのは婺源です。SNSで広々とした棚田の風景や、トウガラシを干す真っ赤な村落の風景を見て、一気に心を掴まれてしまいました。
江西省、個人的に深掘りしたいなと思っています。
コロナが収束したら、江西省のガイドブックつくりたいなぁ……。
店舗情報
回家吃飯
中国江西省景徳鎮市浙江路大江新街6号楼
11:00-14:00 17:00-20:30
小毛老麺湯包
中国江西省景徳鎮市長虹金城中央四期1棟20号
6:30-10:30 14:30-翌3:00
世外陶源
中国江西省景徳鎮市三宝路国際陶芸村四家里
11:00-14:00 16:30-20:30