【上海発】寧波や台州の海鮮中華、海沿い系浙江料理がじわじわブーム

上海で出合った、食べ物の話が合う地域の人といえば、私の場合は寧波、台州など浙江省の海沿いエリア出身の人たち。おいしいと思う味を妥協なく分かち合える人が多い気がします。

寧波料理や台州料理は浙江料理の中に入りますが、淡水魚や豚肉などを使う杭州や紹興の料理とはまったくの別物。

海鮮と山のものをバランスよく使った、素材の味を生かした味付けが特徴です。おいしいけどなんとなく食べるのに体力が必要な内陸系中華と違って、ほっとできる料理だと思います。

寧波の海鮮量り売りおつまみのお店も上海市内に増加中
寧波の海鮮量り売りおつまみのお店も上海市内に増加中

というわけで今回は、最近寧波と台州の現地で食べた料理と、上海市内で食べられる(流行り始めている)お勧め台州料理をご紹介したいと思います。

まずは寧波の「生腌」。

生の蟹や貝を酒と調味料に漬けたおつまみです。上海の「酔蟹」よりも酒粕っぽい風味でまろやか。お勧めはワタリガニと血蛤(ハイガイ)です。

生腌は潮州料理にもありますが、寧波はさらに庶民の味という感じ。韓国のケジャンもこれの系譜に入るのかなと思います。だとしたら、海鮮をよく食べる日本にこの文化があまりないのが不思議。

「日本の海鮮はそのまま食べるのがおいしいから」という意見もありそうですが、その日本の貝や蟹で生腌を作ったらすごくおいしいと思います。

酒粕の風味と、海の塩味だけみたいなやさしい味付け
酒粕の風味と、海の塩味だけみたいなやさしい味付け
血蛤
血蛤は必ず寧波現地で、地元の人で混み合う回転の速いお店で(鮮度が大事)

寧波の人曰く、「寧波料理は海鮮だけじゃなくて、いろいろな野菜や野草を使うのが特徴。海と山が近いから」とのこと。その中でインパクトがあったのが「炸桑叶」。桑の葉の天ぷらです。桑の葉にはビタミンCや黄酮(フラボノイド)が豊富に含まれているそう。

クセのない風味でサクサク。というか、これも日本で作れるのでは。

桑の葉の天ぷら
日本でも天ぷらとして出てきたら違和感ないと思う

寧波の主食といえば年糕(中国餅)です。「寧波といえば年糕だよね」と言えば、寧波の人と一瞬で打ち解けられると思います。全年代、若い人も、です。

その年糕を炒めた「炒年糕」は、醤油味と塩味の場合がありますが、どちらにも白菜が入っているのが特徴。みんなでシェアしておかずみたいに食べます。 

「炒年糕」
上海のものよりモチッとしていて米の香りも感じられる

一方、台州の主食的な名物といえば「麦蝦」です。

食べたのは台州市のやや内陸にある臨海という街。あちこちに「麦蝦」と書かれた提灯がありました。

「麦蝦」のある店
麺料理屋のような感覚で麦蝦屋さんが並んでいる

「麦蝦」とは、小エビや貝、イカなどの海鮮スープ入りすいとん。小麦粉を練ったすいとんに、海鮮だしが効いたスープが染み込んでいます。

海沿いなのに食べ物はやや内陸的な上海にいると、ごく庶民的な料理に海鮮がたっぷり使われているのがとにかく羨ましい。

「麦蝦」
海鮮たっぷりのだしスープ入りすいとん

文蛤(ハマグリの一種)のネギ油炒め「炒文蛤」も定番料理の一つ。

店先の水槽やたらいに入ったものを選んで炒めてもらうシステムです。

「炒文蛤」
いくらでも食べられてしまう。一人一皿でも可

最後に、上海で食べられる台州料理のお勧めをご紹介したいと思います。

上海市内で出すお店が増えている気がする料理No. 1は「沙蒜豆麺」。沙蒜(イソギンチャク)と豆麺(太い春雨)を炒め煮した料理です。

台州出身の知人に勧められ、日本人の友人と食べに行ったのですが、その同行者と「ビーフシチューみたいな味!」とびっくり。よーく味わうとそうではないのかもですが、海鮮なのにじっくり煮込んだシチューのような深い味わい。

機会があればぜひ食べてみてほしい一品です。

沙蒜豆麺
上海で台州料理といえば最近はこれ。上海にイソギンチャク好きが増加中?

皮にイカ墨を練り込んだ水餃子「墨魚水餃」もお勧め。餡にもイカがたっぷりで、イカの風味がとにかく濃厚です。

「一見変わってるけど、味は慣れ親しんだあの味」と思えるところが、海沿い系浙江料理にほっとする理由かもしれません。

「墨魚水餃」
真っ黒な水餃子

ほかにも黄魚(イシモチ)を使った料理、豆腐料理、里芋料理なども有名。特に台州料理は個性的でお勧めしたくなってしまう料理の宝庫です。

しかも、中国全土から見ると小さな地方都市で、それほど知られていない料理ジャンルでもあるのに、台州に本店がある「新栄記」などが高級店として東京進出したりしていてすごい自信を感じる……。不思議な地域だと思います。

(萩原晶子)

店舗情報

一索飯店

一索飯店

寧波市鄞州区堇山西路40号
11:00-13:30
17:00-21:00

光明飯店

光明飯店

台州臨海市回浦路132号
10:00-22:30

栄小館

栄小館

上海市黄浦区太倉路128号
11:00-13:30
17:00-20:30

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記事を書いてくれた人

萩原晶子

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